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第68回岸田國士戯曲賞 候補者を紹介する記事

岸田賞の候補作が発表されたので紹介という名の雑文
去年のはこれ


安藤奎(劇団アンパサンド)初候補
『地上の骨』

ナンセンスな演劇で注目が上昇していたが、昨年はMITAKA "Next" Selection選出・外部団体に提供した『デンジャラス・ドア』がドラマ化など大躍進を遂げてその果てに候補入り。ナンセンス系は岸田と相性悪いと思っていたが、なんのなんの勢いに乗っての候補入り。今回はオフィスを舞台に不条理が巻き起こる。

池田亮(ゆうめい)『ハートランド』初候補
池田本人や家族の実体験を演劇化する手法を得意としており、『弟兄』がTV bros年間ベスト演劇選出、『巛』がCoRich舞台芸術まつり!にて準グランプリ、『家を走る』でせんがわ劇場演劇コンクール特別賞、と評価される人気劇団。候補になっていないのが不思議だった(『姿』あたりで候補にしてもよかったのに)。今回は山奥のコミュニティで駆け込んできた人々をメタバース・VRを交えて描く。

金子鈴幸(コンプソンズ)初候補
『愛について語るときは静かにしてくれ』
現代社会の地獄、苦しみをサブカル愛を注ぎ込む。私は『何を見ても何かを思い出すと思う』で候補にすべきだと思っていて落とされた時バチギレしたが、ようやく候補。破天荒な作風なので岸田賞と相性は良くないと思っていたが、今回は後半で示されるヒューマニズム的に候補にするならこれと思っていたので予想通り。ゲーマーと恋人、弟、友人たちとのの歪な人間関係を描いたドラマからとんでもないジャンルへ変貌する。


菅原直樹(「老いと演劇」OiBokkeShi)初候補
『レクリエーション葬』
現役の介護福祉士であり、介護の現場に演劇を取り込み演劇の現場に介護を取り込む。高齢者たちの魅力を活かす演劇づくりを使い、演劇の社会参加に新たな影響を与えた人物。その作品も高い評価を受けてはいるが、戯曲というよりもその取り組みや作品全体の評価が多い気がするので。今回はちょっと意外。97歳の老人が介護施設のレクリエーションで毎月生前葬を行う作品。


蓮見翔(ダウ90000)(2年ぶり2回目)
『また点滅に戻るだけ』
コント作家として若手トップであろう人気者が『旅館じゃないんだからさ』以来早くも2回目の登場。冠番組を手にしてもコンスタントに舞台を上演。受賞すれば、お笑いナタリーあたりが大きく取り上げてくれるだろうけれど、安定しているので今回取れなくても常連パターンになるだろうか。ゲーセンで高校卒業以来の友人たちと話すうちに人間関係が拗れていく。


升味加耀(果てとチーク)初候補
『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』
その名が知られるようになったのは『ヤギの身代わり』の佐藤佐吉演劇祭選出がきっかけだと思うが、『はやくぜんぶおわってしまえ』が劇作家協会新人戯曲賞最終候補作、この作品の高評価でさらに注目度が上昇。宗教の閉鎖コミュニティを舞台にハラスメントや見えない暴力を描き出す。

メグ忍者(オル太)初候補
『ニッポン・イデオロギー』
オル太は岡本太郎賞受賞の現代アート集団であり、メグ忍者も個展を開催する現代美術家である。現代アートファンである公社はもちろんその展示を見たことあるが演劇の文脈で評価されるとは思っておらず、嬉しい驚き。日本のイデオロギーを6つの切り口で描くパフォーマンス作品。こういう人をもっと候補にすべきなんだけど。

山田佳奈(ロ字ック)初候補
『剥愛』
そうか岸田はこの実力派をまだ候補にしてなかったのか。『荒川、神キラーチューン』はCoRich舞台芸術まつり!でグランプリを獲るほどの傑作だったが無視をされた。あれから9年。その間に山田は映画監督や漫画原作者とジャンルを横断する活動をしていたが4年ぶりの新作でついに。剥製工房にやってきた謎の男をきっかけに人間の化けの皮が剥がれる。

去年は根本宗子、瀬戸山美咲といった常連陣の有力作がなかったのでメンツが大きかわるのではと思ったが思った通り。今まで以上に現代小劇場の時流に沿ったラインナップ。別名、えっ岸田賞まだこの人たち候補にしてなかったの!今まで何見てたの?一掃セール。
面白いのが3人が1992年生まれ(安藤、池田、金子)で、演劇界の新陳代謝が働いてきているのだろうか。まぁ、20代の時に候補にしてればもっとよかったんだけど。
まぁでも蓮見、升味加耀が20代での候補なのでいいか。


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