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僕なりのウエストサイドストーリー

普段モノトーンの服しか着ない僕が、珍しく(なんなら人生初かもしれない)淡いブルーのデニムを買った。北海道の冬はもう少し続くけれど、僕はもう来たる春を見据えているのでこんな浮かれたチョイスもしてしまう。

僕は服は好きだが服屋の接客が苦手で、服屋にいるおしゃれな客も苦手。「仲のいい店員がいてさ」みたいなものに憧れつつも、「仲のいい店員がいてさ」という人は苦手。こんな難儀な性格と自意識で、服を買うのはオンラインばかりになってしまった。そうしているうちに自分の体のサイズを把握してきたので、寸法を見れば試着せずとも大体外すことはない。

そもそも僕は体が小さいのでパンツは基本的にSサイズだ。件のデニムも、迷うことなくSサイズを購入した。僕の見立てではそれでもウエストが少し余るくらいのはず。ところが届いたデニムを早速履いてみて焦った。履けはしたもののウエストがびったびた。重めのご飯を食べたら終わってしまうかもしれないほどびったびただ。びびった。

「細すぎるんだからちょっと太るくらいでちょうどいいよ」と、学生時代から言われ続けてきた。ところがいい感じに「ちょっと太る」のは難しいもので、脂肪は付いてほしくない顔とかお腹に嫌がらせのように付いてくる。別に僕の見てくれが多少良くなろうが悪くなろうが世界は変わらないのだけれど、それでも服が似合わなくなるのは深刻な問題だ。

ということで、痩せる。


今までも健康診断の前とかに短期的なダイエットをしたことはある。そのときの方法を僕は「極論節制ダイエット」と呼んでいるのだけれど、ただひたすら食べない。食べるのはサラダとかサラダチキンだけというもの。もちろんその方法が良くないことは指摘されるまでもなくわかっているが、そういうことではないのもわかってほしい。運動という選択肢は極力見ないことにしたい。

ところが今回の僕は違う。知らぬ間に太ったという時点で、体がおじさんになってきていることは自覚せざるを得ない。おじさんの体にそんな無茶なダイエットはさせられない。運動、筋トレ、代謝、見たくない言葉の羅列から目を背けるのをやめよう。ひとまずYouTubeで適当なエクササイズ動画を見てみる。髪をアップにまとめた溌剌とした女性がにこやかに励ましてくるのだが、服屋にいるおしゃれな客とは違う方向性で、これまた苦手なタイプの人種である。

動画に倣って一通り動くと、もう体がガクガクだ。日頃の運動不足を痛感する。しかしこの疲れこそが効いている証。翌日には筋肉痛になって、僕を強くしていくのだ。横っ腹を引っ込める物語の始まりである。無理矢理にタイトルを回収。


翌日、僕は筋肉痛にならなかった。効いていないわけではない。おじさんの筋肉痛は、2日後にやってくるらしいのだ。


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