テニミュ 4th 青学vs氷帝公演 観劇感想

タイトル通りです。
ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs氷帝公演 観劇して参りましたので、思ったことをつらつらと書き流そうと思います。

思ったことを言っているだけなので批判しているつもりはありませんが、そう捉えられたら静かにこの記事を閉じてください。不快な思いをしてまで読むものではないです。
主に自分が「テニスの王子様」という作品をどう捉えていたか・私はなぜミュージカルが好きなのかということを整理するために書いています。



①セット

ベンチのセットが大幅に変わりましたね!!
以前と比べるとものすごく見やすくなった!!!
ベンチがデカい意味ありますか? という感情がずっとあったのと、舞台の奥にできる死角が増えすぎるのと、機動性が悪すぎるという面があったので、多少解消されて良かったです。
ルド吹の感想でも言いましたが、メインは試合だと思っているので……
物理的にステージの大半をデカいベンチに取られるのが好みではなかったのと、シンプルに試合が見やすくなって良かったです。

②キャストさん


キャストさんたちは初日観劇時点でも全体的にレベルが高いなと感じました。なんというか、初日だな〜って感じの子がいなかった印象です。

個人名で挙げさせて頂きますと、まずは高橋怜也くん。素晴らしかったです。
歌唱力が安定しているのはもちろん、セカステやレボライの時と表情や姿勢、歩き方、発声、台詞回しが変わっていて、良い意味でとても驚きました。セカステ擦りまくっていたので、その時と比べると全然違うじゃん!!! って印象がとても強かったです。
3年生=中学テニス界での最高学年であること、200名もの氷帝部員のトップに立つ部長であること、無印の跡部様だ〜〜!! と感じさせてくれる振る舞いでした。
それまで創り上げてきたものもありながら、『新テニではなく無印である』ことが観客側まで伝わってくるのは感嘆の一言に尽きますね。

歌唱力は言わずもがな。大阪公演最後2日間の力強さが半端なかったです。あの歌声を浴びていると高橋怜也だからこそできた跡部景吾だ……って一番実感できますね。もう多くは語りません。現地で聴くべきだと思います。


※追記 複数回入っていろんな角度から観てましたが、どこからみても完全に無印の跡部景吾の背格好でビビりました。このシルエット原作で見たことある!!! という感覚がすごい。追ってて飽きない。

それから今牧輝琉くんのリョーマが相変わらず素晴らしい。
テンションの持っていき方がずば抜けて良いと思います。日吉戦では、それまでの先輩たちの試合を見て、最後にS1の試合を受けて、青学入学後〜関東氷帝の試合で見たことのないテンション……ベストなテンションになる、っていうのがストーリーの流れとしてあるので、今牧くんの試合におけるパワーの放出具合がとっても大好きです。
原作でもここのリョーマって読者にとってかなり印象深いんじゃないかと思っているので、隙なくテニスに向かってギラギラしてて欲しい……という願望がありましたが、最早そんな思惑なんて吹っ飛ばしてくれました。何も悪いところがない。
立川でもとてもいいなと感じましたが、これから大楽に向けてもっともっと上がっていくと思われるので、期待してしまいますね。

あとはかなり細かいところまで演じてくれている印象です。ランキング戦のデータは嘘をつかない曲と、手塚ゾーンの部分と、白鯨の曲で先輩の面々を見つめるギラギラした瞳の今牧くん、めちゃくちゃリョーマ。今牧くんも追ってて楽しいよ〜〜目が足りないよ〜〜〜!!

そして山田健登くん。彼の手塚国光は可愛らしいお顔に反して真面目で安定感があるなと思っていたのですが、S1の気迫が凄く感じられて、少し印象が変わりました。
今書いている時点で私は立川最初の3公演しか観劇していないのですが、既に「この試合で死ぬんか?!」ってくらいの力強さと執念を感じました。原作においても「これ以上やったら二度とテニスができなくなるかもしれない」という極限状態ですしね。
それにしてもやっぱり、立川でこれなら大楽はどうなるのか……。楽しみなのはもちろんですが、少し恐ろしくもあります。
大阪でもめちゃめちゃヤバかったです(語彙力)。本当に言い表せないのが申し訳ない……ガチで「あの試合の手塚国光」って感じなんです。伝われ。


それから、S3のお二人、大友海くんと栗原樹くんが素晴らしかったです。トータルで考えると今回一番好きな試合かもしれない。
中学最後、タカさんにとって生涯で最後のテニスの大会で、とにかく勝ちたい! 全国へ行きたい! 負けるわけにはいかない! という純粋で強い気持ちが全開で伝わってきたのと、樺地くんの「跡部さんのために」という心の芯の強さ。

