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仕事と2人の育児をしながらMBAに挑んだ感想をつらつら語る

前回の記事から2年経ち、仕事で新たに知り合う方に「noteを読みました」と言っていただけたりして、古い記事が読まれていることに焦ったため、久々に書いてます。雑記です。

今年の大きなアップデートは、IE Business SchoolのMBAを取得したことなので、それについて書こうと思います。MBAの体験は一人ひとり違うものなので、あくまで「この人はこうだったんだ」というN=1の感想として流し読みいただければ幸いです。


自分について

2021年2月、IE Business School Global Online MBA開始。途中転職し、1年休学。2023年7月MBA取得しました(プログラム自体は計18か月でした)MBA開始当初はフィリピンのスタートアップに勤務していましたが、現在はアマゾン ウェブ サービス ジャパン (AWS Japan) のパブリックセクターで事業開発として働いています。MBA開始時32歳(終了時34歳)、2人の子供がおり(開始時3歳と1歳)、上の息子が知的障害とASDで、保育園は加配の先生についてもらいつつ療育通い。両親ともに遠方在住なので夫と二人三脚育児中です。

達成感はあったが拷問のような日々

終わった後の達成感はとてもあり、MBAを志したのは間違いなく良い選択だったと思っています。一方で、想像したより何倍も大変なプログラムで、気合いで乗り切れるという読みは甘かったです。犠牲にしたものも多く、全速力のマラソンを続けているような感覚でした。犠牲にしたのは、本来は人生で優先度高く確保すべき、家族との時間、パートナーの自由時間、自分の睡眠時間等です。

私の在籍したプログラムは、オンラインMBAといいつつも、約半年に1回、スペインのマドリードに渡航しての対面授業がある Blended formatでした。通常は、月曜日~木曜日は Forum(24時間稼働する非同期でのオンラインの議論)と、土曜日のVideo Conference(90分×2コマ)がありました。個人的には、この平日のForumが相当な負荷でした。

平日は、子ども達が寝た後の夜しか作業できないことに加え、土日も自分の時間がまとまって確保できるわけではないため、平日に残ったタスクを土日に挽回できず、週末の授業で新しいタスクが追加され翌週の平日はさらにキツくなるという、どんどん負荷が上がっていくゲームでした。子ども1人ならパートナーに任せやすいのですが、我が家は2人(うち1人言葉が通じないハイパー多動児)なのでそうといかず。。

(ちなみに自分はあまり息抜きが上手にできなかったのが反省点です。他先輩方はうまくやりくりされているので、ぜひ IEの日本人卒業生のWebsiteを覗いてみてください!)

理不尽な社会を変えたい

子ども2人が小さいタイミングでMBA受験に踏み切ったのは、上の子の障害発覚がきっかけです。20代のころからずっとMBAに興味があったものの、第一子出産後は何となく難しいかなと思い、強い勉強意欲もなかったため諦めていました。

しかし、障害受容のプロセスで自分がそれまで(恥ずかしながら)全く見ていなかった色々な社会の理不尽さに気づき、生きづらさを感じる人たち、Marginalizedされていると感じる人たちを取り巻く、多数派に最適化された社会の状況を変えたいと願ったからです。とにかく早く行動しなければいけない、自分が社会を変える力をつけなければいけない、そんな気持ちで勢いで受験しました。

在学中に転職、限界を感じ1年休学

MBA開始後は、自分の長期的な目標を見直す機会を多々与えられました。Part-time MBAなのでプログラム中にキャリアアップしていくクラスメイトに大いに刺激を受けたことはとてもよかったです。Term 1 (1学期) で早くもLeadershipやTeam Buildingで自分の足りない点とやるべきことを見直した背景で、MBA開始半年後にAWS Japanに転職しています。
しかし、初めての大企業、初めての日本ベースの仕事、初めてのテック企業、ということで精神的な負荷が大きく、MBAでも最難関なFinanceと被ったタイミングで完全に詰みました。子どもたちの体調不良が続いたタイミングで限界が来て、突然の胸の激痛で病院にかけこんだら、「異常はないです、ただの過労とストレスです。寝てください」と言われて1年間の休学を決意しました。

結果、休学してよかったです。慣れない仕事と子どもの夜泣き対応で寝る時間がないのにMBAやるのは無理ゲーでしたが、復学後は下の娘が夜泣きが無くなって大分楽になったと感じました。また、転職後1年間である程度仕事のペースが掴め、少なくともすぐクビにならないだろう…という精神面の安定を得ていたことも大きかったです。

