【備忘録】"体験!!なるほどなPAPER "
こんにちははじめまして、くまきちです。
今回は春先から参加させていただいた企画の全行程が無事終了しましたので振り返ろうと思います。
紙と印刷が好きな方、カラー印刷だけでは物足りない方に楽しんでいただける内容になるはずなので、ゆるりとお付き合いください✨
過程に興味ない方は目次から完成の所に飛べるのでそれだけでも是非ご覧ください!!
"体験!!なるほどなPAPER"とは
平和紙業さまの紙のコンシェルジュ紙谷刷太郎さんが企画する紙と印刷を楽しんで新しい発見になるほど!とする体験企画です。
詳しくはこちらの紙谷さんのnoteにて↓
以前、"なるほどなPAPER Vol.1"にてイラストレーター御三方の素敵イラストを紙の専門家と印刷の専門家がタッグを組み、驚きの素材を使って工夫をこらし、おもしろく楽しい紙と印刷の展示がありました。
くまきちも足を運び、自分の中にあったデジタル印刷の概念が覆るほどの衝撃を受けた記憶もいまだに残っています。
そんな贅沢な企画がこの春、公募をされていたので応募しご縁をいただく運びとなったのでした。
わくわくの工場見学
まずは印刷会社で何ができるのか、今回お世話になるショウエイさまにて印刷サンプルの解説や現場の見学、今まで手がけた作品ショールームの案内をしていただきました!
ショウエイさまのHP↓
色んな印刷機があり、特徴も用途も様々。
印刷サンプルと動画を用いて印刷やインクの説明をしていただいた知識をもとに、このポスターはどうやってできているのかと予想し解説をいただきながら印刷について深める時間となりました。
楽しい〜〜〜!!!!
印刷機すごい!!!!
語彙力も失うくらいワクワクが止まりません。
印刷は機械がやってくれますが、その機械に指示を送りイメージ通りに仕上げるためのデータを紙やデザインに合わせて調整するのは専門の知識と経験をもった職人である人だということを改めて感じました。
何をつくろうか〜準備・構想〜
さて、印刷について知識も増えたところで本題です。
通常のCMYKインクの他に特色、白、ニスがあり、それらを駆使しておもしろいものを作るには…と自分の描いた絵を見ながら考えました。
本物っぽい素材のリアルさを出したい
ツヤ、立体感を出したい
とまずは思いました。
ちょうどその頃描いていた絵で、ニスでテカリと輝かせたいモチーフがあり「これだ!」となったのがこちらのパンケーキ…のはちみつ。
テカリとさせるしかないでしょう
はちみつをテカテカにするなら手前にある目玉焼きにもリアルさが欲しい…
いただいたサンプルを繰り返し見て、たまごをホワイトで立体的にしよう!と思い至ったわけです。
じゃあついでにベーコンも少し強調させとこうかな。
そして仕上がった仕様書
そして紙については上記の仕様書をお送りした後に紙谷さんチョイスの紙のご提案をいただきました。
あまりに素敵でイラストにぴったりなご提案に、全てご提案いただいた紙でテスト印刷しようかと思いましたが自分の選択も尊重して以下の3種を選びました。
・グラフィーハンプF 130㎏
・コートマリアン エグシェル 180㎏
・新草木染ハーブ ホップ 130㎏
どれも素敵な紙ですね!!
そしてもう一つの作品について。
事前にいただいた平和紙業さんの紙のサンプル帳を見て、キラキラの光沢がある紙を使ってキラキラしたい!という個人的なキラキラ欲を満たすにはと頭をひねりました。
その結果…
寿司ネタの魚の光沢をパール紙に委ねてみよう
ということで過去にポストカードにしたこともあるスシネコのデータを使うことにしました。
新たな制作の余裕もなかったので…
仕様書については簡潔に
「紙のパール感とニスで寿司ネタを光らせてリアルに見せたい」
ととてもシンプルなもの。
テスト印刷では3種の紙を試すことができるので、電灯をつけて明るくした部屋で紙のサンプル帳を動かしながらより魚らしい光り方をするパール紙を探しました。楽しい。
今思えばパール紙でなくとも、テカテカギンギンに反射するレインボーホログラムの紙でも白インクをかましつつ工夫次第で上手く表現できたかもしれませんね。
そして選んだ紙はこちら
・きらびき うす桜 T-100
・OKムーンカラー ライトパープル F-120
・NEW特レーブル 輝き アクアブルー 110㎏
…高価そうな紙を選んじゃいました。
食べ物には暖色系が鉄板ですが、今回はお魚の青光りを出したいためブルー寄りのものを選んでみました。
「きらびき」なんて、私が好きなガサガサした画用紙のような紙なのに煌びやかなのがツボですよね!
