カンチョー(又吉)
「お母ちゃん怒っとったね、カンチョーしようか」と子どもが言う。
完全に僕の影響だ。
たまに妻にカンチョーしたくなる。
なんだかイライラしているなと思ったら「カンチョー」。
なんだか気分がのってきたら「カンチョー」。
カンチョーという文字を入力するだけでバカバカしくて笑ってしまう。
人差し指を立てて手を合わせるポーズをしただけでニヤニヤしてしまう。
妻の大きな声が効いて、子どもは食事中に席をたたなくなった。
それでも集中力は続かないので、妻は怒って布団に入ってしまった。
妻が部屋からいなくなったところで、
「お母ちゃん怒っとったね、カンチョーしようか」と小さい声で子どもが言う。
ニヤリとして「いいね」と答える。
今までのやりとりは何だったのかというスピードでほうれん草を食べ終わる。
今年35歳と今年4歳の男が二人、ゆっくりゆっくり布団へ近づく。
カンチョー!カンチョー!
今日も平和な一日でした。
(又吉)
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