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02:予約の打率 ー 撮影スタジオ運営メモ ー

レンタルいたばし管理人です。

今回は、「予約が確定される可能性」のお話しです。


1.予約確定可能性

予約確定可能性って書くとちょっと量子力学っぽさを感じてしまいますが、難しい話ではありません。そもそもそんな言葉ありません。いま考えました。要するに、映像制作会社からスタジオに問い合わせがあったら、そこからのなんだかんだを経て実際に予約されるのはそのうちの何割くらいか、っていうお話しです。結論からいいますと、私が運営しているハウススタジオでは、10件問い合わせがあったとしたら、そのうち予約まで行きつくのは1~2件。統計をとっているわけではないのであくまで感覚値です。

前回とちょっと重複しますが、予約にまで行きつくのは簡単ではありません。撮影場所の候補は、以下のように絞られていくのです。

最初の問い合わせがあったら、そのうち7~8割がロケハンに来る

ロケハンに来たら、そのうち5~6割がメーンロケハンに来る

メーンロケハンに来たら、そのうち3~4割が仮予約する

仮予約のうち、6~7割が実際に予約し撮影する

といった感じです。つまり、問い合わせのうち8~9割は予約につながらない。今回のタイトルでいう「予約の打率」は1~2割ってところです。この打率、スタジオを運営している知り合い数人に聞いてみましたが、どこも似たり寄ったり。野球でもそうですが、3割を超えることはほとんどないようです。


2.実働時間に合わせた料金に

場合によっては、撮影時間と同じくらいの時間をロケハンや下見に使われることがあります。それでも実際に予約し、撮影に使ってもらえればいうことはありません。なかには何時間もロケハンや下見に費やしたあげく、撮影に使われないこともあるのです。

私のところは1時間単位の撮影料金ですが、撮影までの道のりまで含めた実働時間を考えればその単価は大幅に下がります。よく、「数時間貸し出すだけでウン十万円ももらえるなんて効率いいじゃないか」と言われることがあります。が、私はいいたい。

水の上を優雅に泳ぐ白鳥も、水面下では必死にもがいてるんだ!

少し違ったかもしれませんが。確かに撮影に使われるのは数時間、長くて十数時間です。しかしそれだけでウン十万円ももらえると思ったら大間違い。そこに至るまでには、何件も「今回は別の場所で撮影することになりまして」という電話を受けているのです。実際に撮影に使われた時間ぶんだけを考慮していたのでは、はっきりいって割に合いません。

確かに金額だけ見れば、スタジオの料金って高くみられるかもしれません。しかし問い合わせやロケハン、下見にかかる実働時間や拘束時間を考慮すれば、私は妥当な金額だと考えています。ですから料金を設定する際は、予約に至るまでのプロセスを考え、その間の対応がタダ働きにならないような金額にしておくべきでしょう。


3.打率を上げる

前回書いたとおり、予約までのプロセスは非常に手間がかかります。問い合わせからロケハン、下見とすべてマンパワーでこなさねばならず、このプロセスの省力化はできそうにありません。

であれば、どうにかして打率を上げられないものか。とは誰しもが考えるところ。かくいう私も無い知恵を振り絞りました。ホームページの写真を変えてみようか、キャッチコピーをもうちょっと考えてみようか。間取り図があれば便利なんじゃないか? 問い合わせの多い項目は利用規約にまとめて…。

結果として、打率にはまったく影響ありませんでした。もちろん様々な施策が奏功して打率が上がった例もたくさんあるとは思います。しかし私のところは古民家そのままのハウススタジオ。ここで撮影したい方は古民家で撮影したいのであって、設備が整ったスタジオで撮影したいわけではないのです。前回もお話ししましたが、撮影に使われるかどうかの唯一の判断基準は「イメージに合うか否か」。環境を整えるのは決して悪いことではありませんが、どうやら私のところでは決定打にはなり得ないようです。

であれば、打席に立つ機会を増やすしかありません。ここでいう打席とは、問い合わせの数。まずはできる限り多くの映像関係者の目に留まり、知ってもらう。そして、古民家で撮影したいときの候補として名前が挙がるようにするのが正解な気がします。

ところが。目に留まりすぎることによる弊害もあるようです。ドラマや映画の撮影場所として「よく使われている」ということは、視聴者に覚えられてしまう危険性が上がるということでもあります。「あ、またこの場所だ」、「ほかのドラマでも見たな」、「こないだは〇〇のうちっていう設定だったのにな」。そんなふうに見られては、ドラマや映画のリアリティは散々でしょう。イメージが固定された場所を使いたいという人は多くありません。

なにごとも、ほどほどがいいようです。




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