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WBC2023 ユニフォーム的ベストナイン a.k.a. 第5回WBCをユニフォーム視点で振り返る特集

第5回目にして、かつてないほどの盛り上がりを見せたWBC。

そんな大会の頂点に我らが侍ジャパンが立てたことは非常に誇らしいことであるが、それ以上に大会を通じて様々な面から「国際大会としての意義」を今まで以上に強く体感できた大会になった、ということがとても素晴らしかった。

大いに話題となったメキシコ代表・ギル監督の「Japan advances, but the world of baseball won tonight.」という言葉がそれを最もよく表しているのではないだろうか。

そういった面も踏まえつつ、2週間に渡って繰り広げられた激戦・熱戦の数々を改めて振り返っていこう。

もちろん、ユニフォーム視点で。

例によって、単に個人的に印象に残ったユニフォームをダラダラ語っていくだけの記事であり、ランキング企画ではないので紹介する順番には特に意味はないし、「ベストナイン」といっても「かっこいいユニフォーム9選」という訳ではないので、そのあたりはご了承頂ければと思う。

因みに日本代表に関してはこちらで詳しく語っているので、そちらをぜひ(=この記事では日本代表にはほぼ触れません)。

①パナマ

「紺+赤」を基調としたユニフォームが好きな者としては、まさに「こういうのでいいんだよ」と言いたくなるユニフォームである。

特にホームユニフォームは、「理想の侍ジャパンユニフォーム特集」でも触れたような、背番号赤+背ネーム紺というスタイルが採用されており、まさしく垂涎もの。

加えて、帽子がいわゆる「三色帽」と呼ばれるような、フロントパネルが白、側・後頭部が紺、ツバが赤というカラーリングになっているのも最高だ。

また、画像・映像を見る限りロゴは刺繍(圧着かも?)であしらわれているため、白地ユニに白字ロゴでも視認性に影響はなく、むしろ爽やかでスタイリッシュな印象に貢献している。

この記事は別にランキング企画とかではないが、あえて1位を決めるとすれば、このユニフォームを今大会No.1ユニとしたい

大会前からニューエラジャパンがWBC2023をフィーチャーしたキャップのシリーズを展開していたが、パナマをそのラインナップに入れなかったのは普通に重罪だと思う。

②イギリス

あまり良くない方向で話題になってしまったイギリス代表ユニ。

特に槍玉に挙がったのが、特徴に乏しいフォントでやけに小さくあしらわれた「GREAT BRITAIN」の胸ロゴだ。

確かに、流石にいくらなんでもシンプル過ぎるし、
ゴシック調やヴィクトリア調の飾り文字を使ったり紋章の感じをフィーチャーしたりして“ロイヤル感”を演出するのもありだったのではとか(オランダが王冠をモチーフにしているような)、
せっかくユニオンジャックというロゴに落とし込みがいのある国旗があるのにとか、
その他様々なカルチャーがある国なのにとか、

色々思うところがない訳ではないし、そもそもそれ以前にロゴ小さ過ぎるやろ、とツッコミどころのあるデザインなのは事実。

※ちなみに、引用したツイートでは「Arial Blackを使って〜」と言われているが、厳密にはこのロゴのフォントはArial Blackではない、ということは言っておかなくてはいけない。

左)Arial Blackで書いたGREAT BRITAIN
右)オリジナルのGREAT BRITAIN

ただ、個人的にモヤモヤしているのはイギリス代表ユニのデザインの詰めの甘さ自体よりも、「野球が自国でマイナースポーツすぎて、ユニフォームの作り方がわからなかった説出てて好き」などと言った物言いに対してだ。

確かにイギリスでは野球はマイナーもマイナーなスポーツだが、それでも(大昔ではあるが)プロリーグが存在していたこともあれば、初代世界チャンピオンに輝いたという歴史もある。

数ある説の内の一つとは言え「野球のルーツはイギリスにあり」という説もあるし、そういう大袈裟な話はともかくとして現在でも野球に興じる人々はいる。
いくら代表チームがいわゆる「寄せ集め」だとは言え、イギリス国内にも野球の歴史や文化は存在しているのだ。

イギリス国内に存在する様々な野球組織のロゴ。

マイナーだからといって歴史・文化がない訳じゃないのに、あまりにリスペクトに欠く言い草ではないだろうか

日本対チェコ戦を経て「決して野球人気が高いとは言えない国の野球文化へのリスペクト」というムーブメントが起こっていた真っ最中であったにも関わらず、(例え冗談半分とは言え)このような声が出てしまうのは非常に残念なことだと感じた。

