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新卒で入った会社を2−3年で辞める前に考えるべきこと

厚生労働省は、令和2年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況を取りまとめましたので公表します。
就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%(前年度と比較して1.1ポイント上昇)、新規大学卒就職者が32.3%(同0.8ポイント上昇)となりました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00006.html

新卒の3年以内の離職率は大卒でも3割程度との話。3割もの人が早い段階でキャリアの再評価を行っているという点では良い傾向のように思う。「最近は高いんだなぁ」などと思ったが、過去10年で30%を下回ったことはない模様だ。気になってアメリカの同様の統計を調べてみた。新卒採用みたいな概念はアメリカにはなく、似通った数字は25歳~34歳の1つの会社の在籍期間の中央値で、2.8年だという。それほど日米の差はないとみてよいだろう。

日本で働いている時は、会社の若者から転職についての相談をよくうけた。
焦り、将来への期待、現状への不満などが混じり合った若者の悩み相談にのるのは、そんなに悪い気分ではなく、当時30代であった私は「自分もいよいよおっさんになったものだ」と歳を感じ入ったものである。

転職の相談をしにくる若者は大体危なっかしい。それは、転職候補会社が危なっかしいとかではなく。転職時に考慮すべき事項がきちんと検討、評価されていないという危なっかしさだった。キャリアは自分の選択の積み重ねなので、新卒入社3年目であっても、転職先を本人が決めたのなら、それについて周囲がどうこういう話でもない。ただ、転職前に考慮すべき事項を考慮してないという状況については、「もうちょっとこういうことも考えておきなさいよ」と助言するのは相談を受けるものの務めとして、よく共有していた4つの視点がある。3割の転職を試みる新卒の若者向けに共有したい。

片道切符か、往復切符か

「今勤めている会社と同じ業界、同規模の会社に再度戻ってくることできそうか?」という問いへの答がYesなら往復切符、Noなら片道切符。往復切符なら、今回の転職がうまくいかなかったとしてもリスクはそれほど高くないが、片道切符なら将来の選択肢が狭まることになる。既に手に職がついており、自らの専門性で食っていける実力が備わっていれば、あまり片道、往復にこだわる必要はないが、まだそれほどの専門性がない場合はその切符が片道か、往復かはちゃんと理解した上で判断した方がよい
善し悪しは別にして、伝統的な大企業から新興の中小企業への転職はしやすいが、その逆は難しい。手に職がなければなおさらだ。大企業がいいなんて言う気はさらさらないが、中小企業で学べず、大企業でこそ学べることもある。自分の切符が片道なら、本当に「いま」がそれを使って旅立つ時か否か、もう1-2年転職を遅らせることにより失うモノは何か、ということを考えた方がよい。
私は30代前半に従業員が数万人の会社から60人の会社に転職したが、人生の先輩方に相談した際に「お前、それは片道切符だぞ、そんなに急ぐ必要が何故ある?」とさんざん諭された(まぁ、それでも飛び出しちゃったし、選択として正しかったと思っているが・・・)。

「早すぎる最適化」になっていないか

「好きを貫け」、「喜んで週末働きたくなるような仕事を選べ」、「There is no reason not to follow your heart.」なんてことはよく言われいてる。そういう耳障りの良い言葉を聞き、
「今の自分の仕事は本当にやりたいことではないのではないか」とか、
「この業界は自分に向いていないのではないか」とか、
若者が色々思い悩むのもよくわかるし、それ自体は悪いことではない。入社2−3年もしてくると苦労も多くなり、手詰まり感を感じ始め、他の仕事、業界に目移りする時期でもある。
ただ、今の会社がつまらなく思え、外の機会に対する期待感が膨らみ、「自分はもっとやりたいことがある」という思いが大きくなった時、それが「早すぎる最適化」ではないか自問して欲しい
「やりたいことを追い求め、キャリアのゴールに一直線に進む」というのは聞こえはいいが、とりうるオプションを切り捨てた「早すぎる最適化」になってしまうリスクは頭に入れておいて欲しい。
数あるとりうる選択肢の中から自分の進むべき道について決定することと、自分が何者かよくわからない状況で、選択肢を絞って最適化を試みるのは、異なることだ。後者はキャリア選択における博打的要素が強く、将来の選択肢を単に狭めるリスクがあることは念頭におくべきだ。
ゴールにフォーカスして前に突き進むか、最適化を急がず選択肢を広げるべく踊り場に留まるか、というのはキャリア形成において大事な意思決定事項だ。今自分がどちら局面にいるのかを見極めた上で判断して欲しい。

ジョブホッパーになるリスク

一つの会社での在籍期間が短く、転職経験の多い人のことをジョブホッパーという。中途面接の際に履歴書を見て、2−3年で転職を繰り返し、勤めた会社の数が4社以上だと「あぁ、ジョブホッパーだな」と思う。ジョブホッパーというのは、中途面接ではかなり嫌われる。複数の会社で働いた幅広い経験が高く評価されることはあまりなく、「どこの会社でも高く評価されることはなかった人」とか、「しんどい局面でそれを打破する踏ん張りのきかない人」というような眼鏡で見られることが多く、ならなくて済むならそれに越したことはない。
新卒として入った会社を2−3年で辞めるということは、ジョブホッパーにリーチがかかると言っても過言ではない。次の会社が自分にとっていい会社であればよいが、2−3年して再び転職をするような事態になると、ジョブホッピングのスパイラルに入ることになる。「履歴書が汚れる」という表現があるが、履歴書はきれいにこしたことはない(特に手に職がつくまでは)。今回の転職がそういうリスクを犯しても決断すべき魅力あるものか、十分に評価した方が良い。

色々な人の意見を聞く

キャリア形成に答えや王道はない。上記であげたことだって、当てはまる人もいれば、当てはまらない人だっているので参考情報にすぎない。答えや王道のない意思決定事項をを限られた経験の中で正しくするために、色々な人の意見やキャリア観に多く触れることは死活的に重要だ。実際に多くの人の意見を聞けば、実に多様な考え方があることがわかる。同期や友人だけでなく、キャリアを長く積んでいる人に是非意見を求めて欲しい。
また、そうやって人に意見を求める過程で、自分の現在のステータスや考え方を披露することで、くしょっとした自分の考えが整理され、まとまっていく点も重要なことだ。反対意見や自分の見解が論破されることを恐れず、そして「最後に決めるのは自分」という強い決意を持って多くの人と会って欲しい。

まとめ

こうやって考慮事項をあれやこれや書くと、私が新卒ではいった会社を2−3年で辞めることを推奨していないように見えるかもしれないが、決してそんなことはないことを最後に強調したい。というのも、私の知人の中で2−3年で会社を辞め、明らかにその判断がその後のキャリア形成上、正解であった人は何人もいる。また、1年すら在籍する価値のない会社もこの世の中に残念ながら多く存在することも事実だ。早い段階から自分のキャリアを再評価し、具体的に行動を起こすということは、素晴らしいことだ。ここで強調したかったのは、キャリアについての大事な判断をする前に、決断に伴うリスクなどの必須の考慮事項を抑えた上で、熟慮断行しましょう、ということだ。本エントリーを読んだ人の中に、正に検討の渦中の人もいるかもしれない。そういった方々に少しでも参考になれば幸いである。

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