【読書録】組織行動のマネジメント―入門から実践へ〜4部編〜


概要

【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ

スティーブン P.ロビンス (著)
元サンディエゴ州立大学教授。アリゾナ大学から博士号を取得し、ネブラスカ大学、バルチモア大学、南イリノイ大学などでも教鞭をとった。マネジメントと組織行動学の分野における世界一のベストセラー教科書作者。これまでの本の売上げは200万冊を超え、アメリカ国内の1000校以上の大学で教科書として採用され、世界各国でも使われている

髙木 晴夫 (翻訳)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授。慶應義塾大学工学部管理工学科卒業。1975年同大学院工学研究科修士課程ならびに1978年博士課程を修了。1984年ハーバード大学・ビジネススクール博士課程卒業。同校より経営学博士号を授与される。慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、同助教授を経て1994年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

組織行動学とは、心理学・社会学・人類学・政治学など、さまざまな行動科学の知見を総合して、組織で働く人々について体系的に研究する学問である。わかりやすく、しかも組織行動学のすべてを網羅した旧版は長年、教科書として評価を得てきた。新版では、ナレッジ・マネジメント、バーチャル組織、またジェンダーなど、組織の新しい課題について盛り込んでいる。

内容

内容が盛りだくさんなので各部毎でページ作ることにしました。
(他にも色々理由はありますが。)

4部 組織のシステム

第13章 組織構造の基礎

組織構造とは以下のように定義されています。
(この本では)職務がどのように公式的に分化され、まとめられ、調整されているか


組織構造を設計する際の考慮すべきの要素は以下の6つ と言われています。

職務の専門化:活動の部分を専門的におこなうこと

部門化:職務をグループにまとめて、共通のタスクを調整できるようにする方法

指揮命令系統:組織のトップから最下層までわたる指示系統で、誰から誰に報告するのか、責任を持つのか

管理範囲:マネージャーが効率的かつ有効に指揮下に置けるのは何人か

中央集権化及び分権化:意思決定の権限は誰が持っているか

公式化:組織内の職務がどの程度標準化されているか

組織デザイン

一般的によくみられる組織構造は<シンプル構造><官僚制><マトリックス構造>、それに加えて近年では<チーム構造><バーチャル組織><バウンダリーレス組織(境界なき組織)>が存在する。

シンプル構造

特徴:部門化の程度は低い。平らな構造で縦のレベルは2~3程度。従業員の結びつきは緩やか。
強み:迅速で柔軟、維持にコストがかからない。責任の所在が明確。
弱点:小さい組織(50人以下)以外では成り立たない。トップの情報負担か過剰になる。

機械的構造=官僚制

特徴:標準化。公式化された規則、規制、専門家によって実現される。職能的部門化、中央集権的権限、狭い管理範囲、指揮系統に従う。
強み:非常に効率化される。従業員同士は「同一言語」で会話される。マネジメントレベル(スキル)が高くなくても成り立つ。
弱点:規則にそぐわない事態が発生した時に修正が効かない。

マトリックス構造

特徴:職能と製品の2つの部門化の形態の組み合わせ。exコンサル、広告会社、研究開発機関、病院
強み:専門家を1箇所に集めることで資源をプールし、専門家数を最小限に抑えることができる。
弱点:権力構想が生じやすい。

チーム構造

特徴:チームを中心的存在として活動する
強み:大企業で取られるような官僚制にチーム構造を組み合わせることで、組織の効率性が維持される。

バーチャル組織

特徴:核となる小さな組織があり、その外でビジネスが行われている。プロジェクトの一定任務後は解散される。
強み:間接費が抑えられる。組織の長期的なリスクを軽減できる。

バウンダリーレス組織(境界なき組織)

特徴:指揮系統を排除して、管理範囲を定めない。部門の代わりに強力なチームを組成する。

※組織構造は戦略と密接に結びついているもので、戦略によって決定されるものである。詳細は次の章。

組織構造が異なる理由

組織構造は経営者が目標を達成しようとするときの1つの手段=全体的戦略から生まれるもの。戦略によって決定されるもの。
・コスト
・組織の大きさ
・資金、人的資本、物的資源→→商品やサービスに転換する方法
・環境(組織外の機関、要素)