そんなこんなで、色々ありましたが、なんとか卒業まで至りました(略しすぎすいません)。

仕事・育児・MBAを何とかマネージした工夫

①育児家事中の耳からのインプットと、思考

PCに向き合う作業時間は、子どもがいない時に比べて圧倒的に限られていますが、家事育児中、スマホの読み上げ機能や、Youtube、Podcast等でのインプットと、Forumで書く論点や自分のポジションを整理する思考を行うことを常に意識していました。掃除中や、公園で子どもを遊ばせている間などひたすら耳で聞いたり、ぶつぶつつぶやいてプレゼンを練習したりしていました。平日でインプットや思考をしていなかった時間はほぼなかったのでは、と思います。

※しかしこれは家族と接している間、心が相手に向いていないということなので、必ずしもお勧めできる方法ではないと思います。。

②自分がMBAにコミットすることに対し理解ある家族・パートナー

これが個人的には最重要要素だと思います。自分が勉強中、子守してくれる人的リソースがマストですが、私の場合はパートナーが毎週土曜日の授業中や課題に追われている時など、ワンオペしてくれたことで乗り切れました。妻のMBAの裏で過酷なワンオペを強いられる本人は相当大変だったことでしょう。。。また、対面授業のためスペインへ渡航する際は、義両親に東京まで来てもらう等多大なヘルプをいただきました。家族の理解と協力なしではかなり厳しかったと思います。

③その他
都会共働きの基本かもしれませんが、フローレンスの病児保育や、家事代行、つくりおきには大変お世話になっています。また、シッターさんにお願いするのは一般的には有効かと思います。我が家は、障害のある子ども(というか多動すぎる息子)に対応できるシッターさんがなかなか見つからず、、何人かお願いしてみたのですが、うまくいきませんでした(号泣)


オンラインMBAって実際どうなの?の疑問に答える

対面に比べて学びが薄いのでは?

個人的には、完全にNoだと思います。フルタイムMBAとはまた異なった種類の学びかとは思いますが、学びはとても濃いとすら思います。

一つは、Forumでの相当なインプット&アウトプット量です。IE Business SchoolのGlobal Online MBAプログラムは、月曜~木曜は毎日 1000 文字* 2 科目をオンライン上で議論で投稿し、ケースの論点に関して自分の意見を述べなければいけません。自分の意見を投稿するには、24時間世界中から投稿される他のクラスメイトの様々な視点からの大量の投稿を、全部読む必要があり、大変でしたが有意義でした。授業を受け身で聞くという選択肢がなく、常に能動的にアウトプットしなければいけないこともよかったです(※仕事のピークと重なると瀕死になります)

クラスメイトと仲良くなれないのでは?ネットワーキングできないのでは?

これもよく聞かれますが、仲良くなれます!マドリードでの対面の授業もありますし、何よりこの非常に大変なコースを乗り切る「同じ船に乗る仲間」としての一体感を感じていました。MBAのコースはグループワークが多いためオンラインで毎日Whatsappで濃密にやりとりしています。それぞれの異なる仕事量、家庭とのバランス、MBAの優先順位がある中で、よいチームを作っていく過程で衝突はありましたが、困難な状況を乗り切るリーダーシップなどは、他のクラスメイトから学ぶことが非常に多かったと感じています。


どうやってたの?無理でしょ?

とりあえず色々なものを切り捨てています。料理は一切しない、子どものご飯もぶっちゃけ適当(大人はさらに適当)、子どもにYoutubeを見させる時間が長くなった、毎日着る服も思考停止してほぼ似た服を着る、などなど。MBAの成績もDeanまでには至りませんでしたし(個人的には十分満足しています)もっと勉強したかったな、と思うこともあります。
スケジュールについてもよく聞かれるので書いておきます。

パターン①平日体力の残っている日
06:00  起床、朝の支度、保育園送り(バタバタ)
09:00  仕事
18:00  お迎え
18:30  夕飯、風呂、寝かしつけ
21:00  子ども就寝
21:00  残った仕事など
22:00  MBAのForum、MBAのGroup Callなど
01:00  寝る

パターン②平日体力が残っていない日
21:30 子どもと一緒に寝落ち
03:00 寝落ちしたことに絶望しながら起床、Forum
05:00 仕事の残りまたは家事
06:00 子ども起床

パターン③課題締切直前
子ども寝た後ほぼ徹夜…

それでもMBAやってよかった

自己認識が高まり、自信がついた
MBAやってよかった理由は色々ありますし、キャリア面で大いにプラスになったと感じていますが、個人的によかった点としてあえて挙げるとすると、Self-Awarenessが高まり自信がついたことと、今後やるべきことが明確になったことです。

