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東京のつらい場所 Part6 東京スカイツリー

もりたが恋愛絡み・男絡みで手痛い思いをした場所を実際に巡りながら、つらい思い出を振り返っていく企画「東京のつらい場所」。今回訪れた東京スカイツリーにも“飯田橋の彼”との因縁があり、もりたは長らくスカイツリー登頂を避け続けていました。ところが、とあるきっかけで展望台に登ることになったらしく……。
(2018年5月19日収録)

「10年後に登ろうね」

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もりた(以下M):いや~、来ちゃいましたね、スカイツリー編ですよ。

Ryota(以下R):来ちゃったね。

M:今朝、スカイツリーに登ることを考えたらちょっと体調悪くなっちゃった。本当に、スカイツリーは因縁の場所なんですよね~。

R:飯田橋の彼と「スカイツリーが完成したら行こうね」って約束してたんでしょ?

M:彼と付き合ってた時は、まだスカイツリーが建設されている途中だったんだよね。元々高いところに登るのが好きな我々でしたから、もちろん完成したら登ろうって話になるわけですよ。

R:なるほど。

M:で、スカイツリーが完成して、いよいよ登りに行くことになったんだけど、その頃って、彼がサークルばっかり優先する件で揉めてた時期なんですよね。有楽町~東京駅編の時に、彼が女の子を家に泊めたって話したでしょ?

R:彼が酔っぱらった女の子を仕方なく家に泊めて、その件でちょっと揉めたんだよね。

M:それそれ。その次の週にスカイツリー行く約束してたんだよ。平日だったんだけど私はバイトが無くて、彼も予定を空けてくれてたから、学校が終わった後に押上駅で集合することになってたの。なのに、私が約束の10分前くらいに駅に着いた瞬間、彼から「ごめん、サークルが長引いてて、2時間くらい遅れる」って連絡があって。

R:出た! お決まりのパターンだ。

M:そこから押上のベンチで2時間ぼーっと待ってたのね。

R:それはちゃんと2時間以内で来た?

M:2時間で来たよ。一応走ってきた(笑)。サークルのことで揉めたばっかりだから、今回はちゃんと文句を言おうと思ったんだよ。でも、その前の年のクリスマスにプレゼントした手編みのマフラーを首に巻いて「待ったよね、ごめんね!」って駆け寄ってきた彼を見て、許しちゃいました。

R:「可愛いヤツめ」ってなったんだ。

M:「まぁ、私、愛されてるからいいかな」って。私、チョロかったな(笑)。

R:それはチョロいなぁ(笑)。ちょっと待って、それってディズニーランドに行く待ち合わせで3時間遅刻される前でしょ?

M:そう、スカイツリーが11月で、ディズニーランドが12月。

R:時系列的には「女の子を家に上げた」→「スカイツリーに2時間遅刻」→「ディズニーランドに3時間遅刻」なわけだ。

M:徐々に遅刻する時間が伸びてる。

R:なるほど、反省の色がないね(笑)。

M:で、2時間遅れでやっとスカイツリーに登れると思ったんだけど、完成してまだ半年も経ってない頃だったから、めちゃくちゃ混んでて。チケットカウンターに行ったら「2時間後くらい後じゃないと入れません」って言われたのね、その時は、私もまだ実家暮らしで門限があったから、そんなに待ってられないということで、結局登るのは断念。

R:うわ、結果的に、遅刻した彼氏を2時間待っただけかよ…。

M:ちょっとソラマチをぶらっと回ったけどね~。外からライトアップされているスカイツリーを見上げて、彼が買ってくれたホットチョコレートを飲みながら「きれいだね」って言ったりして。「10年後ならきっと空いてるから、またその頃に登りに来ようね」って彼が言ったんですよ。

R:10年後まで見据えた関係だと、暗に言ってくれたわけだ。えーっと、「10年後に登りに来ようね」って言ってから何年くらいで別れたんでしたっけ。

M:それから半年足らずで2人の関係は終焉を迎え、「10年後なら一緒に登れるね」という言葉の呪縛によって、私はスカイツリーに登ることができなくなってしまったわけです…。その後も何度かスカイツリーの下まで来ることはあったけど、1回も登らなかった。なぜなら彼と10年後に登る約束をしたから…。

R:それは彼と復縁する可能性を考えて登らなかったのか、近づくと思い出すからなのか、どういう意識で避けてたの?

