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ひとつだけ記事を残すなら

「気が付いたら間違いなく1200本以上書いている」TSがほぼ毎日のように短い小説を書いている本数の多さに気づく。この時に「もしどれかひとつだけの記事を残すのならどれだ」と頭に浮かぶ。
 しばらく考えたが、「とでもじゃないが選べない」と思った。

 ところが後ろから声が聞こえる。「選ばないとダメな時にそんな答えではどうかな」と。TSは振り返ったが誰もいない。
「気のせいか、最近疲れているからな」と思ったら、今度は目の前のパソコンで勝手に文字が出てきている。そこにはこう書いてあった。

「私はSTと申す。いま1200本以上の記事の中でひとつだけ選べないのか」「これは、私に呼び掛けているのか」思わず口に出す。またカーソルが勝手に動いてこう書きだした。
「そうだ。選べないという選択肢が物理出来に不可能ならどうする?」TSは考えた。「うーむ、言われてみてはそうだ。だとしても今からひとつひとつ読みながら、選ぶのはちょっとな」

 TSは、今ごろ余計な事を考えてしまったことを後悔している。それでも「うーん印象に残るものを50くらいなら選べるかも」と唸るようにつぶやく。「ダメだ」と、STが即否定。
「ひとつだけ選べと言っているのに50も選んでどうする。50選んだとしてもそこからひとつを選べ」と書かれた。

「無理だよ、そんなの」TSは投げやりになり、立ち上がる。そのまま隣の部屋に行こうとしたら、ふと頭に浮かぶことがあり、立ち止まった」
「まてよ、そうだこの記事にしよう。うん、どうせ選べないなら、それがいい」と思って戻る。戻った時にはSTが反応していた。「ほう、なかなか面白い。投げ槍は良くないと思うが、これを残すか」

「確かに投げやりが理由じゃあダメだね。でもこれがいいという理由は何だろう」TSは考えてみた。選びたくてもひとつに絞れないところからこの記事を選んだ。だけどそれが投げやりではダメならどんな理由があるのだろう」腕を組みながら数分間の沈黙が流れた。

「あ、そうだ」TSはひらめく。TSは平成の終わりごろから記事を書いていて、当然ネット上で表示されていることに着目した。「電子データは究極的に0と1の羅列に過ぎない文章だ。それを」とまで言ったが、ここで頭が混乱する。「私はさっきから何言ってんだ?」と。

 ここでSTが「余計な事を考えすぎだ。例えば石で彫られていない文字は時間が経てば消えやすい。ならばいずれ消える過去より今書いている記事がもっとも大事。ひとつの記事を残すのなら今の記事で十分だろうな」と。
 TSは「その通りだ」と思い、ひとつ残すならこれに決めた。

 と同時にSTは、もうひとり人の自分だと気付く。

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