このシリーズ、他の色もかわいいのです✨
あとはデータを作って私ができる準備は完了。
ホワイトインクやニス部分はモノクロで作成し、
盛り上げたいところは白インクを重ねるため、白1層目・白2層目…とそれぞれ別レイヤーにしました。
濃度については想像がつかなかったのでおおよその勘で作成し、ショウエイさんには完成イメージをお伝えして調整していただきました。(大感謝)
いざテスト印刷へ!
立ち合いをしたかったため、ショウエイさん、平和紙業さんにスケジュールを調整していただきました。
ありがたい…‼︎
さて、ショウエイさんに到着すると既に2作品各3種の紙で印刷したものがずらりと並んでいました。
パンケーキ
私が用意したデータのスキャン性能にもよりますが、少し赤みが強い印象あるなあ…とお伝え。
すると、特色のオレンジを抜きましょう!
とプリンティングディレクターさんよりご提案いただきました。
その場でデータを調整してくださり再度印刷。
ほんの僅かな差ですが、見事に優しい印象の自然なパンケーキに様変わりしたのです!
特色オレンジを抜いただけで!?と驚きを隠せません。
特色を抜くという発想はさすが印刷のプロですよね。
素人の私は聞いた時に「え、どういうこと?」と理解が追いつきませんでした。
だって特色オレンジ入ってるって思わないじゃん…
その他、目玉焼きのホワイトの盛り具合も紙ごとに変えており、有意義なテスト印刷となりました。
おおよそイメージ通りでしたので、こちらは本番のデータもほぼこのままで行こうとなりました。
スシネコ
予想以上にホワイトインクの隠蔽性が強く出てしまい、ニスに関しても存在感が大きすぎて紙のパール感を生かせておらずもったいない印象でした。
そこで、実験として
①ホワイトインクを抜いて、紙+インクでのパール感の出方を確認
②ニスの種類を、ぷっくりツヤツヤのものから薄めのツヤ感を出す程度のものに変更
これを踏まえて再度印刷。(急遽ご対応くださり感謝です)
そして仕上がった実験印刷!
おおーーー!!!
一同この調整の変化に感嘆の声を上げました。
ホワイトインクを抜いた寿司ネタは見事に紙のパール感を透かして光り、見る角度によってその輝き方も変わるのです!!!
そこに薄いニスが重なり、自然なツヤが浮き出ていました。
その印象の変化には私だけでなく紙谷さんも興味津々で、紙を手に持ち傾けながら誰よりもじっくり見比べており、紙と印刷が本当にお好きで作品一つ一つに向き合ってくださる情熱のある方なんだなと感じました。
なるほどなPAPERVol.1でも、デジタルで美麗な絵を描く方ばかりなので、アナログのゆるい絵を描く私は今回参加することに「お門違いでは…」と不安もありましたが、こうして真剣に向き合ってくださって立派に印刷してくださり、それも杞憂に終わるのでした。
さて、ワクワクの気持ちのままテスト印刷は終了。
最後にそれぞれの方向性を共有し、終わりとなりました。
次はいよいよ本番印刷…!!!
因みに紙谷さんがまとめてくださったnote記事もあります。
こちらからどうぞ↓
本番印刷に向けての修正
パンケーキに関しては、ホワイトインクの盛り具合と紙の決定をしただけでデータの修正はしませんでした。
一方スシネコのデータはテスト印刷の反省を踏まえてデータを修正しました。
寿司ネタ部分のホワイトを抜く
シャリのホワイトの盛り上げがしっかりしているため、より細かい線で米粒を表現できるよう加筆
ニス部分の一部に"抜き"を入れて凹凸が出るようにする(テスト印刷時も抜きを入れてはいたが、分かりづらかったのでよりはっきりと抜いてみる)
わさびの立体感をより出すためにホワイトで盛り上がるよう点描を増やす
背景に入れていた薄いホワイトの模様の変更
というようにテスト印刷時のデータよりも細かい線を増やしました。
テスト印刷のニス部分を触って触って触って、手触りの凹凸がどのくらい分かるのか、ベタ塗りとどう違うか、見た目に影響は…など観察しました。
とにかく触った時にただ盛り上がってるだけじゃおもしろくないなと思い、どの部分に手触りが欲しいかを考えてデータを修正していきました。
ニスの手触りやホワイトの厚み、質感を実際に見てから気付いたことなのでテスト印刷の意義を再確認しました。
そしてこれは興味本位というか実験というか、背景は紙そのものが見えているわけではなく、テクスチャーを入れてみました。
ホワイトインクの濃さにより紙の煌めきがほぼ消えてしまったのですが、角度により見えてくるキラリとした線描はまるで和紙の繊維のよう。
これには紙谷さんも驚かれている様子でした。
それならツヤのある紙を素材感のある紙のように仕立ててみよう!
