スイスからナミビアへはチューリッヒから南アフリカのヨハネスブルグを経由して首都ウィントフックに向かう。
飛行機の出発は夜11時前。出発当日にバタバタしすぎる事もなく、ゆっくり過ごせて快適！夫も2時頃まで仕事をし、家族全員すっきりシャワーも浴びて、最後の必需品をスーツケースに詰めていた頃、スイス航空からメールがきた。

「ニジェール内政不安定により、上空飛行禁止となり急遽、航路の変更となりました。飛行時間は２時間の追加が予想されます。」

えぇーっ！！２時間も遅れるとヨハネスブルグで予定している自転車ツアーに行けない！！！

私達家族の趣味はマウンテンバイク。
ナミビアで大自然の中マウンテンバイクで走りたいと言うリクエストと、子供達に地元の人達の生の生活も自分の目で見て欲しいという思いから黒人居住区ツアーもリクエストしていた。
ナミビアの黒人居住区は規模も小さく、先進国の人達が想像するのとはちょっと違うらしい。それならと、（大自然でマウンテンバイク！から趣向は大分変わったけれど…）経由地のヨハネスブルグで南アフリカ最大の黒人居住区・ソウェト自転車ツアーに参加することにした。

このツアーの為にわざわざ空港に一泊するのに、飛行機が遅れて参加出来ないなんて、出発前からテンションが下がる。
急いで旅行会社に連絡すると、現地とすぐにコンタクトを取ってくれて、ピックアップ時間を２時間ずらすので大丈夫！と返事がきた！
一瞬心配したけれど、これで不安なく飛行機に乗れる。

コロナ明けのバカンスシーズンで混み合う空港に余裕を持って到着。夜便なので混雑のピークも過ぎ、思ったよりもスムーズに進む。
ここ数週間の準備ストレスを乗り越えて、あぁーワクワクしてきたーーー！！！
飛行機に乗る前にこんなにワクワクするのは本当に久しぶり。それこそ初のアフリカ旅行に向かった2009年以来じゃない！？

ワクワクドキドキ、そして旅は始まったばかりなのに疲れてもいる。でも飛行機に乗ってしまえば後は寝るだけ。１２時間半のフライトも苦にならない。日本に向かうよりフライトは短いし、座っているだけで食事は運ばれてくるし、好きな時に映画を見て、寝るだけなんて何て贅沢！
時々フライトレポートを見て、今、ちょうどナミビア上空を飛んでるね！と話しながら、ただただ広がる茶色の大地を窓から眺めて、あぁ本当にアフリカが迫ってきた～と感じる。

予告通り2時間遅れで11時にヨハネスブルグ、オリバー・タンボ国際空港に着陸。さっさと入国手続きを済ませてホテルに向かい、自転車ツアーのピックアップに備えねば！と先を急ぐも、空港内の表示もあまりなく、とりあえず沢山人が並んでいる所が入国審査だろうと並んでみる。
ゆーーーーっくりと進む列に、あまりやる気のない入国審査官、どんよりした空気、南部アフリカのハブ空港なのに free WiFi も繋がらない。
日本なら表示はもちろん、空港係員が所々で案内してくれるのに…　こういう時に日本の素晴らしさを実感する。

無事入国し、表示された番号とは違うターンテーブルからスーツケースを見つけ出し、空港ロビーに出た。
到着エリアとは違って明るく、気分も上がってくる。反アパルトヘイト闘争の英雄でネルソン・マンデラの盟友オリバー・タンボの像を指差して子供達に説明しながら、ホテルを探す。あんまりふらふらしている時間はないし、何よりここは世界最悪の犯罪都市ヨハネスブルグの空港！気を引き締めねば！！

ヨーロッパからアフリカに着くと暑そうだけど、正反対。南半球は冬で、しかもヨハネスブルグは標高1700m！日差しはきついけれど、空気はひんやりしている。ホテルに着いて、自転車ツアー用に荷物をさっさとまとめ直して、急いでレセプションに向かう。約束の1時より5分くらい前には着いた。

