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2019第7節 京都サンガ×モンテディオ山形

4月3日(水)

明治安田生命J2リーグ 第7節
@西京極

京都サンガ モンテディオ山形
得点者:オウンゴール(山形、70分)


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1)今年は強い?!

◆スタートダッシュに成功

ここまで3勝2分1敗の勝ち点11で5位につけている山形。
なんといってもその特長は堅守だ。

開幕戦こそ岐阜に2失点したものの、その後は3試合連続クリーンシート(無失点)。強力な琉球攻撃陣相手に1歩もひかず1-1のドローに持ち込むなど、攻守にわたって粘り強い戦いをしている。

◆2人のキーマン

キーマンは2人。
1人はワントップのジェフェルソン・バイアーノ。ロングボールのターゲットとなるだけでなく、ドリブルでボールを運んだり、うまくファウルをもらったりとフィジカルを生かしたプレーが特長的だ。得点力があるのは昨季水戸で証明済みだ。彼の加入が躍進の理由の一つだ。


もう1人が右WBの三鬼だ。右サイドを上下する豊富な運動量はもちろんのこと、なんといっても高精度のボールでチャンスを演出する右足のキックが魅力だ。
彼をフリーにしてボールを蹴らしてはいけない。つまりセットプレーは決して与えたくない。


◆これぞJ2、これぞ木山監督

その戦い方はまさにJ2、まさにシンプルイズベスト
(貶してるわけじゃないです山形サポさんごめんなさい)
(山形は日本酒と芋煮めちゃくちゃ美味しいので好きです許してください)

基本フォーメーションは3421。

5バックを中心に縦・横ともにコンパクトな5-4ブロックの堅守が持ち味で、そこから前線のジェフェルソンバイアーノと2シャドー、WBの走力をもって縦に速い攻撃を仕掛けてくる。いわゆる堅守速攻だ。

2015年、5位に躍進した愛媛FCを彷彿とさせる戦い方である。
1番の違いは、ジェフェルソンバイアーノ、阪野といったフィジカルと得点力を兼ね備えたFWがいることだろう。

メンバーを見ても昨季と選手のクオリティ自体は大差ない。失点が多くクリーンシートが数える程しかなかった守備の整備をしたことが功を奏し、堅守速攻に磨きがかかっている。

過去2シーズンは堅守速攻に加えボールを保持することにもこだわっていた印象があるが、今季は原点に立ち返ったのか。
前線からプレッシャーをかけ前向きに守備をする。球際では激しく厳しく、負けないこと。攻守の切り替えを速くする。基本に忠実なイメージが強い。

求められていることは非常にシンプルだ。それをとことん追求するのが木山サッカーの良さであり、強みである。


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2)試合前プレビュー

◆山形対策攻撃編

山形は守る時、縦にも横にも非常に非常に非常にコンパクトだ。サイドでは絶対に数的不利にしない。かと言って中央を疎かにする訳でもない。バイタルエリアも使わせない。これをこじ開けるのは容易ではない。


京都はまずピッチを広く使ってサイドチェンジを多用して横に揺さぶっていきたい。
横にスライドする中でコンパクトな守備陣を横に間延びさせ陣形を広げる。そこを見逃さず、縦パスを入れて一気に崩していきたい。

山形は千葉に似たような、3トップを中心としたプレッシングをかけてくる。そこに中盤4枚が連動して奪いにくる。
木山体制3年目とあってかなりオーガナイズされているが、少ないタッチでボールを動かして相手の空けたスペースを使えれば、擬似カウンターが成立し一気にチャンスになるだろう。

◆山形対策守備編

既にキーマンを2人挙げておりそこを抑えたいのは山々だが、それよりもまずボールの出し手を抑えることが先決だ。ここ数試合、前からプレッシャーをかけれないせいでボールを簡単に自陣に運ばれるシーンが目立った。高い位置からプレッシャーをかけ、ビルドアップがさほど得意ではない山形のミスを誘発できればショートカウンターが仕掛けられる。

またサイドはWBをきっちりマークしてボールを前進させないように、ワントップに対してもタイトなマークで楽にプレーさせないようにする。相手が強みとしてる球際のところで簡単に負けないことが大事だ。

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◆試合展開

京都がピッチをワイドに使いビルドアップを、山形は3トップを中心に素早いプレスで京都を苦しめそうだ。この所京都の5バックはピンチを迎えても大崩れすることが少ない。なので仮に自陣で奪われたとしても決定機に至る回数はそれほどないだろう。
前半は我慢しつつ、カウンターでチャンスを狙う展開になりそうだ。

