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夏の青色ワンピース

「このワンピース、お似合いになりそうだなと思って……」

数年前から気になっていた初めて入れたセレクトショップで、リップラインのボブが可愛いお姉さんが持ってきてくれたのは、すらりとしたシルエットのワンピースだった。青色ベースの生地に、くすんだオレンジやイエローの小花柄がのっていて、背中と腰に細いリボンが付いている。”くすんだオレンジやイエロー”が日本人(というか、きっと私)の肌色と相性が良さそうだと話してくれる。「着方に迷ったら、声かけてくださいね~」と言ってもらって、ホッとして試着室に入った。

この頃、自分では白やベージュの服を選ぶことが多かった。だから、青色のお洋服は新鮮だったし、初めて入ったお店でおすすめしてもらえたのも良かった気がする。お姉さんは、私のことをその時知って、その時に見て、それで似合うと言ってくれたと思うから。よく来ているお客さんに、好きそうだからと勧めるのとは違って、初めましての私に「似合いそう」と言って選んでくれたのが嬉しかった。

試着室で服をためしたときに、背筋をピンと伸ばしたくなる服は「買いたい」という気持ちになる。日頃からかなりの猫背なのが、大きな鏡を前にすると目立ってしまうので、試着室ではたいてい背筋を伸ばしているような気もするのだけど。姿勢の悪さに嫌気がさしてとりあえず背筋を伸ばすか、身にまとった服が似合う自分になりたくて背筋を伸ばすのかの違い。このワンピースを着た時の私は、はっきりと後者だった。

ただ、背中のリボンは結び方がやっぱり分からなくて、お姉さんに言われた通り、「着方がわからなかったです~」と助けを呼ぶ。でも、試着前にかけてもらった一言のおかげで恥ずかしさなんてなくて、むしろどんなふうに結んだらこのワンピースを着こなせるか知りたい気持ちでワクワクした。

背中を結んでもらって、ひとまず着れたところで「腰のリボンは前で結んでも、後ろで結んでもいいですよ。ただ、後ろで結んだほうが、スッキリしてみえます。お客さんは細身なので、その方がおすすめかも」と、提案してくれた。たしかに、前と後ろで結ぶのでは印象が違って、後ろで結んでみた方が私自身気に入った。

「これ、いただきます」
自分ひとりじゃ手に取らなかった、久しぶりにじっくり試着をして選んだ一着。新しい服を買ったときのウキウキする気分が、いつもよりちょっと浮ついた。お姉さんのおかげで試せた青いワンピースを着て、夏の間に新しい自分にも出会えたら。そんな願いもこめながら買ったこの服を着て、軽やかにひと夏を超えていきたい。





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