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伝えたい文字の色 ~セピア~

「セピア色」その響きから不思議な気がする。だけどいろんな色がある中で、私はセピア色が好きだった。なんといってもレトロでどこかに影を潜ませたこの色が好き。最近は撮影した画像をセピア色に変換できる機能があるから、意図的にセピア色にして楽しむことがある。

「さあ、今日も画像をセピア色に変換しよう」私はある画像を見つけると、いつものようにセピア色に変換できるアプリを使った。

「あれ?」いつものように変換したつもりだが、変換後の画像を見て私は目を見開く。
「いつもと違う」私は返還した画像をもう一度見た。いつもなら私の好きなセピアの感覚が変換前のカラーの画像とはがらりと雰囲気が変わって見える。それだけだった。けどこの画像は違う。どう違うのか私にはわからない。なんとなくだけどそう感じているのはテレパシーのようなものか。
「なんだろう...…」私はもう一度その画像をじっくりと見る。そして変換前のカラーの画像と見比べた。

「うん、あれ?」2,3回見比べてみるとセピア色のほうの画像にはカラーには映っていない輪郭が見える。「え、」私は一瞬鳥肌が立つ。もしかして心霊的ななにかではと。だがその輪郭がはっきりしていくとそんな恐怖心が自然と和らいでいく。「ちがう、そんなんじゃない」私はそう思った。
見ると人の顔に見える。セピア色した人が画像の正面にいた。
「何、私に何か伝えようとしているの?」別に画像からなにも聞こえない。けれど私は直感でそんな気がした。
「え、文字?」私はその画像のセピア色した人が文字を伝えたいと言っているような気がする。

 私は無心になった。この目の前の対象が何を伝えたいのか...…。余計なことを考えずに私は無になる。画像からのテレパシーが伝わるような気がした。私は頭の中に何かが浮かんだ。私は無意識に紙に何かを書いた。

「あ!」次の瞬間、意識を戻す。眠っていたのではなく、知らぬ間に気を失っていたようだ。我に戻ると目の前には、先ほどセピア色に変換したばかりの画像がある。「あ、これ」私はもう一度その画像を見たが、もう人影は映っていない。そればかりか、いつも通りのセピア色の風景以外の何物でもなかった。
「いったいあれは?」私は手元にある紙を見る。そこには文字が刻んでいた。一見何を書いているのかわからない殴り書きのような文字。だけど私は確信した。このセピア色の世界に映し出されたある人が伝えたかった意味を。

(本文1000文字)

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