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マーダーボット・ダイアリー - 感想

概要 マーダーボット・ダイアリー 上・下 / マーサ・ウェルズ 東京創元社 / 2019/12/11発売 / 第7回日本翻訳大賞受賞/ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞受賞 媒体    文庫本 読書時間  16-20時間 好き度   ★★☆☆☆ おすすめ度 ★★★☆☆ あらすじ 遠い未来かもしれない世界。人類は宇宙を旅し、ワームホールを潜って数多の星を開発。小規模な政体を作り、開拓した星々に宇宙ステーションを作って暮らしている。 自らを「マーダーボット」と卑下す

    • おいしいごはんが食べられますように - 感想

      概要 おいしいごはんが食べられますように / 高瀬 隼子 講談社 / 2022/3/24発売 / 第167回芥川賞受賞作 媒体    Audible(1.2倍速)朗読 椎名ライカ 読書時間  3.5時間 好き度   ★☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆ あらすじ 主人公二谷は転属して数ヶ月。同じ部署の女性、芦川と付き合っている。芦川はできないことを無理してやらない人で、同僚の女性押尾は彼女の仕事の後始末をしている。押尾は仕事ができなくても職場に受け入れられる芦川の

      • コンビニ人間 - 感想

        概要 コンビニ人間 / 村田沙耶香 文藝春秋 / 2018/1/16発売 / 第155回芥川賞受賞作 媒体    Audible(1.3倍速)朗読 大久保佳代子 読書時間  3時間 好き度   ★★☆☆☆ おすすめ度 ★★☆☆☆ あらすじ コンビニバイトを18年続ける主人公古倉は、他人の感情が理解できない。コミュニティから弾き出されないように、社会一般の「普通」や「常識」を観察し真似をして生きてきた。 コンビニの仕事は細部までマニュアルがあり、その通りに動けばコン

        • 海辺のカフカ - 感想

          概要 海辺のカフカ 上・下 / 村上春樹 新潮社 / 2002/9/12発売 媒体    Audible(1.4倍速)朗読 木村佳乃 読書時間  23時間 好き度   ★☆☆☆☆ おすすめ度 ★★★☆☆ あらすじ 15歳の中学生の主人公、田村カフカが父の呪いを解くため家出をする成長冒険譚。本作には現界と冥界の概念がある。主人公は冥界に引き寄せられ、運命に導かれるまま冥界と結びつきのある人々に出会う。もう一人の主人公、老人のナカタは冥界と結びつく人の一人だ。彼の人生

        マーダーボット・ダイアリー - 感想

          二番風呂の権利 - 日記

          「ゆびえするのは嫌だよ。」 小説から顔を上げると、部屋の引き戸の口に榊原が立っていた。 無精髭を生やし、肩までかかる長い髪は波のようにうねっていくらか逆立って皮脂の汚れで光っている。眼鏡は指紋で曇ったまま拭かれていない。上下の揃わないスウェットの上から厚手の半纏を羽織っている。上半身と対照的にスウェットを捲って生の脛を出していた。靴下も履かず、毛やら伸びた爪やらを見せている。寒いなら靴下を履けばいいのに、とわたしは思った。いつもの小汚さだった。 榊原は片手に急須を持っていた

          二番風呂の権利 - 日記

          壁のエール - 日記

          起きたのは11時半を迎える頃だった。 昨夜はうっかり悲しみの中に入り込んでしまい、遅くまで眠れなかった。休日といえど、この時間に起きるのは遅すぎた。昨夜の悲しみを引きずったまま、わたしは下の階に降り、水を一杯飲んで洗面所へ向かった。 何時に起きても、どんな気分でも、わたしの朝起きた時の習慣は変わらず、水を一杯飲んで、トイレに行き、歯を磨いて冷たい水で顔を洗うことだった。 洗面所に行く途中、尿意を感じて先にトイレに行くことにした。随分長く寝室にいたので、膀胱のキャパシティを超

          壁のエール - 日記

          哀れなるものたち - 感想

          【言ってしまえば女性版なろうであり、偶像の理想郷は「ハッピーになる方法」の一つとして良いかもしれない。公序良俗としては少し下品かもしれないが……】 舞台は19世紀のヨーロッパ。生まれたての無垢さを持つ無知の美女が、女性としての生き方を知る冒険譚である。 大筋は人間讃歌。性の欲求、知の欲求を満たし、友人を作り、社会を知り、人間として生きるまでの成長過程が、主人公の視点から鮮やかに、奇妙に描かれる。 エマ・ストーンの演技を持って主人公ベラが生まれ、演出、音響、色彩が世界観を作

          哀れなるものたち - 感想