【医局のイッヌが脱走を試みる話】

今回は2021年8月23日にツイートした内容に加筆修正を加えています。

元ツイはこちらhttps://twitter.com/ksksk16g/status/1429774986995142662?s=20

長いので興味ない方は読み飛ばしてください。地方弱小大学の精神科入局してからこれまでの心境や生活の変化を綴っていきますね。最近現実でもツイッターでも医局を辞めようとか、入局をしない方がいいという話がよく聞かれます。これまで色々考えてきましたが、ただ単に給与が安いから!コスパが悪いから!みたいな単純な話ではない気もしました。入局していない人が大学や医局の批判をすることは違うと思いますし、これまで医局員として様々なことを経験してきた上で今回のツイートに至りました。

出身大学への入局ということもあり、当時は入局することが当たり前という時代でした。本当にここ数年で時代が動いていっていることを実感します。今ではこんな大学嫌いな中堅になりましたが、若手の頃は先輩や後輩、薬剤師さんなどと連日飲みに行ったり、病棟の看護師さん達ともよく飲みに行っていました。若手の頃は臨床研究も参加させてもらい、主要な学会での発表や海外発表もしました。当時、それはそれで楽しんでいて、給料以外そんなに不満も感じていなかったと思います。それでも研修医よりは給与も増え、独身だったこともあり貯金もそれなりにできていました。当直も月に10〜15回くらいしてそのまま翌日も働くことが普通でした。

とある年に院内でのインシデント事例などが重なった時、大学という大きな組織が実は小さな組織の責任のなすりつけあいであることを体感しました。たくさんの診療科が揃っている素晴らしい組織ではなく、それぞれが違うベクトルを向いている連携の取れないバラバラな組織なことに気づいてのです。診療科の中でも親身になってくれる上司や逆にそっと離れていく上司なども肌で感じました。各科は縦割りの社会で連携は皆無、病院全体のずさんな会議や医療安全などの怠慢さに若手ながらに愕然としました。それらが重なり押しつぶされそうな時に妻と出会い、その後結婚しました。あの頃を支えてくれて、感謝しています。

と同時に、このままではいけないと考え方が変わりました。同じタイミングでワイ地区では比較的診療体制や教育体制に恵まれた単科病院に異動になり、さまざまな働き方にふれ、尊敬できる上司に出会ったことも大きかったです。そして自分のやりたいことの方向性が見つかりました。

その病院では、とにかく家族との時間を大切にすること、そのために有給など福利厚生の整備がされていました。それまで劣悪な当直だらけの毎日を送っていたので、この時初めて「これでいいんだ」って思えたし、上司の皆さんやそのほかのスタッフが生き生きとして仕事をしていたことに素直に驚きました。

仕事内容も大学と比べて充実してました。利益を第一にと謳いながら治療途中でも転院させる大学病院とは違い、救急患者もどんどん受け入れ、時間をかけながら社会復帰まで持っていく流れをみて正しい精神科治療はこっちなんだと感じました。大学でやってきたことはなんだったのだろうと考えさせられることが多くなりました。そして、自分のやりたいことは大学にはなくてこっちにあるんだと気づいた瞬間でもありました。研究は大学病院でしかできないことだし重要なことだと思うけど、それらを経験した上で自分では劣悪な環境の中でずっと研究を続けていくことは無理だと感じました。

結婚や出産、育児も働き方に与えた影響はとても大きかったです。育児が始まるとお互いこれまでと人が変わったようにイライラしてしまうことが増えてしまいます。そこにさらに大学での雑用や残業が重なるとイライラは倍増し、相乗効果で妻のイライラも増えるという悪循環になります。もちろん個人差は大きいと思いますが、こころにゆとりがないと子供に優しく接することができないことを体験し、やはりこのまま大学勤務を続けていると家庭に影響が出てしまうと感じました。

このままではいけないと思い総合病院に異動を希望しました。救急外来も担当しなきゃいけない病院であり医局員からは人気ない場所でしたが、初期研修をしていたこともあり業務にもスムーズに溶け込むことができた。小難しいボスや大量のオンコールはあったものの仕事は比較的充実してました。残業も少なく、ゆとりを持って仕事できたため、家庭も円滑に進んでいました。

そして今年、(色々ありましたが)半ば強制的に大学に戻らされることとなり、立場も変わり異動しました。現在進行形で環境の悪さを改めて実感しています。他の文句はもう割愛するけどとりあえずまず絶望的に給与が低い。居心地の良い環境で、やりたいことを見つけて、プライベートも確保できる職場で仕事をしていくことがどれだけ重要かこれまでの異動を含んだ経験で学ぶことができました。

もちろん大学病院は指導医もいて、当たり外れはあるものの若手のうちに教えてもらうことのできる場としては最高の場だと思います。特に精神科医療はトンデモや昔ながらのカクテル療法が現在も使用されている中で、最初から単科病院に就職すると簡単に標準治療の道を踏み外す分野だと思います。

だからこそ、若い精神科を目指す先生には大学病院で標準治療を学んでもらいたいし学ぶべきだと思ってます。ただ、自分の人生のフェーズが進行する度に自分の働き方を今一度見つめ直していく必要があると思いました。いつまでも大学病院で働いていくには何かしらの犠牲が必要になると思っていますし、そのような役割を担う人も必要です。ただ、それは自分ではないと感じました。

臨床、研究、教育に触れて、大学、総合病院、単科病院を経験してきた今だから言えるのかもしれませんが、次のライフステージに向かうために医局をやめるという大きな決断をしようと思っています。ただ、大学でしか学べないこともたくさんあるってことは反大学派の人間から皆さんに伝えたいことなのかもしれません。

ただ、少なくとも大学病院の仕事と自分の仕事のモチベーションにズレがある今、やりたいことができず、理不尽なことに対する不満が募ることは事実だし、教えることが多くなり自分が学ぶものが少なくなりました。それを感じたからもうここにいるフェーズは過ぎたのかなと思っています。もちろん研究を続けていく人材が必要なことも理解はしていますが、それはほかの方にお任せしようと思っています。繰り返しになりますが、医学を教えてもらえる環境としては素晴らしいと思います。書いているうちに反大学派というか、自分のやりたいことやライフプランとのギャップが問題なのかもと思うようになりました。もちろん給料や劣悪な職場環境も改善すべきポイントは多々ありますけども。

資格取得のための指導など素晴らしいところもたくさんあると思います。あとツイネタには困りません。これはあくまでも1人の体験談なのでいろいろなことを参考にしてもらいながら進路やライフプランを考えてもらえれば幸いです。最後までお付き合いありがとうございました。

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