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誰でもできる続けられる、スケッチのゆるゆる練習法|紙島育

KUAイラストアドベントカレンダー、12月15日はイラストレーター・漫画家の紙島育先生から『誰でもできる続けられる、スケッチのゆるゆる練習法』です!


みなさんこんにちは。イラストレーター・漫画家の紙島育です。京都芸術大学通信教育部 イラストレーションコースではレイアウト・構図に関する添削を担当しています。

突然ですが、「スケッチ」という言葉を聞くとどんな様子を思い浮かべますか?外へ出かけ、街並みや植物、生き物などを描いたりするのが一般的なイメージではないでしょうか。

実は難しい「スケッチ」

絵画やイラストの教本には、「立体をよく見て描くことが大事」「目の前にあるものを観察し紙に落とし込むことで、絵を描く能力が磨かれる」などとということがよく書かれています。
立体を見て描くことで、目や手が養われるからです。
そういった練習の一環として、スケッチに挑戦したことがある方もいらっしゃるかと思います。

ただ実際にやってみると、意外にも難しいことがわかります。

・見る位置が少しずれると、対象の見え方が変わってしまう。
・屋外だと、光や風の影響がある。

三次元のものを二次元の絵に落とし込むというのは、実はかなり難しい行為なのです。また、次のようなハードルもあります。

・天候に左右されてしまう。
・どうしても人目が気になってしまう。
・そもそも「スケッチのための時間」が取りづらい。

「周りに人がいると、なかなか落ち着いて描けない……」という方も結構いるのではないでしょうか?(私もこのタイプです。外で素敵なスケッチを描ける人に、ものすごく憧れを抱いています……)
また、忙しい中外へスケッチをしに行くこと自体が難しいという方も多いのではないでしょうか。外出自体を自粛せざるをえないというシチュエーションも、このコロナ禍の中では度々ありました。

このように「スケッチ」と気軽には言うものの、意外とたくさんのハードルがあることがわかります。

過去に「スケッチ」に挑戦したものの続けられなくてやめてしまった……という人もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、そんなハードルを下げるスケッチ方法を紹介させて頂きます。それが「自分で写真を撮影して、その写真を見ながらスケッチをする」というやり方です。

私の「スケッチのやり方」

私が実際に行ってるスケッチの流れを、先に紹介します。やり方といっても、特殊な道具などを用いるわけではありません。一般的なスケッチと違うのは、実物を見ながらではなく「撮影してきた写真を見ながらスケッチをする」という点です。

写真ですから、一度撮影してしまえば見え方は一定です。光の当たり方や色がスケッチの途中で変わってしまうこともありません。屋外で描く必要はありません。気になる部分があれば拡大してチェックしたり、その場で図鑑と照らし合わせたりします。

私は、描く題材として野草を多く選びます。「野草が好きだから」ということもありますが、身近でどこにでもありイラストを描く際にもモチーフとして取り入れやすいというのが理由です。

具体的な流れとしては、以下の通りです。

1. (スケッチ対象になる草花の)写真を撮影する。
2. 撮ってきた写真を、スマホ or PCに表示する。
3. 画面の写真を見ながら、スケッチブックに描き写す。
4. 水彩で色を塗る。
5. (余裕があれば)その草花について、図鑑などで詳しく調べる。

一般的に「スケッチ」と呼ばれるものよりは、「模写」に近いかもしれません。しかし、正確に描き写すことが目的ではなく、スケッチの対象にどんな特徴があるのか、手を動かしながら知っていく工程だと思ってやっています。

葉っぱはどんな形をしている?
花びらの色や枚数は?
どんな実が、どこに生っている?
以前描いた草花と、何か似たところは?

こんなことを確かめたり考えたりしながら、見ているだけではわからなかった部分の気付きを得ていきます。

撮影については、私の場合は一眼レフを使うこともありますし、手軽なスマホを使う場合もあります。強いこだわりはなく、ある程度きれいに撮影ができれば問題ありません。

また基本的には着色まで行うものの、下絵や線を描くまでで力尽きて終わってしまう……なんてこともよくあります。完璧に仕上げることが目的ではないので、そんなページがあってもOKと割り切るようにしています。

・うまく、正確に描けなくてもいい。
・日をまたいで描いてもいい。
・「1日1枚!」などのノルマを決めない。
・途中(線画だけ、下描きだけなど)で終わってしまう絵があってもいい。
・SNSにアップしたり、誰かに見せなくてもいい。

こんな風に、とにかく気楽に無理なく続けることを大切にしています。ちなみに、使用する画材も手軽さを重視して選んでいます。パレットや水を用意する手間をなくすために、固形水彩とウォーターブラシ(軸の中に水を入れておける、筆ペンのようなブラシ)を主に使っています。

なにを描けばいい?

写真を見て描くわけですから、撮影できるものならどんなものでもある程度は題材にできます。好きなものや興味のあるものがあるなら、素直にそれを描くのがオススメです。

植物、食べ物、文房具、ペット、野生動物、鳥、昆虫、アクセサリー、工業製品……などなど。

とくに動き回る動物などは、実物を見て描くのはなかなか難しいものです。写真なら、その難易度も下がりますから、チャレンジしてみるのもよいかもしれません。もちろんモノだけではなく、風景にも応用可能です。

写真を見て描くなんて、アリ?