M:うーん、まぁ、復縁する可能性はないと思ってたけど、10年後に連絡とろうかなとは正直思ってた。10年経てば普通に友達として話せるんじゃないかなって。

R:「あの頃、約束したしさ、まぁお互い状況が変わっているとはいえ、せっかくだから登ろうよ」ってこと?

M:「だから、会おうよ」って。

R:会う口実?

M:まぁ、会う口実。

R:10年越しの?

M:そう。

R:それは…、しんどいなぁ(笑)。

M:まぁ、未練がましいよね。自分でも「登れよ」って思うよ(笑)。

R:でも登らなかったわけだ。

M:ずるずるとごまかしてたね。地方にいる友達が東京に遊びに来ると「スカイツリーに行きたい」って言うから、その度に来てはいるんだけど。

R:友達から「スカイツリー行こう」って言われて「いいよ」って応えるわけじゃん? で、スカイツリーの下までは来て…、そのあとはどうするの? まさか友達だけ登らせるとか…

M:そんなことしないよ(笑)! ソラマチを巡ったりとか、浅草・合羽橋に行くプランを混ぜ込んで、「ここはあくまで買い物をする場所から、登らない」って言い切る。「やっぱり登るんだったら東京タワーだと思うんだよね~」とか。

R:ははは(笑)、なるほどなぁ。

M:「スカイツリーは見るものだから! ここはソラマチで買い物楽しむような場所!」って。

R:そうやって数年間、友達と遊びに来ることはあっても登るのは避けてたと。

M:登らずとも近くに来るだけで、心が削られる音がしてたからね。「うわっ…、10年後まであと7年…」って思ったりして。

R:10年後の約束のために、耐えたわけだ。

「呪いを解きに行こうよ」

M:そういうわけで去年までずっと登らなかったんですよね。別れたのが2012年だから…、5・6年間くらい。

R:でも、登るきっかけが訪れたんでしょ。

M:そう! それはRyotaさんと「東京のつらい場所」をやりましょうって言い始めてた頃ですよ。その時は、企画のゴールをスカイツリーにしようって言ってたでしょ。ラストにスカイツリーに登ったら、呪縛も解けて最高だねって。

R:あー、この企画を本格的に始める前に、「こういうドキュメンタリーやったら面白いよね」って話してた頃。

M:その話をしたすぐ後に、呪いを解きに行ってしまったんですよ。

R:どういう経緯で登ることになったの?

M:一瞬「付き合いたいな」と思ってたけど、別にどうにもならなかったお兄さんと行ったわけなんだけど。

R:そのお兄さんは何関係で知り合った人?

M:そのお兄さんは…あいつは何関係だ…?

R:ははは(笑)。

M:あー、マッチングアプリで知り合ったんだな。それで、普通に仲のいいお友達になったんですよ。本当に気が合ったから、毎週会ってるような時期もあって、「こんなに仲いいならさ、付き合っちゃったほうがよくない?」って言ったの。

R:お、こっちから切り出しましたか。

M:でも、お兄さんから「やっぱり恋愛対象としては考えられない」って言われまして…。その後も会う約束はしてたんだけど、「当分会うのを控えたい」って言われて「これは疎遠にされて終わったな…」って思った。私は友達を続けられると思ったけど、そうじゃなかったんだなって。

R:それでもう、この人と今後の関係はないなと悟った。

M:むしろ、一周回ってイラっとしちゃったかな。脈が無いとは思ってたけど、私は正面切って言ったのに、向こうはLINEで返事を済ませてきて。不誠実じゃん。私はそういうの超嫌いだから…。

R:それで嫌になっちゃったんだ。

M:「はいはい、もういいです」って疎遠になって、半年くらい経ったんだけど、ある日、向こうから「会えないって僕から言ったくせになんだけどさぁ、やっぱり仲良くしたいから飲みに行かない?」って言われて、飲みに行って。

R:それ、相手はどういう心境の変化だったの?

M:「やっぱり気が合う友達だし、あんな形で終わりたくないなと思って」って言われた。「お前は本当に自分勝手だな!」って思ったけど、それから何回か妙にデートっぽいことをしたんだよねぇ…。で、「今日暇? 百合展をやってるから一緒に観に行かない?」って誘われたから行ってみたら、彼が一眼レフのカメラを持って現れて「今日さ、写真撮りに行きたいから百合展を観終わったら、スカイツリーに登らない?」って言われて。

R:向こうは、元カレと「10年経ったら…」っていう約束したのは知ってたの?

