見出し画像

門出 / キッチンときどきダイニング / 記念日の一皿 / おこり顔 / 旅の計画

3月10日(日)

南相馬に来て出会った子ども達の門出を祝う。初めて会った時、小学校低学年だった子たちの高校卒業パーティをした。

「今日はありがとう」
出迎えた私にそう言ってくれた男の子がいて、「こちらこそだよ」と返しながら俯いたのは、その一言で胸がぎゅっとして、涙がこぼれそうだったから。初めて会った時は、地元の学校に通えなかった子達。当たり前に地元から送り出せてよかった、と思うのは私の勝手。ずいぶんと大きくなった背中は、帰り際に見送るうちにどんどん小さくなった。さぁ、行っといで。

3月14日(木)

キッチンに、家族がよく集合する。

わが家のキッチンは、家の真ん中にある。家づくりをする時に、なんとなく人が集まってくる場所としてキッチンを置いた。料理しているのを見ながらおしゃべりしたり、おいしそうな香りにつられてつまみ食いしたりするうちに、そのまま、キッチンで食事をすることもある。ダイニングテーブルにキッチンが変身する。

この日は551の肉まんを蒸していて、気づいたらみんなキッチンに集合。居酒屋みたいな夜ごはんを食べた。

3月18日(月)

夫とお付き合いを始めて10年になった。記念の日には、家で料理をつくって食べる。と言っても、フルコースではなく、メインディッシュを決めて、それに合わせて何品か作る感じ。

今日のメインは、春のサンラータン、通称春サンラー。これは、スープストックの春限定商品で、私の大好物。なのだけど、結婚して引っ越して以来、お店が遠くなりなかなか食べに行けず、レシピを見て家で作るようになった。そうしたら、夫もおいしいおいしいと食べてくれて、以来、私の得意料理、というか、特別な一皿として食卓に登場する。

本当は、鳥を煮て出汁をとりたかったけど、気づけばその時間はなく、この日は顆粒だしに頼って仕上げることになった。でも、代用をパッとできるのは、この一皿のことをよく分かっている感じがして悪くないなと思う。

できあがったスープを、夫は喜んで食べてくれた。その顔をみて、ホッとして、嬉しい気持ちが込み上げる。その横に、同じスープを食べる息子がいて、いっそう幸せを感じた。心が、春めいた。これからもよろしくね。

3月19日(火)

仕事で嫌なことがあったわけでも、家事や育児が特別大変だったわけでもないのに、ムシャクシャとしてしまった日。息子にも、よくない態度とってしまったなあと反省しながら「今日はたくさん怒ってごめんね」と言うと、そうだっけ?ときょとん顔。「ほら、おやつ食べに行った時にさ...」というと、左頬に小さいえくぼを作って、いたずらっぽくニヤリとしながら「おこってた」と思い出した様子。どんな顔してた?と聞くと、無言でほっぺをプクーッと膨らます。目はまんまる、下唇をつきだして。可笑しかった。怒ってるんだかわからない、愛らしい顔。私はたしかに、何も言わず不機嫌だった。でも、こんなに可愛くはなかっただろう。ははっと笑って力が抜けて、そのままお風呂にはいった。

3月20日(水)

旅の計画を立てている。ひとつの国に暮らすように出かけようと思っていたはずなのに、旅行が近づいているからか欲が出てきて、もうちょっと足を延ばして...と迷子になりそう。この時間が楽しいはずなのに、頭をかかえている。深夜2時近くなのに、眠れない。

5年前のハネムーンの写真をみかえしながら、久しぶりの海外旅行に想いを馳せて気持ちを落ち着かせる。この、ポルトの街には三泊四日、もて余すほどののんびり滞在で、あてもなく散歩をした。同じ道を歩いた。せっかくの海外旅行でちょっともったいなかったかもしれないけど、それがよかったんだよな。とっても、よかった。

翌朝、夫に八つ当たりをしてしまう。バツが悪く、しばしの険悪ムードの後謝ると、意地がほぐれて、気持ちがまるくなった。前向きな旅の計画を仲良くやってこう。

最後まで読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます^^サポートでいただいたお金では、新しい経験や美味しいものに使い、良いものは周りの人ともシェアしたいと思います!