実物ではなく写真を見て写す……というやり方を聞くと、「そんなのスケッチと言っていいの?」と思った方もいるかもしれません。実際に私も「これって、正確にはスケッチとは言わないだろうなぁ」と描きながら考えるくらいです。

冒頭にも書きましたが、実際に見て描くことが大切!というのは本当です。実物を見て紙に写すのはとても有益な訓練になりますし、写真では多くの情報が削ぎ落とされてしまうのも事実だからです。

ただ、「きちんとやらないと」と考えれば考えるほどハードルは高くなってしまいます。時間が取れなかったり、難しかったり、画材の用意が億劫だったり……。

「スケッチというからには、外に出て実物を見て描かないといけない」
「難しいことから逃げたり、簡単そうなやり方に流れてはいけない」

そんなふうにガチガチに考えて嫌になってしまう……というくらいなら簡単で手軽なやり方でやってしまおう、という考えでやっています。

写真を撮ることも絵の勉強

また「写真を見て描く」と聞くと、こんな疑問を持つ方もいるかもしれません。

「それって、わざわざ自分で写真を撮らないとダメ?」
「たとえば、ネット上のフリー写真素材ではいけないの?」

たしかに、最近では著作権フリーの写真素材もたくさんありますよね。私自身、イラスト制作の資料としてよく閲覧しています。

ただ、「自分で撮影する」ことには、著作権的な問題以外にも次のようなメリットがあります。

  1. どんな風に撮るか(画面への収め方、アスペクト比の選び方など)を工夫すること自体が、構図の勉強になる。

  2. 自分の足で歩き自分の目で見たものは、検索で得た画像よりも「馴染み」が出てアイデアのストックになりやすい。

  3. 知っているものは、ある程度自信を持って描くことができる。

  4. 資料が蓄積されるので、のちのち絵に描く際に便利(自分の場合は、特に良いな、使えそうだなと思った写真は写真紙にプリントしてアルバムにまとめている)。

  5. 拡大して観察できる。ネット上の写真は画像が粗いことも。最近はスマホでも性能が良いので、目で見た時にはわからなかったような細かい部分も確認可能。

このように、「写真を撮る」だけでも構図のことを意識したり資料に使えるかどうかを考えたりと、なかなかに頭を使います。

絵の勉強というと、どうしても実際に手を動かすことだけを想像しがちです。しかしそれ以外の時間も、絵の勉強や準備につなげられると考えることもできます。

大事なのは、
「これ、描いてみたいな」
「いい資料になりそうだな」
という風に、日常の中に「お絵描きのためのアンテナ」が張られることです。普段気にしなかったものが通学路や通勤路で目に留まり始めたら、そんな“アンテナ”が育っているとても良い兆しですね。

アナログで描く?デジタルで描く?

一昔前と比べてタブレットも安価になり、スマホでも絵を描ける時代になりました。スケッチにおいても、気軽さ・手軽さという点でデジタル機器には強みがあります。無料〜安価なソフトも豊富ですし、自宅でも外出先でも描く場所を選びません。タブレットであれば、同じ画面に資料を表示しながら描くこともできますね。

画材について言えば、自分が慣れていたり好みの道具であれば、アナログでもデジタルでも問題ないと思います。ただ、デジタル機材を使い慣れていない人にとっては、機能が多すぎたり、あるいは複雑で使いこなせず挫折……というおそれもあります。その点では、アナログ画材はシンプルですね。紙なので目が疲れにくいのも、地味によい点だと思います。

個人的には、アナログでのスケッチを推したい理由がいくつかあります。ぜひ、最後にこれをお伝えさせてください。

一つ目は、描いたものが物理的に溜まっていくというのは、想像以上に達成感を得られるものだということです。子どもの頃自由帳やお絵かき帳が少しずつ埋まっていった、あの気持ちを思い出してもらえるでしょうか。あまり大きなサイズではなく少し小さめのスケッチブックを使うと、ページが蓄積されていく感覚をより味わえます。騙されたと思ってやってみてほしい!というくらい、楽しいものなのです。

二つ目に、スケッチブックは「自分の絵だけと向き合えるアイテム」になる、という点です。描いたイラストをアップしたり絵を通して交流をしたりするために、SNSを利用している方も多いでしょう。たくさんのイラストをほとんど無制限に閲覧して楽しむことができるのは、SNSの大きな魅力です。それに、自分の絵にいいねや感想がもらえるととても嬉しくなったりしますね。ただ、流れてくる情報のあまりの多さと速さに疲れてしまうときもあるかもしれません。どうしても自分の描いた絵と誰かの絵を比べてしまうこともあるのではないでしょうか。

一方「自分の描いた絵」だけが連なっているスケッチブックは、自分を誰かと比較することから離れて自分が何を描いてきたのか、どんなことに興味を持ってきたのか、ゆっくりと振り返られるアイテムになります。そんな一冊が手元にあることは、お絵描きを続けていく中で“支え”になるのではないかと思うのです。

まとめ

ちょっと変わったやり方の「スケッチ」を紹介させて頂きました。色々なことを書きましたが、とにかく「ゆるくやりましょう」ということがお伝えしたかったポイントです。写真を見て描いてもいいし、家の中で描いてもいい。「それならなんだか気軽だな、やってみたいな」と思って頂けたなら、ぜひ試してみてください。

プロフィール
紙島育
イラストレーター・漫画家
京都芸術大学通信教育課程イラストレーションコース 講師
ホームページ:https://www.yonagajima.com/
Twitter:https://twitter.com/Paperjima


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