と新たな野望が芽生えました。
自分が好きな紙をイメージした結果、もわもわっとした霧のかかったようなテクスチャーに変えました。
透け感のある紙のイメージでテスト印刷よりもデータをより透過させましたが、これは勘で作るしかありません。
こんなもんかなと透過させました。
さて、仕上がりはいかに。
最終工程、本番印刷だ!
ドキドキワクワクの本番印刷です!
本番印刷も立ち合いたい!という私の要望に応えてくださいました。
お忙しいなか本当に感謝です!
果たして修正したデータはどう現れてくれるのか…不安も混じりながらショウエイさんへ向かいました。
到着すると既に印刷と裁断を終えた猫たちが待っていました。
前回とほとんど修正のないパンケーキもこうして完成作品として目の当たりにすると、おお…!と思わず感嘆の声が溢れてしまうのは、やはり色んな方の力をお借りしてやっと出来上がったものの重みなのかなと感じました。
自分1人では達することのできない、原画とはまた違う一つの作品なのだと。
一方スシネコ。
こちらは前回から描画を細かくしたり、透過を調整したりしました。
注目すべきは…
寿司ネタの光り方と触り心地
シャリの米粒感
背景に入れた透過テクスチャの見え方
さて、では注目!
実はたまごのハイライトも光ってます!!!
見る角度によってギラリと写真でもわかるほど光ってくれます。
え、すご!!!!!
そして上の写真では背景に少しムラがあるように見えませんか…?
これこそが私が修正を施した透過テクスチャの効果です。
本来ツルリとした表面なのに、こうしてボヤ〜とノイズがかかることにより素材感のあるファンシーペーパーのように見え…ませんでしょうか!?言われないと分からない隠し要素なので内心ニッコリしました。
そして確認すべきはもう一つ、触感。
寿司ネタのニスをベタ塗りではなく、筋ごとにぽこぽこと凹凸ができるように一部削ってあるのですが…
ゆっくり紙を指でなぞってみるとわずかな凹凸を感じます!!!
これも言われないと気づかないかもしれませんが、そういった細かなこだわりを盛り込めたのは嬉しい限りです。
更に米粒。
ホワイトインクで盛り上げているのですが、シャリ全体に粒感を描くことによりお寿司全体の存在感が増したように思いますし、キラリと光る刺し身に負けず劣らず良いバランスになったのではと感じました。
結論、修正したデータは思い通りに実現!
ずっと触って色んな角度から見ていたくなります。
なんてすごいものを作り出してくれてしまったんだ…。
アナログ原画の複製印刷ではなく、れっきとした一つの作品として印刷されたそれは、原画とは違う表現方法でありながらその世界観をより深掘りして更に「触る」という体験価値までも付与されたのでした。
余談ですが…本番印刷ではお伺いしたときには印刷と裁断が終わっていたのですが、事前にお渡ししたデータの中の使用レイヤーが指示と異なっており、再度正しいレイヤー表示で印刷し直していただきました。
そのため、本番印刷を最初から最後まで印刷の様子を見ることができて私としてはちょっぴりラッキーなのでした✨
(二度手間になりすみませんでした…)
こうして無事、作品を作り上げて「体験!!なるほどなPAPER」を終えました。
印刷体験を終えて
私はデザインや印刷の業界にいる人間ではありません。
絵を描き、自身のグッズは所謂通販印刷を利用して1人で完結してきました。
(もちろん印刷所やあらゆる方の力は借りていますが)
メールでのやりとりやご相談をしたことはありましたが、実際に印刷に立ち会ってできたそれを見てその場で意見交換を交わしながら作品を作り上げることは初めての体験でした。
知識と経験の乏しい1人ではなかなかできない制作の仕方だと思います。
印刷機のことも、紙の見本帳があんなに分厚いことも、人の協力を得て作ることの楽しさも、初めて知ることがたくさんありました。
次はこういうものを作りたい、展示して見てほしい、もっとこうしても面白かったかも、などワクワクが止まらず、紙谷さんやショウエイさんのご担当さんとも話が盛り上がったのも楽しかったですね。
熱い気持ちでモノづくりをする人ってなんておもしろいんだと、尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。
余談ですが、紙谷さんはとてもお褒め上手で、いつも作品について嬉しいお言葉をいただき私の自己肯定感が爆上がりしていました。
良いところを見つけてくださるのも、作品作りへの熱い想いや紙が大好きな気持ちがあるからこそなんだなあと感じました。
印刷加工は奥が深く難しいこともありますが、こうしてサポートをいただきながら制作ができた経験は私のなかで大きな意味をもつこととなるでしょう。
また何かつくりたいなあ。
長い備忘録となりましたが少しでもお楽しみいただき、何か参考になりましたら幸いです。
ありがとうございました!
完成作品フォトギャラリー
いかがでしたでしょうか?
なかなか写真では伝わりづらいところもあるのが悔しいところ。
最後までお付き合いありがとうございました!
やる気と元気がアップします。 よろしくおねがいします(^^)/