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【購読無料】負けを薄めるのは、大義名分と解散総選挙だけ

携帯に表示されたのは、つい半年前にやっと政策秘書に昇格した秘書の名前だった。
「鈴鹿さん、申し訳ありません!火曜日のお約束、日程を変更して頂けますか。ランチブリーフィングはうちの代議士からお願いしていたのに、本当に申し訳ないです!」
理由を聞くと地元で訪問予定の先がリスケになり、私にアポを取っていたその時間でなければ会えないといわれた、と。

「ああ、私なら大丈夫ですよ。選挙近そうですもんね」
「そうなんです、うちの代議士も予算が上がったらもう目の色が変わって!先週から地元最優先なんですよ」

今年は選挙年ですし、いや、先生はご熱心で、選挙区民にも良いことですから。

日程の変更を確認して、電話は切れた。
電話の向うで直角にお辞儀をしている秘書の姿が目に浮かんだ。

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天下分け目の4月が始まる

3月末で予算委員会が終わると、自民党3期生までの衆議院議員は選挙が気になって仕方がありません。これまで安倍政権下では、「自民党」であれば選挙は勝ってきました。でも今回ばかりは違うようです。

新型コロナウィルスの対策の遅れと、それに伴う国民の暮らしと心の疲弊。1年リスケした五輪が本当に開催できるのか。開催できたとしても、安心安全な開催なんて本当にできるのか。不安要素は尽きません。

そもそも、オリンピックさえなければコロナ対策にもっと集中できていたのではないかと思うと、残念で仕方ありません。菅総理が後に引けないのは、「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として」オリンピックを実現させるとした施政方針演説の自分の言葉。これが今になって菅政権の足元をグラつかせているのです。

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あと始末 

菅総理が総理でいられるのか、1年弱の「安倍政権あと始末内閣」で終わるのかは、この4月25日に投開票の3つの選挙結果次第といわれています。

なぜかというと、この補欠選挙は、どれも自民党のオウンゴールで失点したあと始末選挙だからです。

まず、一件目、衆議院北海道2区は、贈収賄で逮捕された吉川貴盛元農水大臣の空いた椅子の選挙。
そして、二件目は参議院広島選挙区。およそ100人に合計2900万円を提供したとされる河合案里の一件です。
最後三件目は、参議院長野選挙区。これは新型コロナウィルスに感染し死去した立憲民主党議員の弔い合戦。

この3つの選挙、どこをどう眺めても「自民党が勝つ」要素は見当たりません。

この3つの補欠選挙。最悪の結果を避けることは難しい。となると、手っ取り早いのはその傷を薄めることです。つまり、解散総選挙をして全体としては勝ったという実績を残すしかないのです。

どちらにしても、今年の9月30日に、菅総理の自民党総裁の任期は切れ、10月21日には、衆議院議員の任期が満了します。

野党が戦いを挑んでこなかったとしても、身内の誰かに足を引っ張られるくらいなら、解散に打って出るのは立場から当然のことなのでしょう。
公明党が反対しようがなんであろうが、バーターになり得る条件(例えば、選挙区をひとつ譲るとか)を提示しさえすれば、どうにかなるのかもしれません。

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解散するための伝家の宝刀「大義名分」の作り方

解散をするには、それ相当の理由が必要です。いわゆる「大義名分」
これは意外とシンプルで、要するに解散の理由を「国民が納得」したら良いのです。
しかも、それを喜んでくれたら、結果的に「票」は自分のもの。圧勝したら政権運営どころか、政権の寿命も延びてくるでしょう。

では、解散に値する大義名分ってどんなことが良いのでしょう。

それは、ちょっと荒っぽいしお上品とは言えないのですが、野党の政策を丸呑みして「公約」にし、今はこれを公約にする必要がある!と言い切ることです。

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自民党は選挙向けの公約に向けた議論が始まっている

4月1日、菅総理の口から「こども庁」創設の話が飛び出しました。これまで、保育園は、厚生労働省、幼稚園は文部科学省、認定こども園は内閣府、と3つに分かれていたものを何とかしようということ。

でも、これはすでに10年以上前から国会で問題視されてきたことです。明らかに選挙向けのメッセージですね。

それに加え、30年以上にわたり議論が繰り返されていた「選択的夫婦別性」。なんと自民党内でこれを公約に取り入れる議論が既に始まっているのです。さすがに反対派が「旧姓の通称使用拡大促進議連」をつくったそうですが、選挙で圧勝するためなら野党の政策を丸呑みしてしまえば、自民党は野党の支持者ごと抱え込むことができるのです。さあ、これはどう治まるのでしょう。

菅政権で弱体化したとはいえ、まだ自民党には選挙では野党に圧勝するというゆとりがある、ということなのでしょうか。
今年必ずどこかである選挙。この4月から、すでに戦いは始まっています。そう、私とランチしている時間はないのです。

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元国会議員政策秘書で現在は議員秘書専門人材紹介・政治家コンサルティングの職人がつく鈴鹿からみる政治の現場と選挙の裏側。

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