学生の部活の「これに負けたら人生の終わり」ってくらいの勢い、何なんですかね。大人になったらそんなわけないって思っちゃうんですけど、当時は本当にそのくらいの熱量を持ってやれちゃいますからね。私たちが失ってしまったものですよ……だから惹かれる。

樺地くんってこの頃出ている情報だと跡部様の従順なしもべみたいな印象しか抱けないと思うんですけど、一本ぶっとい芯があるっていうのは登場時から変わっていなくて、それを表現するには一切無駄な情報を表に出してはいけない気がします。お若いので舞台上で色々やりたい気持ちはあるでしょうに、ストイックでキャラクターに寄り添ってくれているなと。

あとはもう完全に個人的な感情なんですけど、新テニミュセカステのあのD2で跡部様を守ろうとした(守るというのも適切な表現か分かりませんが)樺地くんは……この時から変わってないんだなって……(突然咽び泣くオタク)

純粋な心の持ち主同士のパワー勝負。シンプルながら全開な試合に心打たれました。


総じて芸達者で器用なキャストさんが多い印象でしたね。複数回入っていくうちに一人一人良いところ発見できましたし、みんなもう大好きです。今挙げなかった方々についても、お一人ずつ好きなところ語れます。
公演数を重ねていくにつれ気持ちも乗ってくると思うので、大楽に向けてとても期待が持てますね。


ここから違和感を覚えた部分も書いていきます。

③感情の流れ

D2〜S2について


D2, D1, S3 については「こういう出来事があったからこういう気持ちで試合に臨んでいます」というのがわかりやすいので、ストーリーがスッと入ってきました。

D2は向日・忍足それぞれのキャラを示す曲で強さを見せて、青学が劣勢になるも、菊丸が大石の言葉を思い出して再起。勝ち確曲らしさ満点のトリプルダブルス(この言葉めっちゃ好き。そしてこの曲の間の向日忍足ペアみてて泣く)で見事青学が勝利する。かなり展開がリズミカルでわかりやすい。転換点に歌が入っているので、話を追いやすいですね。

D1は終盤の楽曲との相乗効果がとても良いなと思いました。短いフレーズを4人のプレイヤーがどんどん歌っていくところ、好きです。それぞれのダブルスの関係性を作り上げた過去が公演の中で描かれているので、観ている側としてもどちらのダブルスにも感情移入しやすいですし、キャストさんもかなり思い入れ深くやってくれているのが伝わってきます。シンプルにこの4人の圧、めちゃめちゃすごいですよ。

S3は先述した通りです。パワー勝負って生舞台の醍醐味を感じられますよね。本当にお二人の思いが伝わってきて、ここでも涙が溢れます。(情緒不安定)

S2は不二先輩の底知れなさを表現するためにもジローを圧倒していくので、感情の流れは少なく(兄弟間の気持ちはありますが)、しっかりと観ることができました。横山くんのジロー、とっても自然で全く違和感ないんですよね。台詞の流し方も良い。持田くんの不二先輩はラケット捌きが美しくてつい目で追ってしまいます。

S1


脚本家さんと解釈が違うなって感じた部分です。

端的に言うと、『試合に懸ける想いの描写』が物足りなく感じました。
手塚の過去の描写はあれど、柱襲名の一件はあくまで試合への意気込みの中の一要素であり、他の要素も含めてやっと「なぜ手塚が己の身を削ってまで試合に臨むのか」というのが見えてきます。それを全て表現するのは不可能ですし、私にもまだ見えてない部分はあるでしょうし、そもそも原作中のこの試合でも、全て細かく描写されている訳じゃないと思います。ただ、そこに手塚の心があることは事実です。
直接的に描かれていない(抽象的な)部分や雰囲気をどう表現していくのか。それを補完できるのが演出や音楽だと思います。とにかく熱さが足りない。手塚はどちらかと言うと寡黙な部類に入るとは思いますし、実際台詞も少ないですが、彼の表情を見せたり振る舞いを見せたりする間(ま)を作るとか、一定時間一人だけ照明当て続けるとか、ソロ曲で心中を表すだとか(これをやるとまた賛否両論出てきそうですが)、手塚が激痛の中でも跡部に立ち向かう理由をちゃんと感じたかったなぁと……。私の感受性が乏しいと言われればそれまでです。はい。

あとは跡部が「怪我は完治したかもな しかし古傷が疼くのか 俺には見える テニス生命の終わりが」と歌ってますが、原作では「完治したはずの肘を無意識に庇って肩を酷使している」というところまで暴いています。この「無意識に庇う=心のどこかに恐怖がある」という部分がないと、手塚国光という人間の魅力が出ないんじゃないかと思ってしまうんですが……いや私は手塚が最推しって訳じゃないので見当違いだったら申し訳ないんですけど……。というか歌詞だけ追ったらもはや話違ってくるんじゃ……