なお、「胸ロゴ小さすぎ問題」に関しては、他にもカナダなどが同じような問題に陥っていたりしたことも踏まえると、決してイギリスだけの話ではないように思う。

今回のデザインに対して「急造だから〜」みたいな声もチラホラ見かけたが、過去大会や他大会を見渡してもこのロゴは一貫して使用されているもの。決して適当に作られたユニフォームなどではない。

先ほどの画像のように、ロゴが迫力のある大きさになっていて、ライオンロゴをあしらったり背番号・胸番号まで統一感のあるデザインになっていたりしていれば、もしかしたらもう少し印象も変わっていたのかもしれないと思った。

国の象徴・ライオンをモチーフとしたロゴ。
代表チーム公式SNSのアイコンなどに使用されている。
前回大会のユニフォーム。
これくらいのサイズ感であれば…

③プエルトリコ(+キューバ、ドミニカ)

歴史的背景からどうしても似たり寄ったりなイメージになりがちなラテンアメリカ諸国・諸地域であるが、それはナショナルチームのユニフォームにも影響を及ぼしている。

キューバ、ドミニカ、プエルトリコの3チームの場合は深刻だ。
いずれも「青・白・赤」のトリコロールを基調としたイメージカラーで構築されている上、前回大会まではマジェスティック社による一括契約の“弊害”ともいうべき共通のテンプレートが使用されていたことにより、いわば「地獄の三つ子コーデ」が完成してしまっていた。

各国がそれぞれでユニフォームを用意することとなった今大会、グラデーションや柄などが多用されることとなり、正直に言って個人的な好みからはかけ離れたデザインばかりとなった中南米勢のユニフォームだが、各チームが差別化を目指した試行錯誤の痕跡のようなものを色々感じてしまうのもまた事実。

好みではないからと言って到底ディスる気になれないのが現状だ。

特に、プエルトリコのホームユニフォームにあしらわれた「サン・フェリペ・デル・モロ城」の柄に関しては、元々ロゴなどには干渉しないように工夫されていることに加え、とあるサイトで「これは“帝国主義・植民地主義への対抗心を身に纏う”という意志の表明なのだ!」といったような解説がされているのを見てからは、むしろお気に入りになってしまったくらいである。

プエルトリコに関しては、キャッチャーの防具にも注目したい。
国旗をモチーフとしたカラーリング、デザインなのだが、結果的に完全にキャプテン・アメリカになっている。
個人的な話だが、キャプテン・アメリカはアメコミヒーローの中ではスパイダーマンに次いで好きなキャラなので、この感じに完全に心惹かれてしまった。

④イスラエル&イタリア

前回大会との比較という意味では、イスラエルとイタリアも印象深い。

この2チームのように、シンプルな青をチームカラーとしているチームはかつてのマジェスティックのテンプレートとの相性が抜群であり、どちらのユニフォームも前回大会モデルはまさに「至高」と呼ぶべき逸品であった。

しかし、今回テンプレートから外れて自由なデザインを志したことで、やや明暗が分かれることに。

イタリアがラケットラインや肩の切り返し、胸ロゴの豪華な縁取りなど、いわゆる「野球っぽさの引力」に取り込まれてしまった感が否めないのに対し、イスラエルの方は「ピンストライプ」「二重線ロゴ」というシンプルなデザインが目を引く。

どちらも国旗をモチーフとしたものだと推察できるもので、「既存のデザインテンプレートにそのチームならではの特別な意味を込める」という個人的に非常に好みな感じのデザインだ。

地味な変化だが、帽子マークの「ダビデの星」のデザインも、帽子マークとしてより洗練されたものになっている。

あくまで好みの問題だが、個人的には今回の方が好き。

ただ、それだけに肩とパンツのラインが残念。
これもおそらく国旗モチーフのデザインなのだろうが、個人的にはピンストユニは出来るだけ余計なことしない方が好みだし、国旗へのリスペクトは「ピンストライプ+二重線ロゴ」で十二分に表せているのではないか、と思う。

⑤メキシコ

日本との準決勝で世紀の熱戦を繰り広げたメキシコ代表。

メキシコのユニフォームと言えば、キャップメーカーとして名高いニューエラが製作を手掛けたことでも話題になったが、メーカーが代ろうとも赤+緑という補色のカラーリングを巧みに使いこなしたポップな印象のユニフォームの完成度は不変。

