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【MHW:I】マルチプレイの上級思考法

「俺がいままで野良で経験してきた狩りって『マルチプレイ』じゃなくて『4人同時にソロしてるだけ』だったのかもしれないな…」

私のサークルに遊びに来て初めてのクエストを終え、狩場から集会所に帰還した友人Mはふとこう呟いた。


私と友人Mとは中学時代からの付き合いがあるリアルの親友同士で、彼もまたモンハンのシリーズ累積プレイ時間が軽く数千時間を超えるような、世間的に見ればヘビーユーザー側に分類される側の人間である。PSPのタイトルの頃から、お互いに情報を交換・共有しながら切磋琢磨して腕を磨いてきたものだ。今でもプレイスキルはほぼ互角。そんななか、私と彼とでプレイスタイルが決定的に違う部分がひとつだけある。それは「パーティープレイに比重を置いているか・ソロプレイに比重を置いているか」の狩猟環境の違いだ。

私は、モンハン専用のTwitterアカウントを作成・運用しているのもそうであるように、「モンハンを遊ぶためのコミュニティ」にいくつも属していて、狩猟時間の半分かそれ以上は仲間とのPTプレイが占める。一方の彼はプレイ時間のほとんどがソロプレイで、モンスターとの一対一の戦いを突き詰めてゆくタイプ。たまにPTプレイを遊ぶとしても、サクッと集まってサクッと解散できる野良が殆どだという。先日、そんな彼を私の主催するサークルに招待して一緒に遊ぶ機会があった。


その日も、私とサークルメンバーはいつも通りの狩りを展開していたのだが、ふだんそういった経験のない彼にとっては新たな知見がいくつもあったようで、私はそれを聞いて「PTプレイでのみ必要とされる技術・PTプレイでしか培うことが出来ない技術」が確かにそこに存在することを改めて認識させられた。特に今作アイスボーンでは円滑な狩猟進行においてクラッチまわりの連携が極めて重要な役割を担っており、それは個人の技量とは全く関係なしに、気心の知れた仲間同士で意識的に遊んでいなければなかなか気付くのが難しいことでもある。

今回の記事では、PTプレイにおける連携の考え方を言語化していくとともに、「個人の火力よりもメンバー全員の平均火力を高める意識付け」について取り上げていく。


傷付け部位の管理と共有

ソロプレイでは『自分が今まさに傷付けしたばかりの部位にたった10秒後に間違えて再び傷を付けてしまう』なんて無駄は基本的に起こり得ない。プレイヤーは自分ひとりしかいないので、どのタイミングでどこに傷を付けたかは必ず把握できているからだ。しかしPTプレイでは、往々にして傷付けの過剰な上書きが発生する。すでに誰かが傷を付けている部位であると知らずに、傷の有効時間がたっぷりと残っている状態で傷を付けなおしてしまう事案だ。

部位の傷は、ソロプレイ時と同様、理想的には90秒を超えないよう、しかし出来るだけ90秒に近い時間が経過した頃に延長し直したい。

そのため、PTプレイでは、傷が付いている全ての部位について「それぞれあとどのくらいの時間、傷状態が維持されるのか」を体感的にでも把握しておく必要があるのだが、4人がバラバラに傷付けを行っているがゆえに脳内でそれを管理するのはなかなか難しい。傷付け時には自動定型テロップが表示されるとはいえ、自分自身の狩りで精一杯だと他人がいつどのタイミングでどの部位に傷を付けたかなんて画面では追いきれない。


そこで私たちのコミュニティでは、傷付けをした際には、本人が傷付けした部位も併せてVC(ボイスチャット)で申告するという方法を採っている。「右腕に傷付けました!」というふうに。これは『いま右腕に傷を付けたので、ここから90秒くらいのあいだは無理してまで右腕に傷は付けなくても大丈夫です』という意味での情報共有である。(したがって、傷付けに対するメンバーの反応も「ナイス!」ではなく「了解」であることが多い)

傷付けを発言しておけば、自分ひとりが全部位の傷時間残量を記憶しきれていなくても、メンバーの誰かは必ず覚えていてくれる。クラッチ怯みやダウンなどで傷付けのチャンスが生まれたときも、「右腕要る?」「さっき付けたばかりだから大丈夫!」というようにスムーズに進むし、さらに視野が広い人は「そろそろ頭の傷が外れそう」などと教えてくれるので、次にチャンスが出来たらその部位に優先的にクラッチすべきだということも分かる。

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傷付け部位の相互補完

ソロプレイでは、自分が攻撃したい部位にのみ傷を付けていればそれでよかった。PTプレイではこれがやや複雑だ。使っている武器種や戦い方の違いによって、人それぞれ傷があって欲しいと思う部位は異なるし、場合によっては傷がそもそも不要な戦略(徹甲榴弾主体のボウガンや砲撃主体のガンランスなど)で武器を運用している人もいる。

意思疎通の取れない野良のマルチでは、4人それぞれが独立して「傷を付ける部位・傷の要る要らない」を自己完結させている光景をよく目にする。自分が攻撃したい部位に傷が付いていればそのままフリーライドし、付いていなかったら仕方なく自分で付けるというやり方だ。PTプレイではたしかに傷付けを「分担できる」というメリットはあるが、この裏で忘れられがちなのが「それぞれのプレイヤーにとって必要な傷付け部位を一度集約して再配分する」という考え方だ。

これは言い換えれば「自分にとっては必要ないが、他人が傷を必要としている部位に傷を付ける」行為のことを指している。初心者にはあまりピンとこないかもしれないし、あるいは(みんなが気持ちよくなるための善意って大事だよね)と解釈されるかもしれない。それはそれで間違ってはいないのだが、実際にはもう少し別の次元の話で、上級プレイヤーは「自分自身の傷付けコストや傷付けリスクを他人のそれと比較し、パーティー総合火力が最大まで高まるような判断と選択」を常に行い続けていて、そのオプションのなかのひとつに「他人が必要としている部位への傷付け」が含まれているという意味である。


