Vol.1 スポーツと独禁法の関係

こんにちは。ぽんたこと須原@suhara_pontaです。

スポーツビジネスや大学スポーツにアンテナを張っている人なら、『日本版NCAA』という言葉を聞いたことがあると思います。大学スポーツの、大学横断的かつ競技横断的な統括組織を国主導で作ろうという動きですね。このアイデアには賛否両論あります。いろんな論点が問題となっているのですが、その一つが大学スポーツの収益化学生選手の報酬受け取りについてです。大学スポーツはアマチュアであるべきで儲けを出すのに反対する人が多くいます。

スポーツ庁主導で行われた『日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会』では選手の報酬という論点は触れられず、避けられたように思います。

そこで今回は、「日本の大学スポーツが収益化していく中で、学生選手の報酬は支払われるべきか?」という論点について、私見を述べたいと思います。

僕は慶應の法学部の田村次朗ゼミに所属していました。田村次朗ゼミは独占禁止法を中心にゴリゴリ勉強するゼミらしいです。僕はしてません笑。
ですが卒論は「NCAAと米国独占禁止法」というテーマで比較的真剣に取り組みました。今回はそれを切り口に、「体育会学生はアマチュアだからと言って搾取されるべきではなく、正当な報酬をもらうことでマーケット感覚を養うべき」という主張の連載をしたいと思います。以下の全4回構成です。

では早速、Vol.1の「スポーツと独占禁止法」です。独占禁止法の観点から今回の連載を行うので、独禁法の簡単な説明をして、スポーツとの関係性を説明します。また、ドラフト制度の例と僕の意見を述べます。

日本には独占禁止法という法律があります。その名の通り、独占を禁止する法律なのですが、そもそもなぜ独占は禁止すべきなのでしょうか。それは競争によって成立してる資本主義経済において消費者を守るためです。

例えば、ある商品を作って売ることができる会社がたくさんあれば、その会社同士で価格競争をして消費者はその商品を安く手に入れることができます。
一方、ある商品を作って売ることができる会社がA社しかない場合、その商品が欲しい人はA社から買うしかありません。よってA社は自由に価格を決定でき、消費者は高い値段で買うしかありません。また商品を販売する会社がA社とB社しかない場合、競争していればいいですが、2社間で「〇〇円にしよう」という協定を結ぶと、またしても消費者は不利益を被ります。
こういったことを防ぐために独占禁止法があります。つまり、独禁法の目的は競争を促して消費者を守ることなのです

実はスポーツリーグと独占禁止法は深い関係があります。

上に書いたように、同じ市場で競争する企業同士が協定を結んだり、新規参入の企業を排除したりするのは、ふつうは独占禁止法違反となります。しかし、スポーツのリーグを運営する上では、そういう行為はある程度必要なのです。例えばプロ野球なら12球団で固定されていますが、もしあらゆるチームのプロ野球参戦が可能なら、セ・リーグ1000チーム、パ・リーグ1000チームのようになって、リーグとして面白くなくなってしまいます。独占禁止法は(裁判官は)スポーツリーグのビジネスの特性を鑑みて、うまくバランスを取るようにある程度の独占を許容しているのです。

一つの例として、「プロ野球のドラフト制度は独占禁止法違反ではないか?」という論点があります。普通の学生の就活市場なら、就活生は自由に企業を選べます。

しかしプロ野球のドラフトで選ばれる選手は、指名された球団(競合した場合はくじ引きで勝った球団)としか交渉できません。もしこのドラフト制度が無ければ、例えば清宮選手のような有望選手には各球団がこぞって高待遇を提示することで獲得競争を行い、より高い年棒を得ることができるはずです。

一方でこれを行ってしまうと財力のある球団に毎年いい選手が入り、戦力差がつきすぎてリーグとして面白くなくなってしまうため、ドラフトとくじ引きでチーム間の戦力差の均衡を計っているというのがNPB側の主張です。チーム同士の選手獲得競争は少なくなってしまいますが、リーグが盛り上がることで、JリーグやBリーグとの競争が激しくなって消費者の利益になるとして独占禁止法でも認められています。

僕の意見として、このドラフト制度は独占禁止法違反の可能性があると思います。戦力均衡のためのドラフト制度は時代遅れです。巨人が一強だった時代と違い、選手の入団したい球団にはバラツキがあると思います。スポンサー企業の財力に差があっても、チームごとの特徴を活かしたリクルーティングが可能です。ちょうど一般の就活生が大企業を蹴って給料の低いベンチャーを選ぶように、「1年目から活躍の機会がある」「ジャイアントキリングを起こそう」という口説き方が考えられます。あるいは財力のない球団が『清宮選手を獲得するために1億円集めたい』というクラウドファンディングを行って成功すれば、ファンはより自分事化して熱心に応援するでしょうし、リターンをうまく設計することでファンとの接点を多く作れます。ドラフト制度によって競争を排除し、選手の年俸を下げているのは独占禁止法違反であってもおかしくないと思います。


スポーツと独占禁止法の関係性をなんとなくイメージしていただけたでしょうか?

次回は日本版NCAAで参考にされているアメリカの大学スポーツのアマチュアリズムに関して書きます。

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須原健太/ぽんた

ブロックチェーン領域のエンジニア・コンサルタント。慶應→大手外資コンサル→プログラミング独学(フリーター)→エンジニア。TOEIC980。

連載:体育会生は報酬を受け取るべき!?

日本版NCAAなど大学スポーツが産業化していく中で、体育会生は報酬を受け取っていいのか!?という内容を独占禁止法の観点から論じます
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