洗練されたロゴにオーソドックスなラケットラインなど、どこをどう切り取っても素晴らしいユニフォームだが、やはり目を引くのが新たに登場した水色+ピンクのオルタネートユニだ。

メインのホーム&ロードがかなりインパクトの強いユニフォームなだけに、このオルタユニの淡く優しい色合いがトータルデザインの中で逆にアクセントとして効いていて、洗練された印象を強化している。

今時珍しいラグランスタイルのカラーリングも、返って新鮮な感じだ。

しかし、ヘルメットは3種類あるユニフォーム全てで同じものを使用していたため、オルタネートユニを着用する際も緑のヘルメットを合わせることになり、非常にミスマッチになっていた。

普通ならこんなことをやっているチームがあったらボロカスに言ってしまいそうなものだが、このメキシコのユニに関してはある意味「抜け感」として機能しているように思えたのがとても不思議だ。

⑥韓国

長らく明るい青がイメージカラーであったが、基本的なデザインはそのままに、新たに紺を基調としたユニフォームに一新。
例えるなら、BEAMSがデザイン監修を務めていた2000年代のヤクルトのような雰囲気で、肩から袖、脇、パンツなど、あらゆる箇所に切り返しデザインが配されている。

国内リーグのKBOではかなりアメリカナイズドされたシンプルなデザインが主流となって久しいのに対し、代表ユニフォームではこのようなタイプのデザインが継承されているのが興味深い。

新しくなったデザインもさることながら、今回着目したのが、MLBから召集されたトミー・エドマンの背ネーム

韓国人名は英語表記にすると「Kim Ha-Seong(=キム・ハソン)」という形で表記され、これを背ネームに起こすと「H.S. KIM」となるのだが(「.」を省略される場合、姓名を逆にする場合もあり。なお、MLBでは姓のみで「KIM」とするのが主流)、エドマンにもこれを適用していたのが非常に粋に感じた。

本名:Thomas Hyunsu Edman→「T H EDMAN

一部報道によれば、チーム内におけるエドマンの扱いは決して「粋」とは言えないものだったという話もあったりなかったりするが…

⑦チェコ

チェコのユニフォーム最大の見所は、ずばりストッキングのラインだ。

方々で散々擦られまくっているチェコ代表関連のエピソードだが、ここの部分に着目しているのは私しかいないだろう、と得意げになっていたところ、この記事を目にして見事に鼻っ柱を折られてしまった。

何でもこのストッキング、元メジャーリーガーのエリック・ソガードが持ち込んだものだという。
ソガードと言えば、メガネをトレードマークに「ナード・パワー(Nerd Power)」という愛称で親しまれていたことでもお馴染みであるが、流石の“わかってる”感だ。

日本ではヌートバーが様々な影響をもたらしたが、そのチェコ版といったところ。

余談だが、大谷から2三振を奪ったオンジェイ・サトリアだけがスタンス社製の既製品を履いていたのがちょっと気になった。
1人だけもらえなかったのだろうか。

⑧オランダ

これまではナショナルカラーのオレンジを前面に押し出したデザインが各方面で好評を得ていたオランダだが、今回はシンプルなピンストライプのユニフォームとなり、オレンジが使われているのは帽子マーク及びヘルメットのツバのみに。

シンプルなブロック体のロゴも相まって、イメージとしては2022年から使用されているオリックスのサードユニフォームのような上品なイメージだ。
また、ロゴの上部と帽子マークに使用されている王冠のマークが特徴的であり、これがさらに気品ある雰囲気を醸している。

そして、単色のシンプルなホームユニに対し、ビジターユニはオレンジをふんだんにあしらったカラフルなものになっている、というところも個人的なフェティシズムをくすぐられるあたり。

気になるポイントとしては、細いピンストライプに細いラケットラインが重ねられていること。さほど悪目立ちする感じではないものの、無い方がより良いものになったのではという思いが拭きれない。
また、昇華プリントであることも(コスト面などで仕方ない部分もあるとは言え)、デザイン自体が気品溢れるものなだけに少し残念に感じた。

因みに、アームスリーブやスパイク、バッティンググラブ、ベルトにオレンジのものを使用する選手もおり、非常にアクセントとなってオシャレな感じなのだが、こうすることで「オレンジ×ピンストライプ」という、日本のプロ野球ファン目線で見るとあり得ない組み合わせが実現していた、という点も注目ポイントだ。