M:うっすら話してたとは思うけど。

R:彼もなんとなくスカイツリーの因縁の件は知ってるわけだ。

M:「前も言ったけど、私さぁ、スカイツリーに行けない呪いをかけられてるから」って言ったら、彼が「じゃあ、僕と一緒に呪いを解きに行こうよ」って言ってくれて。

R:おー、かっこいいこと言うじゃん!

M:言うことはかっこいいんだよなー。別にいい奴じゃないけど(笑)。

R:ひどいな(笑)。…と、話している間に、エスカレーターのところまで来ましたよ。いよいよスカイツリーに登ります!

M:うわっ、まだ心の準備が…。

R:いや、もう呪いは解けたんでしょ(笑)。

M:解けたとはいえ、つらいもんはつらいよ(笑)。

もりた、仏教に目覚める

R:エレベーターで、サクッと展望デッキまで上がってきたよ。おー、めっちゃいい景色!

M:曇ってるけど、結構きれいだね。

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R:さて、お兄さんに「呪いを解きに行こう」って言われて、もりたとしてはどういう心境だったの?

M:「確かに、いつまでも過去に縛られてちゃよくないよな」って思った。ちょうどそいつと気まずくなって疎遠だったころ、苛立ちを落ち着かせるために、いろんな仏教の説法の本を読んでた時期があったんだけど…。

R:よっぽど苛立ってたんだな(笑)。

M:結構、真面目に読み込んでたんだよ。説法では「執着を捨てなさい」っていう話がよく出てくるの。人との縁は勝手に結ばれるもので、いい縁だったらどうやってもずっと結ばれ続けるし、悪い縁は放っておいても自然にほどける。だから一度疎遠になったとしても、本当にそれがいい縁だったらどこかでまた勝手に会えるようになっている、って。

R:こういう風にまた会えたのだから、もしかしたらいい縁なのではないかと。

M:まぁ、それが友達としての縁であっても、結ばれてるんだなと思って、私の中でその説法とそのとき起こってることがひとつにつながったわけ。そう考えれば、飯田橋の彼との縁も、それがいいものであればまた結ばれるんじゃないかと思った。「10年後…」とかわざわざ口実を作らなくても、自然に会えるんじゃないかって。逆に、飯田橋の彼との思い出に縛られて、執着する汚れた気持ちを持っていたら会えるものも会えないんじゃないかと。

R:ガッツリ仏教入ってるな(笑)。

M:「呪いを解きに行こうよ」って言われた瞬間にそう思ったの。だから「一緒に行ってくれるんなら…、行きたい」って言って登った。上がるまでは吐き気がするくらい気が重かったんだけど、展望階に着いて、エレベーターのドアがバーンと開いて、一面の夜景が目の前に広がっているのを見た瞬間、「あ、意外と簡単に呪いって解けるんだ」って思ったんですよ。

R:おぉ、思ったより大丈夫だったんだ。

M:ちょっと泣きそうにはなったんだけど(笑)、風景を見たら「きれいだな、東京って」って素直な感動が湧きあがってきた。登る前は、飯田橋の彼に対して、ちょっと罪悪感を抱くんじゃないかと思ったのね。

R:「約束破っちゃったな」って。

M:そう、「別の男の人と来ちゃったなぁ」とか。でも、そんなことは全然思わなくて「うわぁ、きれい。来れてよかった」って普通に感動できた。その時に、「私は自分で自分に呪いをかけていただけなんだ」って気付いて「大丈夫、私、意外とちゃんと生きていける」って思えたんだ。

R:なんか、いい話だなぁ。

M:と言いつつ…、もう一つ上の展望回廊に行くエレベーターを待ってた時に、斜め前に並んでた人が飯田橋の彼にすごく似てて「えっ!?」ってものすごい動揺しちゃって。

R:ははは(笑)、やっぱり引きずってるんだな。

M:「呪いが解けた」と思いつつも、実はどこかで面影を探しちゃってたんじゃないかとは思う。

R:じゃあ、その展望回廊にも上がってみようか。

“街行くカップル”の真実を悟る

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R:展望回廊、すごい景色だな。床がちょっと斜めになってるんだ。

M:そうそう、歩いているうちにちょっとずつ目線が上がっていくようになってるの。夜景がよかったんだよなぁ。高層ビルの航空障害灯がチカチカしててさ。ここ、お兄さんと歩いてる時にエモい気持ちになってしまって、別の意味で泣きそうになったんだよね。

R:あー、すごくいい雰囲気だったってこと?

