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いい男がいないというのはもうやめよう

年頃の女子が数人集まれば必ず始まる恋愛トーク。モテ子の恋愛進捗確認や彼氏との近況を聞いて、いざ自分に話が振られると、ネタがない。悲しいことにネタがない。一応、探してはいる。でも、ネタがない。「一応、婚活はしてるよ。でも・・・」それで定番のあの一言がでる。

「いい男が全然いないんだよねぇ~。はぁ~。」

本当にいい男はいないのか

友達は全員「わかるーーーー!!」って全力で共感してくれ、「でしょ?でしょ?」と女子会は大きく盛り上がりました。

マッチングアプリも婚活パーティもどうしていい男がいないんだろう。イケメンだと思えばヤリ目だし、リードや口説き方もまともにできない草食系ばっか。みんなやっぱり同じこと思っているんだとその女性は安心しました。

数年後

しかし、友達の多くはいつのまにかいい男をゲットして結婚していきました。そして数年後、友人たちの結婚式に参列しながらその女性は気づきました。

「え、あのA子が?!いつのまに。あんないい男どこで捕まえたんだろう」

「B子は面食いだと思ってたけど、妥協したなー。元彼のほうがイケメンだったじゃん。でも結婚向きって感じの旦那さん。」

「私も結婚したーい。」

「みんな幸せそう。いいな~。ほんと、どこでいい男見つけたんだろう。」

「みんな恵まれてるよね。私も彼氏がいたことあったけど、みんなクソだったし。まともな恋愛したことないから、幸せな結婚が想像できないのかも。」

「あー私ってほんと男運ないな。」

「あの人いいなと思ったら大体結婚してるし、かといって妥協して好きでもない男と結婚するのもね。あと焦ってる女って痛いし。別に一人でいっか。」

ろくにいい男がいないので、婚活しても成果がでるわけがないと早々に諦めることにしました。

十数年後

その女性はその後これといった出会いもなく一人でしたが、仕事はしていたので人並に生活していくことはできました。しかし、特に結婚を犠牲にしないといけない程の野心があるわけでも、一生をかけて極めたいと思っているわけでもありません。出世することもなければ、給料もそこまで上がらずだったので、少しでも貯蓄するため実家で暮らしていました。

キャリアを極めて国内外を飛び回ってる友達の旅行写真や結婚した友達のどこか友達の面影がある子供の写真を見ると、なんだか不快に感じるようになりました。幸せ自慢がうざいので友人関係も断捨離しました。そしてよく芸能人の結婚や不倫、離婚のニュースをチェックするようになりました。誰もが認める美男美女カップルで、幸せな結婚した人たちがその後どうなっていくのか気になるのです。不倫や離婚となれば「ほらなー!絶対長く続かないと思ってたよーー!」「あの美人女優の〇〇でも結局不倫されるんだし、一人のほうが正解だわ~!」と自分の想像通りだと幸せをかみしめるようになりました。そして将来を心配する親には「女は結婚するのが幸せとか昔の価値観押し付けないで!!!」と噛みつき、黙らせました。黙らせたので親が具体的に何を心配しているかはわかりませんでした。孫が見たいとかそういう親のエゴでしょう。

ある日結婚したB子と十数年ぶりに偶然町で会いました。すると、独身時代おしゃれで洗練された雰囲気のB子の面影はほとんどありませんでした。ピンヒールの靴しか履いてなかったB子が野暮ったい服にスニーカー姿で子供と手をつないで歩いていたのです。聞くと子供の教育費を貯めるために、今は一生懸命節約してるそうな。「子供のためによく女捨てられるね~。」と言ったら図星だったのかむっとした様子で、正直勝ったなと思いました。

こうして、女性は特に目的もなく、自由に、自由に生きていくのでした。

数十年後

とうとう親が亡くなってしまい、身近に頼れる人がいなくなりました。仕事と介護で忙殺されていた女性も少し余裕が出てきたのか、久しぶりに恋愛したいと思うようになりました。少しインターネットで調べてみると、最近は中高年の婚活というのも流行っていて、子育てがひと段落した所で離別した人や死別した人が第二の人生のパートナーを探すということがあるというのです。さすがにもう子供を産むことは無理でも、歳をとってからでも人生を共に歩むパートナーとして恋愛や結婚することは可能らしいと聞いて、女性は再度婚活に励むことにしました。試しに結婚相談所に行って話を聞いてみると、年収も高く、穏やかそうな男性もそこそこいる様子。女性は心の拠り所でもあった親が亡くなってとても寂しかったので、経済的にも精神的にも頼れる男性がほしかったのです。女性は意を決して貯めていた貯金の一部を結婚相談所につぎ込んで、男性を紹介してもらうことにしました。

「いい男性が全然いないじゃないですか。」

結婚相談所に入会して3か月たったころ、その女性はカウンセラーにクレームをつけていました。何人かお見合いを組んでもらったものの、女性が希望した男性からは「ご縁がありませんでした」と全てお断りをくらってしまったので、今日はカウンセラーからこの人はどうかと色々な男性のプロフィールや写真を見せられていたのです。でもめぼしい人がいない。そんな状況に女性はイライラしていたのです。

「高齢の親と同居希望の男ばっか。ただ無料の介護員がほしいだけなんじゃないの?!」と吐き捨て、少しでも多く返金してもらおうとまともにカウンセラーの話を聞くこともなく早々と退会しました。

数十年後のその後

女性にとって結婚相談所にかけたお金はいくらか返金はあったものの結構な出費でした。しばらくの間、美容代や被服費、食費等を削って節約し、婚活ももちろんほとんどお金がかからないアプリを使ったり、イベントに参加することにしました。そこでもその女性は独りでいいました。

「やっぱりいい男全然いないわぁ」

今度は、段々親しくなるにつれて金を貸してくれないかと相談されたり、デートにふさわしくないような安い店に連れていかれてランチ代をケチられたり、デート代を割り勘にされたりと、とにかく金回りがよくない男性に会うようになりました。女性は本当に自分の男運のなさがかわいそうだと思ってきました。あまりにも男のレベルが低すぎるので女性も多くは望まなくなりました。ただ、この寂しさだけ紛らわしてくれればいいと、そう思うようになりました。

人生の終わりに

そう思っていると定期的に連絡を取り合ってたまに会ってデートだけするようなそんな彼氏ができました。女性は彼がどんな身の上なのかも知りませんでしたが、優しい人でこの人なら結婚してもいいなと思えるような男性でした。彼といる時間と深く関わりすぎない関係がとても心地よかったのです。

しかし、そんな幸せの中で女性は不運にも交通事故に遭ってしまい、命は助かったものの、骨折の影響でしばらく入院・車いす生活になってしまいました。女性も高齢なので、完治すれば元通りになるのか、今後どうなるかとても不安でしたが、女性にとっては彼がいれば大丈夫でした。

女性は彼に状況を連絡しました。彼はきっと心配してとんで会いにくるだろうと。しばらく待っていると彼から返信がきました。

「そうでしたか。ご愁傷様です。僕にできることは何もありませんが、治療頑張ってください。」

その返信を最後に、何度電話をしても彼から連絡が来ることはありませんでした。女性は激怒しました。

「ひどい!逃げるなんて!なんて都合のいいやつなの!人でなし!」

しかし、彼は夫でも何でもなく、彼女を支えなければいけない義理も責任もありません。望むような関係性が保てないとなった時点で関係が切れるのは当然といえば当然でした。

人生の終わりに彼女は思うのでした。

「なんでいい男に出会えないんだろう。」




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