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したあとのふたり

午前4時31分。随分前に映画館で観た「花束みたいな恋をした」をみた。あの作品には初めての恋(=ずっと続くと思っていた日々)が詰まっているから、ある意味過去に浸れる要素もあるのだけど、それを乗り越えたあとの、というか乗り越えるためのヒントが沢山あるのだ。

初恋を懐かしく思い、悲しみきったほうが、きっと前に進んでいけるし、ある種の反省をして、それを今に活かせると思った。正しく振り返るために、あの二人の物語を借りたようなものだ。

アマプラで百円で購入して(もらって)、一緒に観た。

前よりは冷静に見れたけど、オチを知っている上に、いろんな感想や考察を見ていたことので、最初のシーンから泣きそうだった。


高校の時つきあっていた彼を思い出す。きっとこれから先も、何度も、思い出すだろう人。未練なんてさらさら無いけれど、愛おしくて、どうにもできない恋だった。幸せだったんだ。


もう、離れたほうがいいのかもしれない

別れを切り出したのはわたしだった。いや、最初にそれを意識させてきたのは向こうだった気もする。もう、よく思い出せないけれど、乗り越えていきたいと思える愛情が、段々となくなってしまったんだと思う。

最後の最後に二人で笑っていられるのなら、それでいいと思っていた。なんやかんや付き合い続けて、彼がくれる悲しみにも慣れて、いつか結婚して、そのうちおじいちゃんおばあちゃんになって。

「いろんなことがあったね」
「あの時はごめんね」
「幸せだよ」

しわくちゃの二人が笑い合っている姿を想像できたから、今この瞬間の悲しみはどうにでもなると、思ったんだけど、でも、なのに、わたしは別れを選んだ。


彼の方が不器用だっただけなのかもしれないなと思う。
それに、わたしの方が、彼よりも忍耐力がなかったのかも。

久しぶりに会ったとき、もう彼のことを好きではないんだと、悲しいほどに理解した。彼がいくら未来の話をしてくれても、どれだけ二人で過ごす日々を想像できたとしても、もう一緒にいるべきでは無いと思った。あんなに好きだったのに、もう戻れなかった。


初恋が終わったあと

むぎと、きぬちゃんは、もう戻れないことを分かっていたと思う。いや、むぎは、どうだろう。きぬちゃんはもう十分すぎるほどに、分かってただろう。彼が頑張っていてくれること分かっていても、それでも、悲しかったのだ。


二人で公開を楽しみにしてた映画も、
二人で行ったパン屋が閉店した悲しみも、
もう、自分だけのものになった。

もう、二人で共有できなくなった。

そして今後も、できることはないのだろうと気付いた時
きっと絹ちゃんは悲しくてたまらなかっただろう。


最初から、分かり合える人などいなかったはずだったけど
奇跡的に偶然に出会ってしまった運命の人とは、分かち合えていた。

「理解し合えない」と思っていたタイプの人間に、自分自身がなってしまって、けれど今を生きるためには馴染んでいくしかないのだと言い聞かせていた。きっと麦も、悲しくてたまらなかったと思う。



最初から、二人の向いてる方向は違ったのかもしれない。
けれどそれは今だからわかることだ。

二人での暮らしを続けていくために働くことを決めた麦は「絹ちゃんとの現状維持」を目標にしていたけれど、きっと、その時から違っていた。もっと自分のために、二人のために、生きる道を探すべきだったのではないかと思う。

でもそんなの、幸せな時間を一時停止してまで、話すことではなかったのだろう。でも、これからもずっと一緒に生きていくためには、ちゃんと立ち止まって話した方が良かったんじゃないかなと思う。


でも仕方ない。

多分、自分の弱さとずるさとに向き合うきっかけをくれるのが、初恋なんだ。

ならば、ここから学ばねば、と思う。



「またハードル下げるの?」

彼らは、ただこの幸せな日々を続けていくために、この社会で生きていくために、必死だっただけだと思う。もう麦は、パズドラしか出来なくなってしまうほど、忙しない生きているとは言えない毎日。

好きだった本も、二人でやりたくて買ったゲームも、もうやる気なんて起きなくなるほどに、資本主義に侵されたこの社会の渦に飲み込まれてしまった。


どちらがそうなってもおかしくなかっただろう。誰だってそう成り得るし、もはや、現代社会では、学生ですらほとんどの人間が片足を突っ込んでいると思う。


あぁもう今、この話はできない



わたしは何を求めていて
彼のどこに惹かれていたのだろう

強いて言うなら「知りたい」という動物的な衝動が自分に向けられること

それだけが目的だったのかもしれない

わたしには何もなかったから
彼が埋めてくれていた

それだけではないけど
わたしには、それだけだ

ちゃんちゃん


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