M:もちろん、雰囲気がよかったのもあるんだけど…。やっぱり夜景が見える時間帯って、カップルのお客さんが多いわけ。で、「これって傍から見たら私たちも、じゃれ合ってる仲のいいカップルに見えるんだろうな」って思ったのね。それこそ、お兄さんが一眼レフを持ってたから、「お前がカッコつけて一眼レフで写真撮ってるところを私が撮ってやる!」「やめて~! 撮るんならちゃんとカッコよく撮って」とか話してた時に(笑)、ふと隣のカップルを見たら同じようなことを言ってたから、「私たち、周りの人からカップルだって思われてるんだろうな」って。でも、逆に考えると、私が羨ましがってたその隣のカップルも実はカップルじゃなくて、もしかしたら私たちみたいな単なる友達同士なのかもしれないでしょ。そこで、世界の真実に気付きまして。

R:真実?

M:私の周りのカップルに見えている人も、実はカップルじゃない方が大多数なんじゃないかと。

R:周りにいる仲良さそうな男女と、独りでいる自分を比べて落ち込んだり傷つくこともあったけれど、自分とお兄さんがそういう感じで仲良くしてるってことは、世の中の男女もみんながみんな付き合ってるわけじゃないのでは…、ってことか。

M:「お前ら、幸せそうにしやがって!」って勝手にひがんでたけど、彼らももしかしたら私と同じように傷ついているのかもしれないと思った瞬間、ちょっと世界をやさしく思えた。

R:すげぇ、悟りの境地だ! 仏教ガッツリ入ってるな(笑)。

M:風景を眺めながら、「あの辺が私の家かな」って話とかするでしょ。海沿いの方を指さしたお兄さんに「あの辺の、光が揺らめいて見えるところが僕の家だよ」って言われて、彼の横顔を見た時に「あっ…、このまま何か始まらないかな」と思ったけど何も始まらなかったね(笑)。

R:カップルに見えるところまではいったけど、カップルにはなれなかったよという話か(笑)。

M:なれなかったし、ならなかったし。別に今も仲のいい友達だし、相変わらずお互いにそういう風には思ってないけど、スカイツリーにだって意外と孤独な人が集まってるのかもなって。

R:こういうところに来るとみんな楽しそうに見えるもんね。でも、もしかしたらもりたのようなケースもあるのではないかと。確かに「ほら、あのあたりが職場で…」とか、会話だけ聞いたらカップルだと思っちゃうもんな。

M:そうでしょ? あ、あの辺りとか綺麗だよ。

R:ホントだ、雲の切れ間に光が差し込んでて。

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M:あ、東京タワーも見える!

R:うわー、小っちゃいな!

M:あっちの方がお台場でしょ。で、向こうに海があるけど、あれが舞浜辺りでディズニーシーがちょっと見えるんだよね~。

R:おぉ…、つらい場所探訪から、完全に観光へシフトしてるな(笑)。

M:いいじゃない。私だってつらいばっかりじゃ生きていけないんだからね!

R:確かに(笑)。今回、スカイツリーに登るのは2回目だったわけだけど、今の心境はどんな感じ?

M:やっぱり来るまではしんどかったけど、登っちゃえば何ともないんだと思う。ところどころ「ウッ…」となるところはあったけど、都庁の展望台の時ほど「死ぬ…」という感じではなかった。

R:話を聞いてると、つらい場所でもあるけど、傷が癒えた場所でもあったという感じだもんね。

M:そう、みんなに言いたいもん。「意外と呪いは解けるよ」って。だからといって、解くために頑張れとは絶対言えないけど。

R:「呪いを解きに行くぞ!」って無理して行くのはつらいもんな。百合展のついでに登ることを、その場で決めたのが大きかったよね。

M:そうだね、ふとした拍子で行ったのは大きかったと思う。

R:そう考えると、行くたびにちゃんとつらい飯田橋ってやっぱりすごいんだな(笑)。

M:だってこの前も仕事で飯田橋に行った時に、吐きそうになってTwitterの人たちにめっちゃ励ましてもらったから。

R:飯田橋は強いなぁ(笑)。

M:最強だよ。死んじゃうかと思ったもん。「このままノーリターンしていいですか?」って会社に電話かけそうになったもんね。

涙腺弱すぎ問題

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R:スカイツリーを降りて、ソラマチに向かいますよ。

M:ソラマチは飯田橋の彼と一緒に回ったから、いろいろと記憶が染みついてるはず…。

R:もしかして、ソラマチの方がトラウマ強い?

