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heyの新オフィスをデザインしました。

heyの新オフィスができました(リリースはこちら)。

heyは STORES ブランドでお商売をする企業や個人向けに、さまざまなデジタルサービスを提供している日本のスタートアップです。キャッシュレス決済とかネットショップとかオンライン予約システム、POSレジとか。

私自身はheyの前身となるCoineyの創業メンバーでもあり(詳細はdesigningの記事に)、heyになってからは組織、事業、ブランド周りのさまざまなデザインをサポートしています。Coiney、hey のこれまでのオフィスデザインも担当しています(ヘイ創業時のオフィスデザイン記事)。

今回heyの新オフィスをつくるにあたって、全体のクリエイティブディレクションと空間デザインを担当したので、その思考プロセスを書いていこうと思います。

オフィスのデザインってどんな順序や目線で考えるの?みたいな話を中心に書きます。

まずは出来上がりの写真から!

完成写真

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ワイワイ話したり、ワークショップもできるオープンデスクゾーン。
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ゆったり話せるラウンジゾーン
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ゾーン間をゆるやかに区切る特注の巨大暖簾(のれん)
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学びのためのライブラリーゾーン
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ファミレス席
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heyのキャラクター ペンギンの「はろ平」
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一人で黙々とこもれるワークブースゾーン
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デスクゾーン
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自販機もオリジナルラッピング

デザインのポイントは、
1.はたらくモードと紐付いた、4種のゾーン設計
2.各ゾーンをゆるやかにつなげる暖簾(のれん)
3.インスピレーションを誘発する様々な仕掛け

です。詳細は後述。

リアルオフィスの存在意義

今回空間のデザインのコンセプト、方向性を決める前に、現在のリモートワーク中心の時世を鑑みずにはいられませんでした。
パンデミック以前とはオフィスに求められるものがガラッと変わってしまいました。
一回もオフィスに来たこともない新入社員の方もいたりする時代。リモートツールで十分回せるようになった仕事も多く、「今、リアルオフィスだからこその機能とは?」という大きな問いから始まり、そもそもオフィスで働くとは何なのか?という根源的な問いを考えるところから始めました。

視点を定義し、言語化・構造化する

全ては定義から始まる。
「情報や考えを整理し、言語化・構造化」することから始めるのが私のデザインスタイルです。今回はオフィスの機能とは何か?を2021年時点の世の中ベースに見直しました。
そもそも「はたらく」とは何で構成されているのか?
その結果見えてきたのは「モード」という単語でした。 人がオフィスで、情報を仕入れようとしているのか出力しようとしているのかという「目的のモード」と、雑音から離れて集中して取り組みたいのか、環境での出会いや偶然を取り込んで開放気分なのかという「気分のモード」 です。

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コンセプトを考えた際のメモ。いつも字汚い...

オフィス、またはオフィス以外で私たちが働く場所を選ぶ際、「その日に主に取り組みたい仕事」を基準にモードを選ぶことでしょう。

世の中のさまざまな人の働き方を観察すると、実に多様なスタイル・場所があることに気づきます。

誰にも邪魔されずに考え事をしたい時はホテルを借りるという人もいれば、リラックスしてアイデアを出したいからソファーに寝転びながらタブレットでメモしたいなんていう人もいます。歩きながらが最もアイデアが出るので打ち合わせは散歩しながら音声だけでなんていう人もいます。

「仕事」と一言で言っても、資料作成のために何かを調べるようなインプット型の仕事もあれば、ドキュメントをまとめたり仲間との議論を通じて方向性を定めたりするようなアウトプット型のものもあります。外部からの雑音を遮断した方がよい場合もあれば、雑談が多く入り混じるような環境の方が効果的な仕事もあるでしょう。

2x2マトリクスとコンセプト

このような観点をベースに具体的にデザインのスペックを決めるための道具として、さまざまな仕事における「モード」を抽象化して、 リラックスと集中、インプットとアウトプットという「気分と目的、2つのモード軸」を設定し、2x2の概念図を作りました。

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実際私たちが仕事をする際、これら4つのモードを緩やかに切り替えながら仕事をしていることと思います。モードの切り替えが楽におこなえると仕事も効率良く進められ、働く人のストレスも少ないはず。