傷付けコストや傷付けリスクは状況によって推移する。メンバーの使用武器種・武器の運用方法・使用装衣の種類と着用の有無・各個人のプレイスキル・モンスターの行動等。他にも例えば、”2回傷付け組の武器種だが既に1回だけクラッチ済みである状態”に限定すれば短期的には1回傷付け組の武器と傷付けコストは変わらないだとか、それらは時々刻々と変動してゆく。

こういった多くの要因を自分ひとりで4人ぶん管理するのはとても難しいうえ(かなり高度なゲーム的周辺視野と知識が要求される)、特に単武器種使いであれば他武器種における傷部位の恩恵順位など分からない点も多いはずだ。そこで私のサークルでは、傷が欲しい部位は割り切って完全申告制にしている。右腕に傷が欲しい時には遠慮なく「右腕に傷が欲しい」と宣言する。

その状況その瞬間において、コストやリスクのより低いメンバーが傷付けを担当すれば、それだけでPT全体の火力損失を最小限に抑えられるし、メンバーの行動を下手に読み合うよりもずっとずっと合理的でよい。(もちろんただ胡坐を掻いてずっと指図しているだけではダメで、クエストを通じて全員が傷付けを相互補完していること、なおかつメンバー同士の信頼関係が十分に築けていることが前提である)

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クラッチ怯みの限界延長

モンスターにある一定ダメージが蓄積された状態で特定の部位が怯み条件を満たすと、モンスターが涎を垂らしながら大きな隙をみせて怯むことがある。一般的に「クラッチ怯み」と呼称されている特殊な怯みだ。ゲーム内のドスジャグラスのチュートリアルクエストでも説明されているように、このクラッチ怯みは『クラッチで張り付いて傷をつけるチャンス』として設けられている。この怯みが発生したときは、傷を付けたい部位があればクラッチで張り付いて傷を付け、そうでない場合は硬直時間の長さを利用して武器で殴るのが基本的には正解の動きであると言える。

しかしこのクラッチ怯み、PTプレイではもう一つ重要な攻略要素がある。この怯み中にクラッチで張り付きを行うと、張り付いたタイミングから硬直時間がさらに一定時間(デフォルトの硬直時間と同じ長さ)だけ延長される仕様になっているのだ。下図に示すようにクラッチ怯みの受付時間ギリギリのタイミングで張り付けば、硬直時間は最大で2倍に、時間にしておよそ10秒近くのボーナスタイムが出来上がる。この硬直時間は落とし穴による拘束とほぼ同等の長さで、全員で大ダメージを瞬間的に叩き込める貴重なチャンスだ。

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したがって、PTプレイでは、傷付けの必要性に関わらずメンバーのうちの最低1人はクラッチ怯み中に張り付きを行って、硬直時間を延長させるのがベストである。張り付いた時点で硬直時間の延長は確定されるので、傷付けが必要ない場合には張り付いたあとにすぐさま降りて攻撃に転じるのもよいだろう。クラッチをした本人の火力こそ一時的に落ちてしまうものの、残りのメンバー全員が2倍の時間だけ殴り続けられるようになることを考えると、PT全体として与える総ダメージは大きく伸びる。


張り付くタイミングは出来るだけ受付時間の終盤ギリギリまで粘ったほうがよい。そして張り付く人数も出来るだけ少人数で済ませるべきだ(そもそも複数人で張り付いても延長面でのメリットは全くない)。このとき、誰が張り付くべきか、誰が張り付きを担当すればPTの火力損失を最小限に抑えられるかを、毎回状況を見て判断する。

例えば今まさに真溜めを当てようとしている直前の大剣がタックルで真溜めをキャンセルしてまでクラッチに回るよりは、特殊弾マガジンを切らしてしまっている状態のストームスリンガーがクラッチにまわるほうが合理的だ。


このとき、誰がクラッチするかを決める時間はたったの5秒間しかない。状況を読み合って自分がクラッチすべきなのかを迷い、全員が攻撃の手を緩めてしまったり、逆に全員が張り付きに回るのも勿体ない。ここでもVCが活躍する。クラッチ怯みが発生した瞬間に各々が「クラッチに行けるかどうかを短く簡潔に報告し合う」のだ。具体的には「行く」「行ける」「無理」のような段階的なセリフを私は実際に使っている。

クラッチ怯みを目視した後に、全員がその瞬間におけるクラッチ実現性を申告すれば、最初の1秒だけで誰が適任なのかすぐに共有でき、その人以外は硬直時間をしっかりと攻撃に充てることができる。クラッチを担当する本人は出来るだけ5秒限界まで粘ってから張り付きを行う。こうすればクラッチ怯みを最大限活用することができる。

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「俺がいままで野良で経験してきた狩りって『マルチプレイ』じゃなくて『4人同時にソロしてるだけ』だったのかもしれないな…」

友人Mはこう言って、なにか新しいオモチャを手にしたかのようなワクワク感溢れる表情で、さらなる狩猟に備えて装備ボックスを覗き込んでいる。

またひとり、マルチプレイの沼に引きずり込んでしまったかもしれない。狩場の目まぐるしく変動する形勢を、刹那の判断力とアドリブ力でねじ伏せてゆく快感がそこにはある。仲間との連携技術でこのゲームはどこまでも加速する。私はサークルメンバーたちとくすっと笑い合いながら互いに目配せを交わし、彼にこう返した。


「アイスボーンへようこそ」


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