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読書録

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ミステリが好き! 自分の読後録と,心に刺さった読書感想をあつめています。三年半かけて「芥川賞ぜんぶ読む」,ひと月一冊は読んでるものの文字おこしが遅々として進まず...。
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きれぎれ、陰の棲みか 芥川賞ぜんぶ

ちょっと大阪もんが読みたくなり、図書館で検索したら、二〇世紀末の芥川賞:122回と123回の受賞者がまさに大阪出身の作者だった。 きれぎれ 投身自⚫︎ の幻影からはじまり、焼そばをケダモノのような格好で食うランパブ出身の妻、画家の友人への妬み、事故死の友人への憐憫など、腐敗と劣等感と嫉妬と軽蔑にまみれた 俺いや僕の、破天荒な日常がヘドロのようにあふれ出た文章。 あーあ。もう。めんどくさいわね。むかつくぅ。おうやるのか、こら。うるせぇんだよ。きぃー。わぁやめろやめろ。うわっ

猛スピードで母は : 芥川賞ぜんぶ

クモガタ・サダノリって知ってる? 20代の頃、使い道が謎だったクモガタ・サダノリこと『雲形定規』。彼の存在をすっかり忘れてたが、この小説中に二度も登場し、しかも1度目は主人公が私と同じく、変な形、何に使うものだろうと不思議がっていた。 サダノリ、元気だった? 彼の名を思い出させてくれて、ありがとう。 ※以下ネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。 結婚するかもしれない、と慎に告げたのは、自力でタイヤ交換できるし、車は猛スピードでかっ飛ばす、むかし漫画家を目指した、シ

家族は痛い。聞かれたくも触れられたくもない。一方,汚れたアカをほじくり出して臭いごと差出してみたり。崩壊家族が映画撮影に再会するが,それぞれ役割を演じる中, チクリと刺さった棘がぬけない,そんな物語。 私的な断片さらけ出す著者,苦手だが避けられない。116回 芥川賞 41/113

大学サークルの先輩と草むしりをしながら,とりとめないよもやま話。30代男女の再会だが,どきどき展開はなく,哲学やイルカ知能についてビール片手に語り合う。いいなぁこんな関係。たった数時間の濃密な時間,なんでもない日常こそ貴重なんだな。133回 40/113冊 #この人の閾(いき

スナックの女たち三人を連れての沖縄離島への厄落としの旅。正吉は亡き父の風葬に心を遺し、島唯一の民宿に泊まり、豚にあたった女の下痢や懺悔の言葉を自ら引きうける。「試練がないと悟りにいたらない」「人間にすくうのは人間」深い業が透けてみえる。 #豚の報い #芥川賞 38/113冊

まさかナチとともに消滅したはずの彫像が!読みだしたら止まらない。著者は実在の美術探偵:ノンフィクならではの怪美術商や秘密警察やKGBや ゴシップ記者が山盛りで,欧州を駆け巡る。ダン・ブラウンの欧州美術小説ファンには特におすすめ。 #ヒトラーの馬を奪還せよ

三千円の使いかた、と、もう別れてもいいですか

同世代の主婦の間で話題になっていた「もう別れてもいいですか」。 図書館予約本を入手したとき、「三千円…」のほうが目につき、文庫本で通勤途中にちょうど軽かったので先に読むことにした。すると、巻末の解説を書いているのは垣谷美雨さんではないか。なんだかシンクロ?数珠つなぎを感じてしまったわ。 ※以下ネタバレを含みます 三千円の使い方 書き出しの二行に、やられた。 たしかに、自分自身の「三千円の使い方」を考えながら読み進んでしまう。 第一話の美帆、第三話はその姉の真帆、第五話は

次期代表を選ぶ選挙戦の攻防。藍陣営vs黄陣営,高額接待の暴露やパワハラ音声の流出など,社内は票田集めに四苦八苦。次点の緑陣営はなぜかうどん好きが多く,うどんを食べながら,いかに中立を保つか作戦に苦笑させられる。実生活にあるあるネタ満載 100分ライトノベル #うどん陣営の受難

#瀬戸内寂聴 さんの随筆を読破。雑誌などのコラムは読んだことはあるが,書籍は初。交友録でもあり,追悼集でもある本書で,寂聴さんの人となりを知り,業深く愛し業深く生きたひとだったのだな,と敬う。道を極め筆をおかれた。 さて,読後48時間以内に書く“ 新年の誓いはビリビリ破られた。

#abさんご 詩編のような幻想のような、美しい日本語と”かな“つかいゆえに、私には難解で入りこめなかった。同時に読める60年前の「毬」は幼女タミエの心境がせまってきて、とても良かった。 第148回芥川賞 黒田夏子  37/113冊

かがみの孤城 上/下

それぞれの理由で不登校の七人の中学生たち。ハイティーンになる前の反抗期、学校にひとりも味方がおらず居場所がないのに、義務教育中だから学校を辞められない。では、どこに救いを求めたらいいのだろう。 そこは、鏡を通り抜けた先のお城だった。 以下、前編の中ほどから疑問がわくので、ヒント代わりの覚え書き 疑問1 リオン 7人のうち、6人は日本の”同じ"中学生。 リオンだけは同じ中学に進学するはずだったが、サッカー留学でハワイに進学しており、他の6名と状況が違う。なぜ7人のうちの

おいしいごはんが食べられますように:芥川賞ぜんぶ

日本人のInstagramやfacebookは食べ物であふれている。最近はどうもおいしいごはんを食べることより、グルメな店を見つけ発信するのが目的のひとが増えたようだやれやれ、ホンマ困った傾向だ。 あらすじ そこそこ仕事ができて、うまく立ち回れる男性社員・二谷。ただし食にこだわりが無くカップ麺が好き。 手づくり料理やケーキつくりに精を出し、職場ではかなさ・健気さを醸しだす女性社員・芦川。 体調不良で休む人の分まで頑張ってしまうものの、誤解を受けやすく女子からハブられてしま

夜が明ける

「日本はすばらしい。町はきれいでゴミは落ちていないし,ホームレスはひとりもいないし,何より治安が良くて平和」と先週、L.A.出身男性から称賛された。 ほんまにそう⁈ 外国人に見えないところで、無理しちゃてない?建前ばかり美化してるんちゃう。 そんな外からみた日本と実際とのギャップを真正面から書いてくれた西 加奈子さん。読了後、まだしばらく主人公ふたりの想いが抜けずに物語を引きずってしまう。 あらすじ 俺は、高校のクラスで北欧のアキ・マケネケンに似た男と友達になり,「

三兄弟と、数字の3

ちょっとした集まりで、大勢の人前で自己紹介時におのおの 「好きな数字は何ですか」 そう訊かれるというのがあった。なるほど、会話の糸口にちょうどいい。 すると、ほぼ9割の人が自分の誕生日または誕生月を答える結果となった。  名前:だれそれ  所属:なになに  好きな数字:7 7月生まれだから と、いうぐあいに大体のひとは、自分の好きな数字・ラッキー数字は自分の誕生日または誕生月と思い込んでいるというわけ。 で、ウチのばあいは『3』なので、三人にまつわる物語にけっこうハマってしま