ソファに陣取ってまだかな～まだかな～と迎えを待つ。
5分経過　ー　まぁこのくらいは誰でも遅れる事あるよね。
10分経過　ー　もうすぐ来るはずだから、イライラせずに！
15分経過　ー　アフリカだし、このくらいの遅れは当たり前…！？
20分経過　ー　怪しい…怪しい…もしかして…

30分待っても誰も来ず、ホテルスタッフに事情を話して電話を掛けてもらう。

誰も出ない…

土曜日だから誰も電話に出ないのかもねと言われ、成す術なし。

このツアーの為だけにわざわざヨハネスブルグに一泊するのに…
呆れと落胆と怒りに駆られながらも、スタッフに空港周辺でできる事はないか聞いてみる。
「ここは街中からかなり離れているから何もないよ。」

送迎付きのツアーに参加するだけなので、ヨハネスブルグについては全くリサーチしていなかった。
今更、何処に行くか検討した所でもう既に1時半をまわっている。7月のヨハネスブルグの日の入りは5時半頃。南アフリカ旅行の鉄則は、身の安全の為に暗くなる前に必ずホテルに戻ること。
落胆ムードの中、もう一度モチベーションを上げて代案を検討して動き出す程の元気と時間はなかった。
仕方なく空港に戻って昼食を取り、これからの旅行必需品を買い揃える事にした。

あぁ悔しい、悔しい、悔しい…
気持ちを切り替えようと思うけれど、悔しくてやり切れない…
そんな中、長男は「僕は南アフリカに来れたから良かった～」と言い出す。
こんな空港だけで何も見てないのに、来たことにならへんやろ！と皆で突っ込んでも、「空港の外に出たもん！」と返す。
ずっとウジウジしている私より、ポジティブで切り替えが出来て、ある意味、才能があるなと思った。皆で暗く刺々しいムードになるよりは、誰か一人でもヨハネスブルグ滞在を楽しんでくれて良かったと思う事にする。

このソウェト自転車ツアー、実は私はかなりビビっていた。
ガイド付きツアーとは言え、世界最悪の凶悪犯罪都市ヨハネスブルグの黒人居住区に観光客がのこのこと行って本当に大丈夫なのか？しかも子連れで！？自分からリクエストしておきながら、出発が近くなるにつれて不安が大きくなっていった。
だってgoogleでヨハネスブルグと入力すると、「犯罪、治安、危険」といったキーワードが自動で出てくるし、You Tube動画でも「この辺りはこんな風に動画を撮りながら歩くのは危険です。」とか紹介されている。

実際14年前の新婚旅行時、ケープタウンで日の入り前にホテルに向かって歩いていると、ヨハネスブルグから来たという黒人女性二人が「行き先が別れる所まで一緒に歩かせて！」と駆け寄って来た。
彼女達曰く、この時間帯にヨハネスブルグで女性だけで歩くのはかなり危ないらしい。ヨハネスブルグ＝超危険というのが私の頭に刻み込まれた。

アパルトヘイト政策が敷かれていた南アフリカの黒人居住区というとスラム街の様相を呈するのかと思いそうだけれど、大都市ヨハネスブルグの一角を占めるソウェトは、トタンの掘建て小屋が並ぶエリアだけではなく、富裕層エリア、中流エリア、遊園地やサッカースタジアムもある。
ネルソン・マンデラが潜伏生活に入る前に住んでいた家も博物館として残っていて、ここに行くのが楽しみだったのに！！

とにかく、ソウェトは先進国に住む私達には想像のつかない世界。自分の目で見れたらどれだけ刺激的だっただろう…
私があまりに心配し過ぎたせいで、行かない現実を引き寄せてしまったかも…！？という思いが巡る。いやいや、これは今回は行かない方がいいよと言うサイン！だと自分を納得させる。

空港では虫除けスプレーと虫除けキャンドル、南部アフリカ用変換プラグに加えて、ラグビー南アフリカのスプリングボックスTシャツ、サファリハット、そして子供達に南アフリカに来た記念にマグネットをせがまれ、余りにうるさいので買うハメに。
結局、ヨハネスブルグでは特に何も出来ず、空港価格でお金を使うだけで終わってしまった。

大好きなナミビアを思いながら書いています。スキ♡やフォローをしてもらえると、とても励みになります！ありがとうございます!!