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フェイクニュース「手ブレで下着撮影に失敗したから無罪」シェアニュースジャパンの恣意的まとめ

 盗撮目的で女性のスカートの下からカメラを差し入れた男に福岡地裁が「手ブレで下着撮影に失敗したから」として無罪を言い渡したとされる記事が拡散され、類似するまとめも複数投稿されている。
【え?】盗撮目的で女性のスカートの下からカメラを差し入れた男に、福岡地裁「手ブレで下着撮影に失敗したから無罪」(ShareNewsJapan)

 しかし、この記事で出典元とされている朝日新聞の記事には「手ブレで下着撮影に失敗した」などという裁判官の結論は記述されていない。被告男性が「盗撮した」と裁判官が認定しながら「失敗」を理由に無罪を言い渡したかのようなタイトルになっているが、他社の報道を見てもそういった記述は見当たらず、これらはShareNewsJapanの創作と思われる。

裁判官は「盗撮行為」を否定している

 まず、この裁判に関わる報道で朝日新聞日経新聞読売新聞の記事を参照したところ、無罪判決に至る経緯は「自白の誘導」であり、そもそもスカートの中にカメラを差し入れたという自白に対して、動画では対象すら確認できず態勢も「盗撮を試みる者としては露骨すぎて不自然」としている。

 松村裁判官は、自白で説明された撮影時の体勢について「盗撮を試みる者としては露骨すぎて不自然」とするなど、自白に不合理な点が複数あると指摘。携帯電話に残された動画が手ぶれで明確に映っていなかった点などを踏まえ、「差し入れたとの事実を認めるには合理的な疑いが残る」と結論づけた。
出典:盗撮で起訴、男性に無罪判決 福岡地裁「自白に不合理」:朝日新聞デジタル

 朝日新聞の記事でもわかるように、手ブレで撮影に失敗したなどという事実はなく「差し入れたとの事実を認めるには合理的な疑いが残る」と盗撮行為そのものが認められないとしている。
 そもそも手ブレによる盗撮失敗ではなく、盗撮のためにスカートの中にカメラを差し入れた様子が写っていなかったのだ。

 一方、被告は公判で「盗撮しようと近付いただけ」と、犯行を思いついた意思そのものは認めている。この部分を切り取る形でShareNewsJapanは記事を構成しているが、裁判で無罪となった経緯を見る限り、意思はあったが行為に至ってはおらず、録画撮影状態にしただけで「盗撮を試みる者としては露骨すぎて不自然」と指摘されている。
 要するに、盗撮しようと「思った」段階で疑われ、任意の取り調べを繰り返されたことにより事実と異なる自白をしたということだ。これは「お前!さっき盗撮しようと考えただろう?」と想像の段階で裁かれるような恐ろしいことになりかねない。

「迷惑防止条例で罰金」は事実誤認

 ShareNewsJapanの記事の中で「福岡県迷惑行為防止条例の6条2項1号には違反してるとはいえない、しかし同項の2号には違反しているとしたはず、だから40万円の罰金が科せられている」とするツイートが引用されているが、これも事実誤認であり本人が訂正している。

 判決では「無罪」である。40万円というのは起訴した検察の「求刑」であり、この求刑に対して裁判官は無罪としたのだ。

 しかし、この投稿者の「同項の2号には違反」という指摘はなかなか興味深い。福岡県迷惑行為防止条例では以下のように定められている。

(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに
、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる
行為をしてはならない。
一 他人の身体に直接触れ、又は衣服の上から触れること。
二 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所に
おいて、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をし
てはならない。
一 通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞ
き見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この
条において「写真機等」という。)を用いて撮影すること。
二 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向
けること。

3 何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為
をしてはならない。
一 公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆
が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態に
ある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。
二 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向
けること。
出典:福岡県迷惑行為防止条例 - 福岡県警察

 たしかに「二 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。」と規定されている。しかし、本件ではカメラを"設置"はしておらず、証拠とされた動画では対象が確認できないことから、盗撮行為目的での"他人の身体に向ける"ということには当てはまらない。

結論 盗撮はアカン!が、捏造もアカン!

 本件は裁判に関わる報道であり、無罪となった理由も示されている。被告が司法以外で責められるべきは「盗撮をしようとした」ことであり、実行に移さなくとも撮影モードは起動している。
 ただし、これでは罪に問え無いということ。ましてや証拠もない状態で任意の取り調べを繰り返し受けたことによる自白には整合性がない。被告の男性の無罪は妥当と思われるが、人として反省する点はあっただろう。

 一方で、これらの裁判を事実に基づかず面白おかしく仕上げてしまうのは危険だ。司法に関わる案件でフェイクニュースを流してしまうと、それが真実として誤認される過程で「司法が証明」という扱いを受ける。
 これらは重大な名誉棄損である。

※本記事は被告人男性の名誉に関わる案件のため、無料で全公開とします。

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