後半は前半で見えてきた相手の弱点をついていく動きが増える。中田スタイルでは定番になりつつあるパターンだ。
石丸体制を覚えてる方はそれを思い出していただければよいかもしれない。前半は慎重に、後半で相手の嫌がることをしてアグレッシブに。

読めないのがセットプレーの守備で、やられそうな雰囲気というか、ジェフェルソンバイアーノや阪野を抑えれるという確証が持てない。

そこを抑えきれたら無失点で試合を終えれるだろうし、出来なければまた引き分けということもありそうだ。

◆見どころ

ミッドウィークの試合ということで、両者ともにターンオーバーでメンバーを数人入れ替えることが予想される。
山形のワントップはジェフェルソンバイアーノだが、そうでなくても阪野が出てくる。

フィジカルに長けた両者、どちらがスタメンか分からないが、京都がこれに誰を起用して対応するのか、そしてそのマッチアップは見応えがあると思う。

そこを抑えないことには勝機はないので、京都のCBと山形のワントップの攻防に注目だ。

◆予想スコア

京都サンガ 1-0 モンテディオ山形
得点者:中野克哉(京都)

今日は出場機会があるはずだ。相手を揺さぶってカットインからの左足シュートをそろそろゴールに突き刺してもらいたい。
そういう期待を込めて得点者には中野を推す。

※残念ながらベンチ外で非常に悲しい

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3)試合後雑感

◆フォーメーションと戦術の差

京都が541(3421)
山形が3421

フォーメーション上は各ポジションが完全にマッチアップする、いわゆるミラーゲームである。(下図)

※背番号が適当なのはご了承を。

同じミラーゲームでも戦い方は異なるものであった。

●京都のプレス回避方法と山形のプレス

ミラーゲームの場合、マッチアップしてる状態なので前からくる相手をかわせず、どこに回してもボールを奪われやすくなる。(下図)



そこで京都はCBの真ん中に位置する闘莉王をアンカーのポジション(赤のスペース)まで上げることで2-3の台形を作ったビルドアップを試みた。こうすることでより多くのパスコースを作り、相手のプレスを回避しようとしていた。
また普段ビルドアップに関与することの多い庄司を前に押し上げることで、前線の人数不足解消の意図があった。(下図)


山形はこれに対し、マークを離さずとにかく前からプレスをかける姿勢を崩さないことでバックパスをするように仕向けた。バックパスをすると重心が必然的に低くなるので、そこでさらに圧力を強める。

京都はそれをかわせずにロングボールを蹴ることとなり、山形守備陣がそれをはね返し、中盤でセカンドボールを回収して攻撃に繋げるという構図になっていた。

また山形はリトリートで守るとき、スペースをとことん消している。同時にシャドーの選手がサイドにおりるのではなくやや前に残ることで、相手が後ろに下げた時に前からプレスに行きやすくなっており、さらにサイドチェンジのパスコースを消したりしている。(下図)

●京都の541リトリートディフェンスと山形のビルドアップ

山形のビルドアップは下図のようになっている。
山形はWBが高い位置をとるので、京都の5バックとマッチアップする形になる。
①3バックとCH(ボランチ)1枚で菱形を作る
②WBや2シャドーをターゲットに縦にボールを入れる
③そこがだめなら、シャドーの選手が下がってボールを受ける

中央の阪野はハイボールで闘莉王に勝てないと見るや、左右に動いたりDF・MFライン間でボールを受けたりと地上戦でポストプレーをしており、そこを捕まえきれなかったのもある。
3トップが常に嫌なポジショニングをして京都を苦しめていた。

京都は試合を通して、ハーフウェーラインで相手を待ち構えての守備が多かった。
山形の3トップとWBが高い位置を取るので、5枚でそこを捕まえる。SH2人は縦パスをハーフスペースに入れられないようにケアする。福岡が山形CHをマーク、エスクデロがアンカーポジションのもう1人のCHをマーク。
相手のパス回しの状況次第で庄司や小屋松、ジュニーニョが前から追っていくというものである。

しかし逆にスペースを空けてしまうことが多く、後ろの連動性も含めて課題の残るやり方である。
今後も5バックを採用するなればここは必ず改善しなければならない。


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◆前半

前半は徹底した京都対策に苦しめられ、前半4分カウンターからの福岡の決定機以外、あまり良い形がなかった。
局所的に見れば良いプレーというのは散見されたが、それがチャンスにまで結びつかなかったのが実のところだ。

前半は特に京都のSBやSHに対して山形のWBのプレッシャーが厳しく、サイドでボールを持ってもなかなか突破できなかった。お互い中央を締めている中でサイドの攻防が鍵になっていたが、ここでの勝利は見られなかった。