山田くんはよく響く歌い方をしてくれますし、歌唱力も高いので、せっかくならそれをもっと存分に見たかったなぁ〜〜〜と思ってしまいます。まあこれは個人の願望で構成的な問題抜きの感情なので置いときましょう。

跡部の描写についてもそうです。
私はテニスにわかなので原作でこのお話を読んだことが記憶に新しいのですが、跡部の印象が大きく変わったのがこの試合でした。最初はナルシでヒールっぽいキャラだったのに、手塚の試合における姿勢を受けて、手塚と同じように覚悟を持って戦う……ただの『敵校のボス』であった人物が、『部長と張り合う対等なライバル』という要素が付け足される(立ち位置的に)。あんなに余裕綽々で偉そうにしていたのに、手塚の意気込みを感じ取って、自分もその想いに応えようと、恐らくそれまでやったことがないほどの全力で試合に挑むんですよ。こんな素晴らしくドラマティックな展開なかなかないですよ。

跡部のこの心情の変化が脚本からなかなか読み取りにくいかなと感じました。モノローグが一部カットされていたり……あのモノローグ、初めて読んだとき「うぉおおお〜〜〜!!!」ってなりましたもん。話の流れとしても、「敵のボスである跡部」というキャラが「手塚国光と対峙する一人のテニスプレイヤー」になる転換点だと思うんです。あのモノローグ感じられないと変わり目がないんですよね。

あとは歌詞に「応えてやろう」が複数回出てきている気がするんですけど、原作の「応えよう」と意味違ってきません? モノローグを歌詞に起こす際に多少言い回しが変わるのはわかるんですけど、私にとってこの言葉の違いは致命的のように思えました。このせいで文字だけ追うと跡部がずっと偉そうに見える。繰り返し歌われることで見逃すこともできない。「敵のボス」という椅子から降ろすことができない。

「その理由は何だ」って歌ってますけど、原作で跡部は「青学に懸ける想い」だと自分なりに答え出してますよね。技術的なものを計り損ねて窮地に追い込まれたから後悔してるという展開じゃなく、マインド的な部分の思い違いを理由に試合に対する意気込みをそれまでと変化させようとするなんて……めちゃめちゃ熱いじゃん……。

あとはもう「だから俺も最高の力を一球一球に込めよう たとえこのタイブレークがどれ程続いたとしても!」を入れて欲しかった〜〜〜!!!
あの台詞跡部様の気高さが出ていて大好きなので……なぜこの台詞を削れたのか……

あとはもうただひたすらにずっと舞台上が明るすぎる!! 床に緑色を貼り付けているせいもあってか、暗くなる瞬間が少なく感じます。緊迫感が足りない。


高橋くんと山田くんの歌唱力の高さは折り紙つきなので、お二人の気迫を存分に味わうという楽しみ方であれば、もうめちゃめちゃ感動できると思います。ものすごく熱量を持って、全身全霊で臨んでくださっていることは肌で感じられます。複数回観ていくうちに、展開を分かった状態で観ることになっていくために、構成云々の見方よりキャストさんの熱量を感じ取ることに意識を割けるようになりました。しかし、初見の違和感は確実に存在していました。
尺が足りないのも理解できますし、じゃあお前がやってみろよって言われたら難しいと思うので、こんな構成絶対に有り得ない!!! とは申しませんが。

全体的な印象

友人と話していて整理されたんですが、なんというか
「出来事ベースでの人→人の感情」
(こういう出来事があったからこの人はあの人にこういう感情を抱くよね、みたいな感じです)
は丁寧に描かれていて良いなと思うんですけど、
「人→テニス」
(その人物の行動・振る舞いや言葉選びから読み取れる行動原理)
の感情描写が足りないような気がします。

実際に台詞で語られることばかりでもないのでなかなか難しい部分だとは思うんですが、どの部分に曲を置くかとか、このシーンではこのキャラを見せるよう視線誘導するとか、原作における描かれ方やコマのデカさやフォントや集中線なんかで読み取れる部分はある気がしてしまいますね。そしてその部分は演出で抽象的に表現することで、押し付けがましくなく、ある程度受け手側に解釈を投げることはできるかなぁと。


④楽曲

特に氷帝のテーマ曲・青学のテーマ曲はテンションがぶち上がりましたね! どちらもオープニングに相応しい熱い曲で、とてもとても大好きです。特に青学の曲の遺伝子から響いてくるような感覚、何なんですかね?! もう曲の雰囲気だけでバリバリ熱さが伝わってきて、毎回身体までもが熱くなります。


私としてハマらなかったのは、「俺に勝っといて負けんな」の後、手塚が再びコートに立った後の曲。あくまで個人的な意見ですが、イントロから悲劇の曲のように聴こえてしまい、えっ? と思いました。ピアノイントロでしっとり始まる場面なんでしょうか……。

