「本当にここまで提出しないといけないの?」と思った事業精算担当の方へ

助成金にしろ、委託事業にしろ、お金を預かる側として、求められる精算のための書類はしっかり出していきますよね。

ここらへんは民間企業、民間財団、行政でも、その精算書類の在り方にはグラデーションがあります。界隈で有名なほど精算書類が複雑であったり、コロナ禍以降で変化もありました。

これまでは印刷、製本、郵送だったものがデジタル化されて喜ばしいものもあれば、一部デジタル化されただけで、負担が増えたなんていうことも。

それでも求められる以上は「ちゃんと」やります。ただ、本当にここまで必要なのかということもときどきあります。

ある事業において、使った経費の領収書(またはレシート)を提出するという当たり前の話に追加で、あれもこれもということがあります。そのなかには、最初から言ってもらえたらいいのに、後から追加になったことで、非常に情報を集める難易度が高くなってしまうものもあります。

その情報のなかには、当時は直接連絡が取れたけれど、いまとなっては連絡が取れなくなってしまっていることだってあります。取引先がなくなってしまうとか、個人とのつながりが切れてしまうこととか。

また、職員の個人情報にあたる部分がさらっと要記載になっており、情報共有の契約もないのに、本当に渡していいのかと思うことだってあります。

僕の経験の範囲ですが、資金拠出元と受け手が直接やりとりする場合は、それって本当に必要なのかどうか直接担当者同士で話しやすい関係ですね。

一方、資金の拠出元と受け手の間に、その事業を中間的にマネジメントする組織が入ると、ややこしくなることがあります。そしてもっとも難しいのが、誰もが真面目にちゃんとやろうという意識が、誰も求めてないレベルの情報流通経路を作ってしまうことです。「謎ちゃんと」です。

例えば、資金拠出元が、中間組織に「しっかりお金が使われたどうかを把握できるようにしてね」と伝えます。中間組織はしっかりお金が使われたことを把握するため、一般的または同事業で過去に行われた精算内容を踏襲する状にちゃんと把握しようと志を持って考えます。「謎ちゃんと」の始まりです。

ちゃんとすること、しっかり把握するために必要な情報にはグラデーションがあります。このどこを取るのかについては、本来、資金拠出元と中間組織が確認し、それが仕様書(事業説明書)となって、受託元に事前に共有されます。受託元はそれに沿って事業遂行の間も、最終報告のための情報を蓄積していきます。

しかし、ときには最後の精算段階になって、もっとちゃんとしたい気持ちが、追加の情報を求めることにつながることがあります。

受託元は、資金拠出元ではなく、中間組織とやりとりをしますので、中間組織から求められたことは、資金拠出元の意向と捉えます。そのため、本当にここまで、いまから情報を集めて、提出が必要なのかと思いながらも、そう言われてしまったから真面目にちゃんとやろうとします。この時点で「謎ちゃんと」は、ステークスホルダー全体に広がります。

このとき、事業精算の担当者には立ち止まってほしいのです。これは本当に必要または提出していい情報なのかどうか。真面目に考えれば出さない理由はありません。しかし、改めてここは問い合わせるべきです。

問い合わせる前に少し整理しておくのがよいです。まずは仕様書や契約書にどこまで書いてあるのか。そして、その情報が秘匿性の高いものであれば、何を根拠にしているのか。その上で、秘匿性の高い情報、例えば、職員の個人情報にあたるなどであれば、その情報を提供するにあたって守秘義務契約などを別途結ぶ必要があるのではないか。

これらを整理して、問い合わせます。出さない、出したくないという思考はないはずです。ただ、「出していいものなのか」は検討すべきです。

たまたま、事業精算の担当者と一緒になったとき、そういう話を聞きました。さすがにそれは契約もなく、事前に合意もなく出せないのではと、いったん、精算に関する情報を契約書までさかのぼって確認をして、改めて、現環境でここまでの情報を出すことは、組織としてできないのではないかと思いました。

そして、そこまでの情報を求めているのが、中間組織なのか、資金拠出元なのかわからないため、資金拠出元に確認をすると、そこまでのレベルの情報を中間組織に求めてないことがわかりました。

そのとき取りえる選択としては、資金拠出元から中間組織に連絡をしてもらうか、受託元から中間組織に連絡をするかです。後者の場合は、中間組織から資金拠出元に確認をすることになるでしょう。

残念ながら「謎ちゃんと」はしっかりやろうとするひとたちだけでは、謎は解明されないままちゃんと実行されます。ここにおいて中間組織にも、受託元にも謎コストが発生します。場合によっては、それが個人への負担やリスクにまで及ぶことがあります。

この解決策はコミュニケーションです。自分たちだけで判断するのではなく、情報を整理して、ステークスホルダーと話し合えば解決する(そこまでは不要)ことで、電話一本/メール一通で終わることもあります。

事業精算の担当者の方々には、本当にここまで必要なのかなと思ったとき、組織の代表者や、同様のまたは類似事業の事業精算を担当する他の組織の仲間に相談してほしいです。

中間組織のご担当者さまへのお願い

ご担当者さまとしても、責任をしっかり果たす上で事業精算にかかる情報を整理し、受託元に提示されていることと存じます。事業精算段階で急遽、必要な情報を追加されることもあるかと思います。

その際、資金拠出元に確認をお願いいたします。そこまで必要かどうかの意思決定は資金拠出元にあるかと思います。また、一般的な精算の在り方については、グラデーションもありますので、事業設計の段階でどこからどこまでを取るのか、仕様書(事業説明書)を作る際に明示しておいていただけると、事業実行とともに精算報告を意識して動けるのでありがたいです。


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