◆後半

京都は2-3でのビルドアップができていたとき比較的ボールを握れていたので、ここは継続。
加えて庄司やエスクデロがボールに絡む動きを増やすことで相手を動かしたり、サイドではボールホルダーに食いついてくるWBの裏を狙う動きを増やしたりといくつかの狙いを見せていた。

しかし山形は想定済みで、WBの裏はCBがカバーすることを徹底しておりサイド攻略はほぼ出来なかった。

左サイドでは冨田が高い位置を取って小屋松を孤立させないようにするなど、前半に多かった前線が孤立する状況を減らす意図が見られた。

とはいうものの、シュートにまで持っていけず、ボールを保持してもペースを握るには至らなかった。

83分に宮城を投入してからFW闘莉王で打開を試みた。
監督はその狙いをこう話している。
あそこは、(クロスを)上げることがすべてではないと思うので。闘莉王選手、高い選手がいることは、相手もそこにつられる。そうすると間が空くはずなので、その間に入っていってもらいたいですし。上もあれば下もある、真ん中もあればサイドもあるというところの判断を、やっぱりこれからやっていかないと。

闘莉王(185cm、僕と同じ)には熊本(186cm)がしっかりついてるし、他に上背のある選手が京都にいないので、ただ放り込むだけではチャンスにならないという判断である。

例えば牟田(今回は不出場)や宮城や本多を前に上げてなりふり構わず、というのならそれでも良いだろう。
しかし監督はあくまで"闘莉王の高さも使える状態を作った上で"これまでのやり方でやったのだ。

これは私の解釈だが、単なるパワープレーだと相手は跳ね返すだけで対応がハッキリしているので、様々な選択肢を持つためのFW闘莉王だったのだと考える。放り込みだけでなく、グラウンダーのクロスや崩しなど、相手に的を絞らせないようにしていたのだ。

そうでなければ宮城や本多を後ろに残しておくメリットがないので、そうだと思いたい…

FW闘莉王になってから、クロスは手元集計で8本(コーナーキック4本含む)、シュートは小屋松のカットインから左足ミドル1本のみであった。

決して放り込んでない訳では無い。コーナーキックもシンプルに入れていた。
それでもシュートがないのは

①クロスの精度の低さ
②山形が中央を固めている
③京都に競り合いの強い選手が少ない


ことが挙げられる。「放り込め」「シュートを打て」という野次が如何にナンセンスか、後半83分から見れば分かるであろう。


「横パスばかり」に関してもそうなった経緯を見る必要がある。
相手に跳ね返されたりカウンターをくらったりしたあと、中央に闘莉王しか競れる選手がいない中でロングボールを送るのは危険である。せっかくのマイボールを手放すことになるからだ。これは今季のスタイルで徹底していることでもある。
京都としてもここで縦に早く行きたいのだが、山形の守備ブロックの前に成す術がなく、結果として横パスで相手を揺さぶる感じになってしまった。


まあ結局のところ後半もいいとこなしだった。


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◆総括

山形がほぼペースを握り、京都の強みを完全に消した上での勝利だなと。これは完敗である。
3トップのプレスのかけ方、後方の連動性、リトリートした時のブロックの作り方、京都の弱点をつくボールの動かし方。京都の強みを消すだけでなく弱点をとことん突かれたような、今後の京都対策の手本になるような試合であった。

交代枠の切り方、タイミングも非常に素晴らしかったように思う。ベンチワークも含めて木山監督の圧勝だ。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間の木山監督のガッツポーズがそれを物語っている。


ただ中田監督のコメント通り、相手に決定機を作らせなかったことも事実である。完敗でありながらも、決して一方的にシュートを打たれ続けたわけでもない。
京都が数少ないながらも狙い通りの形からチャンスを迎えようとしていたところもある。監督としてはわずかながらの収穫と大きな課題を得た、教訓になるゲームだったのだろう。


サポーターとしても非常にフラストレーションの溜まる試合だったが、収穫が全くないわけでもない。
この敗戦をどう捉えるかは自由だが、チームにとってもサポーターにとっても糧になる敗戦であって欲しいと思う。

