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「IT-BCP」という言い方は間違い

事業継続マネジメント(BCM)に関する話のなかで、IT システムの災害対策などを指して、「IT-BCP」という言葉が使われることがあります。つまり「IT の BCP」という意味ですね。

ところが、この「IT-BCP」という言い方は正しくありませんので、お使いにならないことをお勧めします。これが正しくない理由は、基本的な用語の定義に照らし合わせれば明らかです。

以下、国際規格「ISO 22301」の 2019 年版、およびそれを和訳して作られた「JIS Q 22301」の 2020 年版を拠り所として説明します。本稿の中で「規格」とはこれらの 2 つの規格を指します。

まず、「IT-BCP」というのは「IT-Business Continuity Plan」の略ですから、「IT 事業継続計画」という意味になります。つまり「継続」の対象として「IT」と「事業」の 2 つが含まれています。IT に対する継続性のことを言いたいのであれば「事業」は邪魔であって、「IT-Continuity Plan」(IT 継続計画)と呼ぶ方が自然でしょう。

これだけでも「IT-BCP」という言い方が正しくないことの説明としては十分だと、個人的には思うのですが、中には「これは IT-BCP という言い方が《不自然》だと言っているのであって、《間違い》とは言い切れないのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんので、もうひとつ説明を加えます。

まず、「事業継続」という用語は規格で次のように定義されています。

事業継続
事業の中断・阻害を受けている間に、あらかじめ定められた範囲で、許容できる時間枠内に、製品及びサービスを提供し続ける組織の実現能力
(JIS Q 22301:2020 より引用)

そして、「製品及びサービス」については同規格の中で「組織によって、利害関係者に提供されるアウトプット又は結果」と定義されています。つまり組織内部の業務のために運用されている IT システムは、「製品及びサービス」には含まれないことになります(注 1)。

「製品及びサービス」に含まれない以上、事業継続の対象ではありませんので、「IT-BCP」という言い方はすべきでないのです(注 2)。

一方、規格では BCM において検討すべき資源(resources)について、次のように例示されています。つまり BCM においては、IT システムは資源のひとつとしてとらえるのが正しいということです。

・人
・情報及びデータ
・建物、職場、その他の施設などの物理的インフラストラクチャー、及び関連するユーティリティ
・設備及び消耗品
・情報通信技術(ICT)システム
・交通手段及び輸送手段
・資金
・パートナー及びサプライヤ

一方、IT の分野では昔から(注 3)「IT Disaster Recovery」(IT 災害復旧)、「Redundancy」(冗長性)などという用語が使われていました。また事業継続との関連では「IT continuity」(IT の継続性)という用語が使われることもあります。したがって、「IT-BCP」などという言い方はやめて、これらのいずれかを使われることをお勧めしたいと思います。

【注釈】
1) クラウドサービスなど、IT サービス業の企業が顧客に対して提供しているような IT システムは「製品及びサービス」に含まれます。
2) 本稿の説明は前述の規格に基づいていますので、筆者個人の主張ではなく、国際的に認められている標準的な考え方だとご理解いただければと思います。
3) BCM という概念や用語が生まれる前から、これらの用語は普及していました。
事業継続マネジメント(BCM)に関するガイドブックを出版させていただきました。特に中小企業の皆様が自力でに取り組まれることを想定して執筆させていただきましたので、お役立ていただければ幸いです。
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