そこで、このマトリクスをベースに、 異なる「モード」に最適化された4つのゾーンが共存し、かつ緩やかにつながる空間とすることで、さまざまな「モード」に対応できるオフィスデザイン を目指しました。
コンセプトは「diverse collaboration(多様なコラボレーション)
この言葉を原点とし、アイデアを膨らませていきました。

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各モードに対応した4つのゾーンがぐるっと配置されたレイアウト。中心の青い場所には全社イベントを放送できる専用の放送スタジオを設置しました。ここにはビデオカメラやモニター、音響機材など専門業者なみの放送機材が揃えてあり、ちょっとしたテレビ番組クオリティのコンテンツを自社で作って社内向けに放映しています。お見せできないのが残念ですが、hey メンバーの放送コンテンツづくりのクオリティはすごく高く、リモートワークで貧相になりがちな社内コミュニケーションもこれらを駆使してカバー。スタジオの壁はガラス張りで放送中にもオフィスが映像に入るようになっています。リモートの人もオフィスの息遣いを感じられるようにしたいという意図です。

また、スタジオで機材を載せるのに使っている什器は、Coineyのオフィスをデザインしたときに作ったDJブースを流用しています。写真の一番奥の大きなブース。

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オフィスを作るというのはゴミや捨てる家具がたくさん出てしまう負の側面があります。今回オフィスを作る際に、使い続けるものは使いたい、なるべくゴミを出さずにつくりたいという想いもあったので、他にも家具や什器など、使い続けられるものは新たな役目を見出して使っています。

下は当初のスケッチ、実現できたアイデアもできなかったアイデアもたくさん。

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空間ごとのデザイン言語の設定


どんなデザインをする際にも、私はデザイン言語を重要視します。
デザイン言語というのは「その色やかたちはなんのために、どういった意図で選択されたのか」を言語で定義することです。
例えば、リラックスしてもらいたい空間なら赤よりグリーンだよね、ツルッとした素材より手触り感がある自然っぽい素材の方が適してるよね、オブジェクトも角が取れた形状が中心であるべきだよね、みたいなことです(実際はもっと詳細に言語化します)。

このデザイン言語が明快であればあるほど、設計する人も意思決定する人も納得できるデザインを進めていくことができます。

今回であれば、各ゾーンが目指す機能や持つ意味、それらを言語化し、その目的を色や素材に落とすならこういうもの、という考え方でデザイン言語を決めていき、ドキュメント化しました。抽象的なコンセプトから具体的なデザイン言語へのつながりを、丁寧に分解して言語化することで、「この言葉が意味するもの、求めるのは具体的にはこのかたち、この色、この機能」と目指す正解を共有しやすくなるツールとして用意しました。

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コンセプトワードが具体的に何を指すか細かく言語化

今回空間デザインをするにあたって、インテリアデザイン会社FLOOATにサポートしていただいてます(Coineyのときから空間デザインする際はサポートをしてもらっています)。FLOOATのチームや、hey社内のデザインチームと各所のデザインディティールや方向性を共有する際にも、この「コンセプト&デザイン言語資料」を議論の中心に据えることで、スムーズな仕様決定ができました。

空間のデザインはファブリックや塗装色、家具の選定など細かな選択の集合です。選択肢が膨大なので、気をつけないと、目的からブレたり、ちぐはぐなセレクトになってしまいがちです。上記のドキュメントはそういったことを少なくすることができます。今回であれば、各モードのゾーンに明確に質感や色味を定義したので、選択対象の絞り込みもスピーディにできました。

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ウェブサービスやアプリのUIなどをデザインしている人たちは「デザインシステム」として上記のようなチームコミュニケーションをするのは決して珍しく無いのですが、空間デザインの世界だとまだまだマイノリティなプロセスのようです。

空間をつなげつつ仕切る暖簾(のれん)

