見出し画像

因果応報

お久しぶりです
お元気そうで何よりですわ

誰だろう? 何かの間違いじゃないか

ますますご活躍ですね 素晴らしいですわ

ううむ、この女、何者だろう まったく思い出せない
立食パーティだし、適当に話をあわせて、うまく別の場所に移動しよう

失礼、ちょっと飲み物をもらってきます

その場を立ち去ることができた
グラスを手にして、振り向いた

すると、いつの間にか、そこにいるではないか

ふと思い出した
あれは30年ほど前だったか
研究室の若い学生やスタッフたちと森に出かけたことがあった
濃い霧が出ていた日だった
とはいえ、遭難しそうな天候でもなかった
だが、事故があった
崖から落ちた、もしくは自分で飛び降りたように見えた
警察は懸命に捜索したが、見つからなかった

思い出して下さったのね
お迎えに来たのよ

目の前のパーティ会場や人々が消えた
森の中のようだ
誰かと手をつないでいる
あぶない!
足元は断崖だ

落ちて行きながら、因果応報という言葉を思い出した
記憶冷凍が融けて、すべては終わった
(410字)

2022年8月20日以来、以下の企画に参加させて頂いています。当初1年で打ち切りのつもりが、そのまま延長し1年半を楽に超えて毎週続行しています。ふだん全く考えもしない、ありえないことを大胆にテーマにして書いてみたいです。以前は410字前後を大幅に超えることもありましたが、今は、ショートショートらしく短く収めるように練習する機会にしたいと思っています。かつては、サイエンスフィクション風にしたり、釣竿を振り回すおっかなりジュリエットの物語にしたりもしましたが、このところは怪奇ショートに傾いています。毎回月曜朝5時の投稿を予定しています。今回のお題は「記憶冷凍」をワードもしくはテーマとして含む作品でした。どうぞよろしくお願いいたします。

初めての皆様へ

皆様には、桜井健次のエッセイのマガジン「群盲評象」をお薦めしております。どんな記事が出ているか、代表的なものを「群盲評象ショーケース(無料)」に収めております。もし、こういうものを毎日お読みになりたいという方は、1年分ずっと読める「群盲評象2024」を、また、お試しで1か月だけ読んでみようかという方は「月刊群盲評象」をどうぞ。毎日、マガジンご購読の皆様にむけて、ぜひシェアしたいと思うことを語っております。

ここから先は

1,507字

本マガジンでは、桜井健次の記事をとりあえず、お試しで読んでみたい方を歓迎します。毎日ほぼ1記事以上を寄稿いたします。とりあえず、1カ月でもお試しになりませんか。

現代は科学が進歩した時代だとよく言われます。知識を獲得するほど新たな謎が深まり、広大な未知の世界が広がります。知は無知とセットになっていま…

いつもお読みくださり、ありがとうございます。もし私の記事にご興味をお持ちいただけるようでしたら、ぜひマガジンをご検討いただけないでしょうか。毎日書いております。見本は「群盲評象ショーケース(無料)」をご覧になってください。