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4)失点シーンと課題

68:38〜
センターサークル付近で山形のリスタートでビルドアップ開始。

回されてるうちに京都のDF・MFラインが間延びし、中盤でもスペースを空けてしまう。

縦パスが入り南がそこで受ける。

WB三鬼がハーフスペースでフリーランして本多・冨田を引き付け、大外でCB熊本フリーに。

熊本のクロスが上夷の足に当たりオウンゴール。

原因は大きく2つ。
①後ろ重心になってしまいDFラインが下がって間延びした
②後半度々オーバーラップしてくるCB熊本を対処しきれなかった

まず①によってDFラインとMFの間(ライン間)に広大なスペースが生まれる。自陣深くの中央ではバイタルエリアなどともいうが、そういうところを簡単に使われすぎである。
この傾向は前々節ごろからあるのだが、昨季の悪い時と同じだ。押し込まれると重心が下がるのは致し方ないが、そこで高い位置で踏ん張れると攻守ともによりスムーズにいく。開幕2試合はCB2人がやや不安定ながらも高いラインで踏ん張れていた。

②の部分は、中盤で相手が自由にプレーできるがゆえにCBが攻撃参加する時間とスペースを与えてしまった。CBもCHももろとも敵陣から出られないように押し込む必要があるし、541を採用した試合ではあまりできていない。

ハイライン主義者ではないが、現状のままだと中田スタイルもクソもなくなるのではないか。不安がぬぐえない。

◆スカスカのバイタルエリア

プレスをかけると中盤にスペースができてしまい、そこを何度も使われて縦パスを入れられてしまった。これは岐阜戦でも多くあり、京都の守備の課題になっているのは上記の通りだ。
DF・MFのライン間、バイタルエリアでボールを受けさせてしまうのが現在の京都であり、そこはCBが出て潰すのか、はたまたボランチが下がってスペースを消すのか、対処しなければならない。



この試合では、本多がマッチアップする大槻をとことん潰そうとしっかりついて行っていたのは印象的だった。後ろでしつこくできると相手も簡単には前を向けないので、こういう守備を増やしていきたい。
5バックが持ちこたえているので、大崩れすることはなく守れていたが、苦しい部分はあった。

●闘莉王起用のメリット・デメリット

重心を低くした時に中盤はどこまで前に出ていって良いのか、中盤が前に出た時後ろはどこまで連動していくのか。
ここの連動性の整備とピッチでの判断が曖昧なのと、(あまり言いたくはないが)運動量が落ちてきた時間帯の闘莉王がネックになっていた部分も少なからずあった。

今季はコンディションの良い闘莉王だが、CBとアンカーを行き来していつもより運動量が求められたことと従来のスピードの無さが悪い方向に作用してしまっていた。
彼をFWにあげるというのはこういったことも影響してたかもしれない。

闘莉王が阪野をフィジカル面で上回って抑えたことは事実だ。福岡戦、柏戦でも相手FWを彼無しで抑えることは困難だっただろう。また自陣での空中戦勝率が70%を超えると言うデータをどこかで見かけた記憶もある。
しかしこちらの3CBが欠点を補い合う上で出てくるデメリットを、山形はうまく利用してきた。

なにも闘莉王批判というわけではなく、中盤と最終ラインの連動性だったり、バイタルエリアをどうケアしていくを考えた上で彼が必要な時もあるし、運動量を考えた上で厳しい時もあるということだ。

ここに関しては苦しい決断だが下げるという選択肢があっていいのかなとも思っていた。ある意味中田監督の采配ミスではないかと考えている。

重心が低くなって間延びするとか、連動性がないとか、そういうのはチーム全体で共有すべき課題なので、闘莉王が起用されるされないに関わらず今後改善されるのか見ていきたい。

闘莉王のCB起用はこのスタイルがあってこそなので、中田監督はうまく組み込んだし闘莉王もそれによく適応してるとつくづく感心している。

念の為改めて、闘莉王嫌いとか批判とかじゃない。山形に好きにやられてた上にちょっと苦しそうだなと思ったので、僕はそこを改善すべきだと思っていた。


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5)最後に

「ブレるな!続けていこう!」と題して、我慢強く、中田監督を信じて応援しようぜ!的なことを書いたが、私にだって悔しさとフラストレーションくらいあることは補足しておきたい。

なにしろ私が参戦した4試合(新潟、柏、千葉、山形)ではいずれも勝ててないのだから。

勝ててないどころかわずか1ゴールしかお目にかかってないのだから。


俺だって勝って喜びてえよーーーーー

でも我々サポーターは結果と向き合って、一喜一憂しながらも次の試合の時には切り替えて全力で応援するしかないんで。

栃木戦はまたお留守番だけど今後もスタジアムでは常に全力で、最大限のサポートをしていきたいね。


だから、中田監督にはより早く課題解決方法を見つけてほしい。頑張れ!

もしもプレス回避のお手本がいるというのなら、サッリ・チェルシーの自陣サイドでのプレス回避を参考にしてトレーニングしてみてはいかがだろうか。
あれができるようになれば強いよ。相当な技術とパススピードは必要だけど。


以上。

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