M:うん、地雷が埋まってる可能性は高いね。

R:これからもうひと山あるのか(笑)。

M:ソラマチに行く前にさ、彼がホットチョコレートを買ってくれて、それを飲みながら2人でスカイツリーを見上げたんだよね。「スカイツリーきれいだね、大きいね」って私が言ったら、彼が「10年後なら空いてるだろうから、その頃に登ろうよ」って。

R:「遅刻しておきながら、お前が10年後って決めるなよ!」って感じだよな。

M:でも、すんなり「わかった!」ってなっちゃったんだよぉ~。あー、飯田橋の彼はあの後、スカイツリーに登ったのかな…。

R:サクッと1年後くらいに登ってる可能性はあるよ(笑)。

M:私じゃない女とな…。

R:もう彼のFacebook見てないの?

M:いや、たまに…。

R:やっぱり見てるのね(笑)。

M:仕事がつらい時に、「あいつを見返すために、私は偉くならなきゃいけない!」って思うためについつい見ちゃう。

R:仕事のモチベーションアップかよ(笑)。でも、「10年後」っていう彼との呪いも解けて、スカイツリーに来られるようになったわけだし。

M:…。

R:なってないの(笑)。

M:どうだろう、わかんない。

R:今日の様子を見てると、普通に来られるようになってる感じがするけどなぁ。あとは夜景に慣れる必要があるけど。

M:夜景に弱いんだよね。高速道路とかで窓の外に流れてる夜景とか、見てると自然に泣けてきちゃう。

R:涙もろいなぁ。

M:最近は本当に涙腺が弱くなってるんだよなぁ。この前のゴールデンウィークに旅行に行ったんだけど、家に帰ってきて一人で紅茶を飲んでた時に、「あ、私、いま東京で一人暮らしをして、ちゃんと自分で立って歩けてるんだな」って思ったら、それだけで涙が出そうになったよね(笑)。

R:そんなに涙もろいと、生きるのに支障が出てくるな(笑)。

M:26年分の傷を抱えて生きてるわけですからね~。ではそろそろ、暗黒のソラマチに行きますか!

R:ソラマチに「暗黒」って形容詞付けるのお前だけだよ(笑)!

M:だってつらいんだもん(笑)!

無限に試せる塩の専門店

R:ほら、ソラマチ楽しそうじゃん。外国人の子供とかはしゃいでるじゃん。

M:私の分まではしゃいでくれ…。

R:子供に託すな(笑)。飯田橋の彼とはどの店に行ったの?

M:まずは塩の専門店。ここで買った塩で料理を作ろうねって約束したけど、結局作らずに終わった。

R:「私が手料理ふるまっちゃうぞ」的なノリだったのに。

M:そうなんだよなぁ…。ここはね、色んな種類の塩が売っていて、全部試食できるの。

R:マジで!?

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M:ほら、試食用の塩が並んでるでしょ。おにぎり専用の塩とか、ドレッシング用とか、メニューごとに作られた塩があったりするんだよ。チョコの塩とか試食できるよ。食べる?

R:ちょっとほしい。

M:はい。

R:ありがとー。

M・R:…おいしい~。

M:カレー風味の塩とか、こういうのを見て、飯田橋の彼とめちゃくちゃはしゃいだ記憶がある。「このフライドポテトの塩とかすごくよくない?」って言って。

R:へ~、フライドポテト専用の塩!

