データビジネスにおける顧客の欲しい「穴」とはなにか?

この記事の位置づけ

https://note.com/kshnkmr/n/n249c63d7e7a6
を公開したところ、顧客が欲しい「穴」とはなにかという質問をいただきました。


顧客は「ドリルではなく穴が欲しい」わけですが、どのサイズの穴をどこにあけるかは、第三者が提供可能なデータだけでは意思決定は容易ではない(というか多くのケースではすべきではないはず)ので「扱いやすい高性能のドリル」を提供するでよいのではないかと考えます。

ということを書いていたので、本記事ではも少しこの点についてもう少し考えていることをまとめてみます。

なにが「穴」なのか

「ドリルではなく穴を売れ」という時の「穴」は、「顧客のニーズを理解して解決手段ではなく課題解決を売れ」という趣旨で使われます。

この文章を書くにあたり、なぜ「ドリル」と「穴」を比喩として使ったのかを考えてみたのですが、実は「穴」もまた顧客の課題を解決するものではないと感じていたからかもしれません。ドリルを買いに来たお客は確かに穴をあけるためにお店に来たのでしょうが、穴をあけることも「棚を作る」「何かを吊るす」手段の一部に過ぎないはずです。

同様に、データからもたらされる有用な情報や発見は「より良い意思決定」の手段であり、意思決定もまた「事業機会の最大化」のようなさらに上位の目的の手段の一部という構造を持っています。

このように整理すると、私はデータビジネスにおける顧客にとっての「穴」は「より良い意思決定」自体であると考えてたようです。

販売機会の多さという観点からはいろいろな課題を解決できる道具を売るよりも、何度もピンポイントの課題を解決した方が結果的に儲かるでしょうし、顧客接点も増えるのでニーズの把握も容易にできるようになりそうなのでビジネスとしてはその方が儲かるかもしれません。

それでも、私はデータビジネスは「よりよい意思決定の支援」が本分であり「分析者がステークホルダーに説明するときの再加工の手間が少ない」ことまでを競争軸として持つドリル屋たるべきだと考えています。

ドリル屋の役割

こういう文章を書いてるとつい、ドリル屋というのが単独で成り立つ職業なのか、ドリルメーカーという立場を含むのかといったことまで気になってきます。が、ここでは「ドリル」こそ売るべきだと主張している理由を補足します。

データビジネスにおける納品物は

例えば、

a. 自身や会社の抱える課題に対する仮説を検討するための情報
b. 自身が考えていた仮説に対する確証
c. 自身が自信をもって責任範囲の業務を遂行するための発見
d. 上司や社内を説得する資料
e. 取引先や提携先を説得する資料

があります。
a,b,cは「よりよい意思決定の支援」、d,eはそれに加えて「分析者がステークホルダーに説明するときの再加工の手間が少ない」までを提供しているパターンになります。
これらが私の考える「扱いやすい高性能のドリル」です。

もちろん顧客によってはその先の「よりよい意思決定」自体や、そこから引き出させる「売上や利益」までを期待する場合もあるでしょう。
しかし第三者が提供可能なデータだけでは意思決定できるのであれば、それはビジネス上の意思決定としてはさほどクリティカルなものではなく、競争力の源泉に話さなそうです。また、意思決定の後に発生する事業プロセスが自動的に発生するともいえるのでそこまで含めた自動化を試みることでより効率的な事業運営もできそうに見えます。

さらに言うならば、そこまでを外部の会社に委ねるのであれば、その会社は自身で事業課題を解決する能力を失っていくことになるはずです。そうならないように「より良い意思決定」自体は、自社、顧客、競合状況といった複合的な情報行われるべきだり、担当者はその手綱を手放すべきではないというのが私の考えです。

結局、書いてみると価値観や事業ドメインに対する考え方ではあるのですが私が「穴ではなくドリルを売れ」と言っているのはこのような理由からです。

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