⑨アメリカ

やはりこのユニフォームを取り上げない訳にはいかない。

まさに「キング・オブ・ナショナルチームユニ」と言っても差し支えないほど、「代表チームのユニフォーム」に備わっていて欲しい要素が全て詰まっているのだ。

何より素晴らしいのが、星条旗をモチーフとした「USA」の胸ロゴに「US」の帽子マーク。

個人的に代表ユニフォームというものは、ロゴやマークはしっかり凝っておいて、あとは適当にラインとか入れてそれっぽくするくらいがちょうど良い、と思っているのだが、まさにそれを体現するユニフォームである(メシシコとかもそう)。

SNSなどを見る限り、アメリカンからの評判はあまり芳しくないようではあるが、デザインそのものへの不満というよりは「そろそろ変えない?」的な意見が大半。
つまり、完成度の高さ故に長年に渡って使用されすぎている、ということであるとも言え、個人的にはむしろ羨ましい。

とは言え、ビジターオルタを新たに加えた3パターンのユニフォームを用意するなどの試みも。

今でこそ「SAMURAI JAPAN」ブランドの確立によってデザインが統一されたものの、それ以前は様々なデザインが乱立していた日本代表。
それを尻目に、いつの時代も変わらない圧倒的な存在感を放つUSAロゴ。

今回、初めて決勝での日米決戦が実現した訳であるが、同じ「紺+赤ユニフォーム」なだけに、その完成度の差が改めて浮き彫りになったように感じてしまった。

その他

最後に、ベストナインからは惜しくも漏れてしまったユニフォーム、そしてガッツリ語るほどの熱量は正直そんなにないが気になるところもあるのでちょっと触れておきたいユニフォームをご紹介する。

オーストラリア

オーストラリアのユニフォームも胸ロゴが小さい。
元々あった南十字星のデザインとMLB式のデカ胸番号を無くした分、余計にロゴの小ささが際立っていて、もう少し全体的なバランス感とかに気を配ってもらえたら最高なのに、という感じ。

2021年から南十字星に代わるシンボルとして胸番号の位置にあしらわれている、「アボリジナル・アート」をモチーフとしたロゴマークはとても素晴らしいもので、帽子マークも相変わらず最高にイケてるだけに、何となく惜しいなという印象だ。
NPBで例えると中日のような雰囲気と言えば伝わりやすいだろうか。

キャップのみに関して言えば、
何だかんだこれの右に出るものはないだろうと思う。

コロンビア

イエロー+ブルーという私好みのカラーリングに、ステンシル風のロゴデザイン。地味なところだが、背ネームが全部小文字になっているのが面白い。

めちゃくちゃカッコいいか・イケてるかと言われれば微妙なところだが、もうちょっと話題になっても良かったのではと思う。
いや、話題になるのを待つのではなく、私が率先して話題にしていくべきだったのだろう。

ニカラグア

日本では、国内リーガーのデュケ・ハーバートがドミニカ戦の登板直後にデトロイト・タイガースと契約を結んだこと以外ほとんど話題に上ることはなかったニカラグアだが、ユニフォームを見てもなるほど話題にならないのも納得の脱力系デザインだ。

イギリスのようなツッコミどころがある訳でもなく、国旗が青と白だから青なんだろうな、くらいの感じ。
ここまでシンプルなら、いっそ脇の切り返しデザインもなしの超絶プレーンなユニフォームも見たかったような気もする。

正直、なぜここで取り上げてるのかもよくわからないくらいな感じだが、あえて言うなら「最も話題にならなかったユニフォームに少しでもスポットライトを」という気持ちだろうか。一体何様だよという話だが。

まとめ

マジェスティック社による大会単位での包括的な契約がなくなり、各国が独自にユニフォームを用意していたこともあり、ユニフォームへの注目度がいつになく高まっていた今回のWBC。

白熱した試合の数々はもちろんのこと、様々なユニフォームデザイン、メーカーなど、見所も多く、非常に楽しい2週間を過ごさせてもらった。

今大会に携わられた全ての方々に感謝の意を示して、この記事のまとめとさせていただこう。

最後の最後にアホみたいな一言を。
侍ジャパン、(ユニフォーム以外)サイコー!

以上、「WBC2023 ユニフォーム的ベストナイン a.k.a. 第5回WBCをユニフォーム視点で振り返る特集」でした。ありがとうございました。


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