くしゃみってぶちかましたら時にはとんでもないことになることもあるんやで
大きなくしゃみをしました。
それはそれは大きな大きなくしゃみでした。
それは
初デートの最中に桜並木の下で行われた
刹那的なリサイタルでした。
リサイタル前までは初々しく手を繋いでいた二人もそれはそれは大きなくしゃみであったためそれを抑え込むための副作用として
手と手をさよなら状態にしなければなりませんでした。
そんなさよなら状態を続けるわけには、いや続けたくない彼氏さん。
また手と手をこんにちはさせたい。くしゃみをしたばかりではありますが、なにせ初デート。はじめてその日、やっと手を繋げたのだから。
しかし困った。
リサイタル後の手は唾液という名の微細な粒子によって少しばかり湿っています。
もちろん自然乾燥すれば
これくらいの湿りはすぐに解消されることはわかっていました。
よし、じゃあ少しだけ時間をおいて手を繋ぎなおそう。
そうはじめは思いましたがしかし。
いやまてよそれは相手に失礼じゃないか。
汚い。不潔。不埒。きもい。
などと思われたりしないだろうか。
そして最終的にフラれたりはしないだろうか。
初デート特有、繊細な心が揺れ動く。
そうだ。トイレに行くといって
手を洗いに行こう。
それがいい。名案だ。
と思ったがしかし
ハンカチいう紳士な持ち物を
家に忘却してきてしまった。
だめだー。
ということはハンドドライヤーのあるわりときちんとしたトイレを見つけないことにはトイレに行けたとしてもさらに手を湿らせて帰ってくるという羽目に陥ってしまう。
たとえそれがくしゃみから生まれた湿りでないとしてもそれがそうじゃないと証明できる何かがあるかと言われればそうではない。
そして
こんな桜並木のど真ん中にそんなものを完備したお手洗いなどありそうにもない。
桜並木に対して"こんな"とは失礼かもしれないが、今の私にとって必要なのは桜並木などではない。手を再び繋ぐために必要なのはハンドドライヤーなのだ。
そんなこんな慌てふためく僕の手は
もちろんすでに完全に乾ききっていた。
手だけではない、喉ももうカラカラである。
くしゃみひとつで慌てふためく僕。
不思議そうに僕を見つめながら歩く彼女。
会話のない2人と桜並木。
そうこうしているうちにまたやってきた
くしゃみの予感。
なんと耐えようと
またまた慌てふためくオレ。
不思議そうに見つめるワタシ。
その後2人が
その日手を繋ぐことはなかった。
たったひとつのくしゃみが切り裂いた
2人の手と手は、その後
2度と繋ぎ合わさることはなく、それがくしゃみが原因だったのかそうじゃないのかは未だに雲隠れしたままである。
せいかいはなんだったのか。
そんなことを考えてしまう日。
あなたにもありませんか。
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