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勇者タイム

31歳。
世田谷区在住。もうすぐバツイチ。

笹塚駅で降りて、ホームから夕焼けを見る。
もうすこし電車に揺られたら、君の住む街。
君の住む街と僕の住む街は違う。あの日から違う。

オリジン弁当で特のりタルタル弁当を買う。
作り置きで冷めたジンギスカン弁当が30%引きで置かれていたけど、
出来立ての定価のぬくもりを選んだ。

電子レンジがない。ソファーがない。テーブルがない。
ないものが、在る。
寂しさがある。むなしさがある。焦りがある。
なくていいものが、在る。
タルタルソースとしょうゆをたっぷりと白身フライにかけて、
今朝買ったコーン茶で流し込む。

どんだけ凹んでも、腹はへっこまない。
お腹は空く。
食べたばかりなのにファミチキが食べたい。
考えたばかりなのにまたチラついてしまう。
果てたばかりなのにまた検索してしまう。
賢者タイムなど実はないのだ。
そんな暇はないのだ。

勇者であり続ける。
そう言い聞かせ続ける。
不安という敵を討伐し続ける。

ドラクエの序曲を聴きながら、日の暮れた笹塚を冒険しようか。


あとがき:行き先に迷ったら、身の回りの人に話を聞く。ドラクエのように。






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