もりしか

通勤時間と 寝る間際に つかまえた言葉たちです しっぽに触れて 取り逃がすこともありま…

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通勤時間と 寝る間際に つかまえた言葉たちです しっぽに触れて 取り逃がすこともあります 話すときも 書くときも 過不足のない言葉が 好きです

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「低気圧のサボテン」 晴れきれない 漂白剤をまぶしたようなそら もう少し 雨風にあたれば まっ青に洗われるだろうか お日さまは 低気圧に 日光をぽつぽつ射している そのまま日差しは 私の部屋の窓硝子を ななめに通って サボテンに かぶさった 私はサボテンの視点になって あの雲のかたちの 吹き出しなら どんなセリフが 似合うだろう、と。

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      「早朝出勤のスナップショット」 五月の温暖で 昨夜の雨は蒸発し 湿気を散らして のぼっていく 樹木は朝露で洗顔したように さっぱり青々しく映えている 光分解された酸素ガスは いっぱいにひろがって くうきはうすあおいろ (いろは保ちどこまでも透けていく) 電車は車体をうねらせ進む 通勤の気怠さ左右に揺られ 新鮮な早朝を映す車窓は流れ 世界はコマ送りで瞼を開けた やわらかい朝日は ガーゼの繊維の雲に 日光を薄くのばして 交互に重ね そのままそらの空間は 成層圏へつらなってい

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        「降水確率60%を写生して」 湿った空気と 水蒸気と 午後から一時雨のせいで この辺りぜんたいひんやりする ゼラチンに閉じ込めたような春だった 予報通りなら 本当だろう 風速0メートルと2メートルを 行ったり来たりする遠くから たしかに近づくらしい 雨の静けさに耳をすます どんよりしたそら どんよりしたそら こころと鏡になる どんよりしたそら 少し離れたところから 電車は弾む走行音で ゼラチンを振るわせている

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          「瞬間くらい」 樹木の葉いちまいいちまい すっかり春の温度に 暖まった 葉っぱの日光が キラリとする瞬間くらい コロナを忘れていいだろう 久しぶりのお外で 子供が飛び跳ねた瞬間くらい コロナを忘れていいだろう 会いたい人に会いに行けること それが 今は出来ないこと 子供に話す親を見ている

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          「春を待ちわびて」 高気圧が 西から被されば 低気圧も 東からやり返す 春の指揮者が ぐにゃぐにゃの天気図みたいな五線譜で 指揮棒を振るうから 風は不安定な調子で吹いている この時期の定番コンサート   (この辺りにいるみんな    春風の独唱を期待してる) 毎年こんなふうな不安定な風で 落葉樹もざわざわざわざわする 待っている もうすぐ 彼女がうたう 太陽に任命された 照明技術者が日差しを演出する あたたかなやわらかいひかり 微生物はあかるく目覚め プラントは二酸化炭

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          「詩作」 詩を書きたくて 詩人になった夢を 見て 詩人になりたくて 詩を書いている現実を 知る

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          「春の見本」 春がもともともっている いろを下地に 四月の花粉と上昇気流と 土壌のにおいと水蒸気が 透過性のあるブルーのなかで 撹拌され そらのあちこちに 気泡性の眠剤が生成されて 浮かんでいる 春のおそらの見本に 丁度いいなと 現地採用の助手は ぱしゃぱしゃと写真をとる 異国のカタカナの大学からきた フロラ先生は時々立ち止まり うんうんふんふん言いながら (四季のカタログ監修を任されている) せっせとはたらいている 四月の日光は やわらかいひかりのおびになって 樹木のあ

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          「春のお出かけ」 春の温度の 陽だまりに (睡眠薬の瓶に似たいろの午後) 暖められた生態系は活発化して (落ち葉はちりちり分解され春の燃料になる) 見上げると空が いくらでも たのしい予定を書き込めそうなほど 余白を空けた空が 続いているから 今日は行きたいところへ 行こうよ

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          ヨコシとはあっという間に 仲良くなった 席も近かったし 帰り道も一緒の方向だった 俺たち思春期もまだだった 放課後チャリでいろいろ行ったよな ヨコシが前を走って 俺が後からくっついて走った チャリをこぐヨコシの背中をよく覚えてる なぁ、あの頃よく着てたジャンパー 捨てちゃったか? ハローマックでトランシーバー買ったよな 使い方わかんなかったな 捨てちゃったか? 中学に入るまでの2年間 たぶんいちばん笑った時期だよ、俺の 中学に入ってクラス分かれちゃったな 俺の知らない友達に囲

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          四月の昼寝の底に 背骨のちからも抜けて 落ちていく 今は季節を急かさないで カレンダーをめくる風 しぜんとこんなふうな春になら 私を連れ去っていいわ

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          誰もが親になれてしまう いいのだろうか 親にも向き不向きがあるだろう バカは親になってはいけない ということを 親から学んだ 私は子供の耳をもったまま 大人になろう 子供の話しが 聞こえる親になろう

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          座って じっと 胸中に 釣り糸をたらす人を見た ベンチだけが寄り添っていた 吹かれた落ち葉は ころころと転がり 心配そうに その人のそばで止まった と思ったらころころと去った 夕方の日差しは タイミングを計ってる 彼の肩に手を伸ばす時を 彼の心はうかがい知れない 彼も僕を知らない 四月の一般的な風景のなかの ふたり 結び目をほどくように 風は流れた

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          どうしたら きもちよく 居られるだろう あっちにも こっちにも なじめない ちゅうぶらりんの こころのまま どっちへどこまで しあわせと 待ち合わせしたいけど どんな約束したら 会えるだろう

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          なにをやっても どっちへ行っても その道ならではの 壁にぶつかるだろう やる気を 深呼吸するのが 下手なボクらは 壁の手前で タバコでも吸おう どうにもならなきゃ なるようになる だよな

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          気にしなくていいよ 忘れることは きっと 人体のやさしい機能のひとつで 新しいことに向かうように 出来ているのだと思う とか言っちゃって

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          人も景色も心も移ろう 流れのなかで 確かなものを 手に入れたいと思う 確かなものに掴まっている間は 大丈夫だと思えるはずだから それは人との関係性のなかに あるかもしれないし 自分が取り組む事のなかに 見つかるかもしれない そして もしそれを失うときは 納得という 確かなものと 交換じゃなきゃだめだ