そこにいる選手たち誰一人(人によりますが観ている私たちさえも)手塚のことを可哀想なんて思っていないはずです。跡部が弱点を見抜いてそこを突いて戦うのも卑怯でも何でもないですし、手塚も故障の危険性を覚悟の上で挑んでいる。そこにあるのはお二人の意志と意志です。あのイントロが当てはまっているとは思えません。あのピアノの旋律で表現できる感情はどこにある? 観客側の感情は勝手にこちらで抱いてますんで、お二人の熱さの曲が聴きたかった。それより前の校歌ベースの曲で熱いやつはやったじゃんって感じかもしれませんが、熱い曲なんてなんぼあっても良いですからね!!!
それまでの展開での感情の昂りが一気に削がれてしまい、エモに全振りしたなって印象です。それで感動する方がいらっしゃるのも勿論わかるんですが、私は少年漫画を見たいんだ〜〜!!! と思ってしまいました。

『テニスの王子様』という物語を表現してくれるものを観たいというのも間違っていないんですが、あのキャラクターたちが生きている世界を感情丸ごと感じたいんです。そしてその世界観を表す手段として、ミュージカルは最適解だと思うんです。
ただ単純にストーリーが面白いですしキャラも魅力的なので、2.5次元舞台(ポップカルチャー)をやるにしても適した題材だと思いますがね。

もちろん一個人が抱いた印象です。
でもここで急激にブレーキかけられてシュン……ってなるのが……一番違和感……
お涙誘われなくてもお二人の試合みてれば勝手にこちらは泣いてますんで……気を遣わないでください……


⑤総括


もう長くなりすぎたのでまとめます。

まず、許斐先生が描いた『テニスの王子様』のキャラクターたちって、本当に先生が"命"を吹き込んでくれていて、キャストさんたちにとっても何かきっかけがあればかなり感情移入して演じられる作品だと思います。しかも、若手俳優さんが演じることで中学生たちの刹那的な青さも自然と出てくる。(ある程度年齢を重ねたベテランさんだと、現実世界でいう大人と同じように色々と考えることができますからね。)

せっかくキャストさんたちも原作を読んだりしてキャラクターに寄り添おうとしてくれているので、その部分を増幅させるような作品であって欲しいというのは、ただの一個人の願望なんでしょうか。

舞台である以上、ある程度は多くの観客が共感を伴うように作らないといけないと思うんですけど、私自身国内外問わずグラミュの演出家が手掛けた作品でも「あっこれ解釈違うんだな…」と感じることはままありますので、色々言われているテニミュ4thだからチクチク言っている……という訳ではないです。というか絶賛されている舞台であろうと楽しめないことがあるので、私の感覚がズレているのもあると思います。その自覚があるので「一個人の意見」として書いています。
(断っておきますが別に通ぶっているのではありません。むしろ大多数の他者と同じ感情を抱けないのは孤独なことです。私は普通の人間ですので、このことを悲観しています。)


なぜ個人名を挙げてまでキャストさんを褒めるかと言いますと、今回の公演で最も魅力的だと感じたものの一つがキャストさんたちの力量だからです。
若手俳優さん自体の人口が増えて競争率が上がっているからですかね。



4thはルド吹・関東氷帝と現地で観劇し、俯瞰してみるとなんとなくこういう風な作品を作りたいんだろうな〜というのは見えてきた気がします。その意図を汲めば、楽曲を入れるタイミングも雰囲気も、話の転換のさせ方も、照明の使い方も、曲後に拍手を入れる間がないことも、納得できます。なので4thシーズンのテニミュとしては何もおかしくない。今回違和感を覚えた部分についても、角度を変えれば楽しめることはわかります。

だけどそもそも論として「その表現の仕方は『テニスの王子様』という作品に合っているか」って思ってしまうんですよね。2.5次元作品としては大成功だと思います。楽しいですし、キャストさんたちの魅力も引き出すこともできています。私も観劇するときはキャストさんたちのダンスや歌声や表現すべてを楽しみながら観ています。ただ、それを中心に置いて観劇することは、今まで私がやってこなかったことです。なので違和感なんだと思います。


とにかく長くなってしまいました。
感覚的に捉えたことを言語化することで発見できることもありますし、何より自分が色眼鏡で公演を観ていないか整理することもできますね。(先入観を持って観ることが悪いという訳ではなく、その理由を考えることにつながるので。)

ただ、これを読んでくださった方々におかれましても、自分の感覚を大事にしてほしいです。たとえ周りが拍手をしていないところで拍手しても、逆に多くの人がスタオベしている中自分だけ立たなくても、何もおかしいことはありません。
同調が良きものと思われることが多く、それにより何かとマナーに縛られるこの国ですが、せめて個人の感覚だけでも自由であって欲しいです。



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