M:相変わらずおいしいな。

R:さっきから塩舐めてばっかりだな(笑)。

M:オニオンの塩もおいしいんだよ。

R:俺にもちょうだい…あ、おいしい。

M:揚げたてのポテトにかけてもおいしいし、サラダとか野菜系にもおすすめです。

R:これはいいデートスポットだな、お互いに塩かけあって。

M:そう、「どの塩がいい?」って感じで盛り上がるわけ。

R:オニオン塩、フライドポテト用の塩に、ハイビスカス塩とか、抹茶塩もあるね。塩焼きそば用の塩に、マーボー塩…。

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M:ネギ塩とかね。辛いダイナマイト塩とかあると、試しに舐めて「辛い!」とか言ってワーワー盛り上がったりするのが、まぁ楽しいんですよ…。あ! これめっちゃおいしい!

R:ドレッシングソルトとマヨネーズ…旨いな。

M:混ぜただけとは思えないクオリティ。

R:岩塩もあるよ。

M:おいしい…。これは肉に合うやつだな…。

R:塩舐めすぎだよ(笑)。でも、確かにこれは楽しい。いい感じのデートをしてたんだね。

怒りを忘れた食品サンプル専門店

M:色んな塩を見て「すごいね!たのしいね!」ってテンションが爆上がりしたところで、食品サンプルの店に突入ですよ。

R:おぉ、ほんとに食品サンプルだけの店だ! 面白い!

M:そう、2人とも食品サンプルが好きで、合羽橋にある専門店にもよく見に行ってた。

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R:あー、これ、テレビで見たことあるぞ! 面白いサンプルを作ってるところだ。

M:質感とかすごいよね。食品サンプルキットも売ってるから、「一緒に作りたいね」って話をして盛り上がったんですよ。

R:向こうで塩を舐めて「今度料理作るね」って言って、こっちで食品サンプル見て「今度一緒に作ろうよ」って色んな約束をしたわけだ。そのうち叶えられた約束はあったのかい?

M:えーと、無いかなぁ~(笑)。

R:なんて悲しい話だ(笑)。

M:でも、やっぱりこういうところに来ると気分が盛り上がるんだよね~。これとか可愛いよね。

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R:おぉ、クリップになってるんだ!

M:デート中、こういうのを見ながらすごくはしゃいでたなぁ。

R:じゃあ、ここに来た頃には2時間遅刻されたこととか忘れてたんだ。

M:すっかり忘れてたね(笑)。

R:あの頃のもりた、ちょろいな(笑)!

M:ディズニーランドに行くのに3時間遅刻されたときは、それまでふつふつと溜まっていたものが爆発したけど…、ここではちょろかった(笑)。彼が買おうか悩んでたのはこれだね。ベーコンの栞。

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R:これいいな。味のりもある。

M:この入り口のところでもテンション上がったなぁ。「この中でどれ食べたい?」って話で盛り上がった。「このローストビーフいいよね」とか、「卵乗ってるやつが、黄身がトロッとしてていいよね」とかさ。

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R:めっちゃ良いデートしてるじゃん。何で別れちゃったの(笑)?

M:…私も何で別れちゃったのか、こっちが知りたいよ(笑)!

R:ははは(笑)。スカイツリー登らなくても、ソラマチだけで充分デートできるな。

M:そう、お店がいっぱいあるから。おすすめですよ!

R:久しぶりにソラマチを回ってみてどうだった?

M:じわじわとはダメージを食らったけど、いつもほどではないかな。飯田橋に比べたらほぼノーダメージなのかもしれない。

R:じゃあやっぱり、最終的には飯田橋に向かわないとね。

M:あと何回くらいで行けるかなぁ。

R:次が東京タワーでしょ。で、その次に別れ話をされた渋谷のポムの樹でオムライスを食べて、その次はいよいよ飯田橋ですよ。

M:うわー、あと3回か。頑張るしかないね!

R:とは言いつつ、飯田橋以外は割と平気なんじゃない?

M:なんだかんだその後も行ってたりするからなぁ。でも、ポムの樹のオムライスはもう食べれる気がしないよ!

R:いやいや(笑)、頑張って食べに行きましょ。

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インタビュイー
もりた(Twitter:@minic410)
逆流性胃腸炎気味なのにビールと煙草中毒なOL。
クーチェキでは「情事の後は、必ず金マル。」を連載中。
短期集中演劇創作イベント『第一回DramaJam』では、「短歌病」で脚本賞を受賞。
インディーズ小説「あなたは砂場でマルボロを」「許してよ、ダーリン」がKindleをはじめ各種電子書店にて発売中です。

インタビュアー・記事構成
Ryota(Twitter:@Funatoku_ryota)
クーチェキの企画・運営・編集をやっています。

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