Leadershipの授業では様々な概念を学びましたが、周囲や社会にポジティブな影響を与えるリーダーシップは自己認識から始まるということを理解し、自己の弱みと強みにとことん向き合いました。プログラム全体を通して、MBAのチームメイトとの密な協業やフィードバックがあり、自分のリーダーシップの癖を客観的に認識する機会に恵まれました。

過去の失敗の数々を通して自分は本当に自信がない人間でした。小さな成功体験があっても、自信につながるわけではなく、ネガティブな出来事ばかり劣等感として自分の中に蓄積してしまっていました。MBA在学中にCareer Coachingを受ける機会があり、自信がないことを相談したところ、Positive Intelligenceのコーチングを受けたこともとてもよかったです。

また、自分の人生のパーパスについて深く考え、残りの人生で何を成し遂げたいのか、そのためにどういうリーダーシップを身につけたいのか方向性が見えてきました。

MBAを始める前は、ケニアやフィリピンでスタートアップで働いていて結果が出せなかった経験から、スタートアップの事業を通して新興国で大きなインパクトが残したいと考えていました。しかし、アフリカもスタートアップもとてもワクワクするけど、自分が人生をかけて向き合いたいのは、伸び盛りの新興国ではなく(少なくとも放置すれば衰退する)日本の社会の課題なのだとよくわかりました

素晴らしいMBA仲間とのつながり
本記事では詳しく触れていませんが、MBAの先輩方や同期の方々は本当に様々な面でヘルプいただき、感謝してもしきれません。日本と世界中のクラスメイトと濃密な時間を過ごし、文字通り世界各国に仲間ができたこと、こういったそれぞれ分野は違えど、これから一緒に社会をよくしていこうと思える素晴らしい仲間と出会えたことは、人生を豊かにする財産になったと感じています。

仕事と育児をしながらMBAをやるメリットはあるのか

正直ほぼないのかな..と思います笑 
勉強時間を多く確保し、MBAでの学びを最大化させるなら、出産する前のタイミング>乳児が動き出す前のタイミング(夜泣きは辛いが)>子どもが複数より1人のタイミング で、つまりより早いタイミングで始めたほうがよいと痛感しました。第一子の育休中にMBAをやっている方も多くいらっしゃいます。
一方で無理やり今のタイミングでMBAをやったメリットを絞り出すとすると…

意外と健康が保てる説?

いつ子どもが体調不良になるか不明なので、自分が睡眠不足で悪循環になるとすべてのオペレーションが崩壊する恐怖心が常にあったため、睡眠時間最低5時間を確保することは意識していました。自分ひとりだったら深夜までForumに向き合って作業していてより健康を崩していた可能性は大いにあると思っています。

極限まで生産性が上がる説

1分でも長く睡眠時間の確保するのに必死なため、とにかく限られた作業時間でアウトプットを最大にすることに本気になりました。優先順位の低いタスクの切り捨てもどんどんやりました。結果的に生産性は上がった、はず。
多忙な会社員の方やスタートアップや企業の経営者などに比べたら忙しさの度合いはまだまだかと思いますが、家庭と仕事とMBAという、複数の全く違った大事なものをバランスをとるという点が難易度が高かったです。

おわりに


以上、半ば書きなぐりのnoteを読んでいただきありがとうございました。

仕事・育児しながらMBAやるのは大変と一概に言いたいわけではなく、仕事の柔軟性や育児へのコミット具合、周囲のサポート等を調整することで、負荷はある程度はコントロール可能かなと思います。これから挑戦する方をdiscourageする気は全くなく、むしろ全力で応援する意図です。

私の場合、パートナーの理解などあらゆる条件に恵まれて幸運だった故にこのような挑戦ができましたが、多くの子どもを持つ方にとって、特に女性にとっては環境が許さないことも多々あることは承知しています。多くの方が自分の望む選択ができる社会に変えていきたいです。

家族、仕事など様々な事情でフルタイム留学ができない人でも、強い意志を持っていればMBA取得の門戸を開いてくれる、素晴らしいプログラムを提供してくれたIE Business Schoolの皆さん、IE University北東アジア地域ディレクターの飯野さん、MBA同期の皆さん、家族に感謝します。

今後ですが、冒頭に述べたような社会の理不尽さを変えるべく粛々と活動していく所存です。MBAは広く浅い知識習得という面がありましたが、今後は深堀を意識してテクノロジーによる公共の課題解決、政策分野の専門性をつけていきたいと思います。新しいことを勉強し自分の価値観をアップデートすることは好きなので、一生実践と学びを続けていきます。

ありがとうございました!

※MBAのプログラムは2023年7月時点の情報で変わっている可能性があります。最新情報は公式サイトなどご参照ください。

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