Yu

映画 備忘録

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最近の記事

エンドレス・ワルツ U-NEXT

私たちと、世間とどちらが間違っているのでしょう? 夫が罹っている精神科医に彼女がこんなようなことを訊ねる。 同じことをアインシュタインも問うている。 私も、いつも自分が間違っているように感じる。 戦争を正当化することや、添加物に反対することや、フードロスをかかげることや、全世界を救うことは不可能だと認めることなどに対して、憤りを感じる自分の方が世間とズレていると。 理想を選ぶことは、極論を求めることは、現実を見ることができない異常な状態なのだと。 人にはそれぞれ信念が

    • フレンチアルプスで起きたこと U-NEXT

      原因があって、葛藤が起こる。 その渦中にいる時には逃れる方法がわからない。 特に生死が懸かる様な特殊な経験をした場合、そこから生まれるものは簡単には拭えない。 前に進む唯一の方法が、新たな出来事を起こすことだ。 フレンチアルプスで起きたことは、私達の人生にも起こる。 彼らの抱える問題はスクリーンを通して見れば、ゲレンデの高台から雪崩を眺めるように、スリリングだが安全だ。 それが境界線を越えてこちらに迫ってくるように感じる時、私たちにとって危険を孕んだ問題になる。 過ぎ去

      • ザ・スクエア 思いやりの聖域 U-NEXT

        正直者がバカを見る とは子供の頃よく言われた無性に腹が立つ格言である。が、一理ある。 最近「論破」が流行っている。彼らは正直者だろうか?「言っちゃいけないことはだいたい正しい」と堂々と言えてしまう世の中になった。 正しさを求める彼らにしても敵は多い。それなりにお金を稼いでいるようなので、バカを見てはいないのかもしれない。だとしたら少し小気味良い心持ちである。 さて、論破することによって人類は救われるのだろうか。正しさの共鳴によって安心できるコミュニティができているだろう

        • チタン U-NEXT

          以前舞踏のワークショップで、「既成概念を崩す」というワークをした。 即ち、人間はこうあるもの、身体はこう使うもの、といった当たり前にわかっているようなことを、「もし知らなかったらどうするか」と問うことだ。 冒頭からアレクシアは自動車への愛着を見せる。そこに説明は無い。 そして自らが愛する自動車と一体になる。 愛や衝動にはその発生の原因があると思ってしまうが、実は明確な理由などないのではないか。 説明無しに淡々と描かれるアレクシアの妊娠には、人間とは人間を愛し人間を生む、と

        エンドレス・ワルツ U-NEXT

          『ザ ウルフ オブ ウォールストリート』(U- NEXT)

          資本主義に生きる人間にとっては お金を食う狼になることはひとつの正義である 綺麗ごとが通じない世界で どう戦って行くか 戦うこと自体が正義であるとも言える しかし 大きな権力の流れの中で 挑戦者は王者に食われる運命なのだろうか 挑む者の役割は 戦い続けることそのものである そこには確証は無いが希望がある 正義も悪も無い ただ欲望に忠実に生きる それは命の爆発だ 映画がもつエネルギーは 決して諦めない者だけが持つ 人間の生きんとする力の故ではない

          『ザ ウルフ オブ ウォールストリート』(U- NEXT)

          『ライ麦畑の反逆児』(U-NEXT)

          サリンジャーは何者なのか それを知る必要があるのだろうか 謎に包まれた彼の人生に この映画はひとつの物語を与えている 主人公のサリンジャー自身がフィクションだ ライ麦畑のキャッチャーが反逆児として描かれる まるで彼が生み出した世界の続きを見ているよう リアルとフィクションのはざま そこに読者は自らを探す サリンジャーの小説は 岸をつなぐことばの海だ 現実と映画 小説にとどまらず 私たちは彼に誘われてしまう その魅力は何か言い切れない ことばと空白

          『ライ麦畑の反逆児』(U-NEXT)

          飛べない風船(劇場)

          サーカスの象は こどもの時逃げないように鎖につながれる 大人になってその鎖をちぎれるくらい強くなっても 逃げようとしないらしい 愛する人のために私たちは自らを鎖につなぐことがある それが必要な時がある その鎖を解くことができるのは 自分だけ もういいよ って 思えるのは 誰かと出合った時だったりする 偶然が奇跡に変わる 人生の美しさに 涙してしまう この映画が 誰かの風船を飛ばすかもしれない

          飛べない風船(劇場)

          『由宇子の天秤』(U-NEXT)

          嘘の重みと真実の重み それを量ることは難しい そして非常に苦しい だからどちらかに偏るか、誰かに転化する それが社会であると私たちは思い知っている 由宇子はそれをひとりで背負って行く 「私は誰の味方にもなれません でも光を当てることはできます」 ドキュメンタリー監督である彼女に許されるギリギリの信念 それさえ覆されてしまう現実 私たちはどこに救いを求めれば良いのか 誰を悪者にしたら満足できるのだろうか 愛する者のために生きていく力強さと美しさ その裏に

          『由宇子の天秤』(U-NEXT)