組織構造と従業員の行動

組織構造と従業員の満足度の関連性は、【ない】
個人の好みによるため。
年代、地域、、など異なる要素は多様にあるが傾向はなさそうである。

第14章 組織文化

組織も個人と同様に特徴=特性がある。
組織の構成員の行動を規定する文化が存在している。
組織の特性をもって構成員の態度や行動を予測することが可能。

組織文化の定義

組織文化は、文化を構成する要素について、従業員がどう感じているかであって、好き嫌いではない。一方で職務満足度は感情の反応を追求するもの。
組織文化=記述概念
職務満足=評価概念

組織文化のグラデーション
共通特性(全員認識している拠り所)+サブカルチャー(部門ごとの特性)
サブカルチャーのみのケースもある。ex ビジネス部門とプロダクト部門
強い文化と弱い文化
強い文化:中心的価値が強く保持されている
弱い文化:不確実さ、曖昧さなど一貫性の欠如

組織文化を構成する主要特性

  1. 革新およびリスク性向:従業員が革新的で危険を恐れないことがどの程度推奨されているか

  2. 細部に対する注意:細部に対してどの程度の精巧さ、分析、注意を示すことが期待されているか

  3. 結果思考:プロセスよりもどの程度結果を重視しているか

  4. 従業員重視:意思決定場面においての従業員の影響がどの程度重視されているか

  5. チーム重視:個人ではなくチームを中心とした職務活動が体系化されているか

  6. 積極的な態度:積極的で競争的な態度はどの程度か

  7. 安定性:成長よりは現状維持を重要視する度合い

文化は何を果たすのか

文化の機能:従業員の態度や行動を形成しガイドする管理と意味づけのメカニズムとなる。文化によって共有される価値と、組織の効果性を促進する価値とが一致しない時、文化は不都合な存在となる。

  1. 文化の境界を定義する:組織間の区別を生み出す

  2. アイデンティティの感覚を伝える

  3. 個人の興味を超えたもっと大きなものへの関心を促進する

  4. 社会システムの安定を強化する

文化の創生及び維持


従業員はどのように文化を学ぶか

  • エピソード:

  • 儀式:入社式、〜〜式

  • 物的シンボル:グッズetc

  • 言語

文化の変革をマネジメントする

たとえ条件が揃っても瞬時に変わることはない。月単位ではなく年単位で測るべきプロセスである。

  • 劇的な危機が存在する、またはそれを作り出す

  • リーダーシップの交代

  • 設立して間もない小規模な組織

  • 弱い文化

倫理的な組織文化を構築する

強い文化は組織の倫理環境や従業員の倫理行動に影響を与える=攻撃性が低下する。
より倫理基準の高い文化を構築するために、マネジメントは取りべき対策。

  • 自ら模範を示す

  • 倫理基準を周知させる

  • 倫理研修を実施する

  • 倫理的な行動に対して報酬を与え、非倫理的な行動を罰する

  • 予防措置の仕組みを構築する

顧客対応型文化を構築する

顧客ロイヤリティや長期的な収益につながるものとして顧客対応型文化の構築を試みている。

構成要素

  • 親しみやすい従業員タイプである

  • 公式化度合いの低さ

  • 幅広い権限移譲

  • 傾聴スキル

  • 役割の明確化

  • 組織市民行動

マネジメントの対策

  • 選抜採用

  • 研修と社会化

  • 構造設計

  • 権限移譲

  • リーダーシップ

  • 業績評価

精神性と組織文化

職場における精神性とは、価値観、倫理、モチベーション、リーダーシップ、WLBといった問題に基づく概念。
重要視している組織の特徴

  • 目的意識が強い

  • 個人の成長を重視する

  • 信頼と開放性

  • 従業員への権限移譲

  • 従業員の感情表現に対する寛容さ

組織文化は国の文化に優先するか

考慮する必要はある。
もっとも影響を受けるのは国の文化

第15章 人材管理の考え方と方法

従業員の採用

  • 面接

  • 筆記試験

  • 実務演技試験:実際の業務をさせることで見極める試験

  • ワークサンプル方:業務の一部あるいは全部を実地で演技する試験

研修・開発プログラム

研修の種類

  • 基礎的な読み書きスキル

  • 技術的スキル

  • 対人スキル

  • 問題解決スキル

  • 多様性研修

  • 倫理研修

研修方法

  • 公式研修:事前に企画され、体型だったもの

  • 非公式研修:従業員同士の相互助け合い

  • 職場研修:ジョブローテーション、見習い、実習、公式のメンタリングプログラム

  • 職場外研修:公開セミナー、自習プログラム、e-Learning、衛生テレビ講座、ロールプレイ、ケーススタディ

キャリア開発

[組織の責任]
・組織の目標や将来的な戦略を明確に伝える
・成長機会を作り出す
・財政支援を提供する
・従業員に対して学ぶ機会を与える

[個人の責任]
アメリカでは会社員でもコーチをつけるという話を聞きますが、以下を見るとちょっと納得。
・己を知る
・自分の評判を管理する
・人脈ネットワークを構築、維持する
・最新の技術を身につける
・スペシャリストとしての能力とゼネラリストとしての能力をバランスよく身につける
・自分の功績を記録する
・選択肢を広げておく

業績評価

業績評価
何を評価するのか
 ・個人の業務成果
 ・行動
 ・特性
誰が評価すべきか
 ・直属上司
 ・同僚
 ・自己評価
 ・直属の部下
 ・360度評価
業績評価の方法
 ・記述する
 ・重要事象法
 ・図式評価尺度
 ・行動的評価尺度
 ・複数比較

動機づけ
業績評価改善に向けた提案
 ・特性よりも行動を重視する
 ・業績行動について日誌に記録する
 ・複数の評価者により評価
 ・選択的に評価する
 ・評価者訓練
 ・従業員に対して適正手続を保証する

チームの業績の評価
 ・チームの成果を組織の目的に結びつける
 ・チームの顧客とそのニーズを満たすために実施すべき業務プロセスから始める
 ・個人及びチーム業績の両方を評価する
 ・チームで独自の評価方法を見出すよう訓練する

第16章 組織変革と組織改革

マネージャーが組織変革をしようとするのはどのような環境的な力によるのか、人や組織が変化に抵抗する理由、抵抗への克服の仕方

変革への圧力

変革の圧力因子

図表16-1 変革の圧力因子

変革のエージェント

変革のエージェント=変革活動のマネジメントに責任を持つ人
 マネージャー/組織の従業員/外部コンサルタントetc
     ※内部者・外部者ともにメリットデメリットがある

変革後は維持するために再凍結が必要

レビンの変革過程の図

変化への抵抗

抵抗の種類

変化への抵抗を克服する
【学習する組織の特徴】
・コミュニケーション
・参加
・支援の提供
・変革を受け入れることに対する報酬
・学習する組織の構築

  1. 全ての人が合意した共有のビジョンが存在する

  2. 従来の考え方や、問題解決、業務遂行に関わる標準的に決められた方法を放棄する

  3. メンバーが全ての組織内プロセス、活動、機能、環境との関わりを、相互関係システムのメンバーの一部であると認識している

  4. 批判や罰を恐れることなく、お互いにオープンなコミュニケーションを図る

  5. 個人的な自己利益や分断された部門ごとの利益を昇華させ、組織の共有ビジョンを達成さあせるために協力する

組織開発による変革マネジメント

組織開発(OD)に携わる上で基礎となる価値観
・メンバーに対する尊敬
・信頼と支援
・力の平等化
・問題に立ち向かう
・参加

ODに携わる上でのテクニック
・感受性訓練
・調査のフィードバック
・プロセスコンサルテーション
・チームビルディング
・組織間開発
・アプリシエイティブインクワイアリー:焦点をプラスの面に当てる

組織変革における現代の問題

職場におけるテクノロジー
・継続的改善プロセス
・プロセスエンジニアリング

仕事のストレス
 ストレス=悪ではない。
・ストレスの兆候
 身体状況<心理状況が重要。
・ストレスの減少

確信を刺激する要素
・構造的特徴
・文化的脅威
・人的資源特徴




考えたことやまとめ

組織って生き物だなということかと思います。昨日の常識が通用しないという。A社では通用したことがB社では全くハマらないのは当然。むしろコンフリクトの元であると。(生産的なコンフリクトならいいんですがそうでないケースの方は精神的に辛い。)
一方で理論は一定概念化されているので拝借すればいい。ゴールまでの到達が楽になる気がします。
現状の課題を解くためには、どの理論と理論を掛け合わせるのか足し合わせるのか、そこに隠し味をどう加えるのかが大事な気がします。

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