人間の気分や目的は常に緩やかに変化しています。その自然な心の動きに空間が寄り添えるよう、モードごとにゾーンを区切るのに合わせ、モードごとを緩やかに移行したり、隣のモードを少し意識できるような体験を実現したいと考えました。その際に障壁となるのは物理的な壁です。壁ほど意識を断絶しない空間の仕切りがほしい、と思い行き着いたのが暖簾(のれん)でした。暖簾は商売の象徴としても知られているので、STORES プラットフォーム を運営するheyだからこそ、オフィスのアイデンティティとなり得ると考え設置しました。

今回のオフィスで最もheyならではの意匠としては、この長さ14mの特注の「変形のれん」と、もはやheyのキャラとなったペンギン(はろ平)を使ったアートワークサインです。これらはheyのデザイナー @chucaaan にお願いして活躍してもらいました。

私が描いたこのざっくりとしたイメージスケッチと、「空間の性質を体現した、あくまでも空間要素としてのグラフィック表現」という要望を見事なビジュアルにデザインしてくれました。

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人の通り道を誘導する形状

のれんの制作はとらやさんなどの暖簾も手掛ける、中むらさんです。

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ビジュアルコンセプトは「素材の発掘」。heyはさまざまな異なる価値観を持つメンバーが集って、サービスを作り上げていくことを良しとしています。メンバーの個性を素材と見立て、オフィスはその素材たちが発掘され出会い、化学反応が起きる場。木や水、風の集合をモチーフとすることで、多様性を尊重する組織の個性をビジュアルで表現してもらいました。

プロダクトでも空間でも、アイコニック(象徴的)なデザイン表現は、人の記憶に残ったり、なんらかの想いを想起させたりと機能的な側面があります。 組織の思いや哲学を想起させるような意匠装置を空間に配置することは、組織にとってポジティブな働きをします。 heyならではのアイコニックな意匠を空間に配置することで、heyが組織として大切にしていることを常に思い出してもらえるとよいなと考えました。

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ちなみに、heyのデザイン部門はPodcastをやってます(現場  by hey design)。今回ビジュアルエレメントをデザインしてくれた  @chucaaan が上記のペンギンキャラクターについて話してる回はこちら

私が話してる回もあります。

点在するアートピース達

今回オフィスをデザインする際に、インスピレーションや空間演出の一環として、アートワークを設置できるように壁や空間を設けてあります。現在は、桑田卓郎さん(Untitled)、舘鼻則孝さん(Descending Painting、Void Sculptureの2点)、Stephanie Quayleさんの作品が置いてあります。 いずれも、置かれる位置や空間との関係、各作品の良さを考慮し配置しました。

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Stephanie Quayleさんの作品
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桑田卓郎さん(Untitled)
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舘鼻則孝さん(Descending Painting、Void Sculptureの2点)


STORES オーナーさんたちのプロダクト

heyはお商売のデジタル化を支援する「STORES プラットフォーム」を通じて、中小事業者のお商売にまつわる課題を解決し、こだわりや情熱、たのしみによって駆動される経済の発展を目指しています。自分たちが誰のためにサービスを作っているのか、を日常的にメンバーが感じられるよう、全国各地のオーナーさんが「STORES(ストアーズ)」で販売している商品を実際に試せるコーナーを設けました。美味しいお菓子やドリンクなどがたくさん。

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これら、オーナーさんたちの息遣いを感じながら、メンバーがサービスを作っていく空間に育っていってくれることを期待しています。

オープンその後

新オフィスをオープンしてから、まだたくさんのメンバーが一同に会すような事はできていません。なので、COVID-19で大きく変わってしまった「オフィス観」にできるだけ寄り添えるようデザインした新オフィスですが、このデザインが正しかったのかどうかはまだわからないというのが現在の感想です。 空間のデザイン、特に店舗や家、オフィスのデザインはほぼ必ずといっていいほど設計者の意図とは違った使われ方が加えられていくので、実際にみんながしばらく使った後に新しいオフィスとして完成していくことになると思います。heyのメンバーには新しいオフィスを大事に育てていっていただけると嬉しいなと思います!

heyでは新メンバーを待っています!

最後に求人です。heyでは全ポジションで絶賛採用中です。子育てにも優しく、郊外や県外からのリモートワークも可能。かなり先進的で働きやすい環境を整えてる組織だと思います!ご興味持って頂けた方からの「気軽な問い合わせ」をお待ちしています

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