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クミ長のフランスかぶれ滞在記⑤ 言葉を超えて伝わること

時差ボケが消えた。さて、行ってみたい場所リストは作ったけど、予定は立てていない。気の向くまま行けるところに移動しよう。行きたかった場所で仕事をしながら、遊ぶ。やってみたかった暮らし方。さあ、どこに行く?

どこにしようか

リストを眺めて、次に行きたい場所を見つける。決まっている仕事の不可避な時間帯を避けることの他に条件はない。好きな順。

だったら、次はシャンパーニュの故郷。ランスからエペルネへ。シャンパーニュ街道は3年前にパリからバスツアーで行ったことがあるけど、今回はオリジナルで訪ねてみたいと思った。

そうと決まれば、オニバ!
(オニバ=On y va!=さ、行こう!)
(鬼婆ではありません)

ランスの酒屋

TGVでパリから1時間弱。ランス駅に着いたので少し散歩してみよう。人並みを分け、歩き始めた途端、この扉を見つけた。
迷わず入ってしまう。

左の札「シャンパーニュ」が何故か縦書き♡

扉を押して一歩入ると、
「ボンジュール、マダム」
フランスで「マダム」と言われると、どうして嬉しいんだろう。日本だと「お嬢さん」の方が喜ばれる?
これって文化の差というより、個人の価値観の差なのか。

アップ

ショーウィンドゥを見ると、見慣れたシャンパンもあれば、見たことの無いエチケットも。そりゃそうか、5,000あると言われているシャンパーニュのメゾンのうち、日本に入ってきているのは1,000ほどとか。知らない方が多いのは当たり前か。

AY村のメゾン、大好きなアンリジロー

写真を撮っていたら、後ろからダンディな声が(たぶん)私に話しかけてきている。

あら♡

あら、ダンディなイケメンさん♡

お値段もいろいろ

どこから来たの?
 ー-日本です。
そりゃ、ずいぶん遠くから!
 ー-はい!
こないだのサッカーは残念だった。
 ー-そうなの!でも日本はフランスと同じブルー!私も「レ・ブルー!(フランスサッカーチームの愛称)」!
そうだね!わっはっは
(笑い声は世界共通)

このくらいは伝わるもんだ。イケるイケル。

と、会心の笑みで見返したら、
「こっちへおいで!面白いもの見せてあげる!」

「早く!」

え、なに?


ダンディな彼は小さな扉を開けて鍵を取り出し、私を手招きした。
「秘密だよ」と言ったかどうかはわからないけど、唇に指を当ててウィンクしてたから、たぶん、そんなとこ。

行ってみよっと。

「こっちへ!早く!」「シーッ(ウインク)」

お店の裏の扉を開けて、その鍵を閉め、(ドキッ)、
狭い廊下の扉の先の小さな扉の鍵を開け、ダンディさんはどんどん進む(命名)。

狭くて急な階段をグルグル降りた先に、もう一つの扉。

ギ、ギギギギギ、ギィィィィッ・・・。

(゚∀゚)ちょっと怖・・・


わ、わあ!すっごー--!

これ、見て!ほら!ね!

ダンディさんの説明は流暢だった。しかも急に早口。
あかん、もう何言ってるのかわからん。
知っている銘柄の名前と覚えた単語が聞こえてくるだけ。

「ァンヒジホー」と聞こえるのは「HENRI GIRAUD」アンリジロー、

「ヒュヒナハトゥ」って聞こえたのは「RUINART」ルイナール、

エチケットを見せて説明してもらったから分かったけど、
フランス語の聞き取りってほんと難しい。

コレクションしているからこれは売らない、というワインも見せて頂いたころには怖さも吹き飛んでいた。ワインコレクターだったらギョッとしたりするのだろうなと思いながら、アップしていいと言われた写真だけを撮らせてもらった。

アンリジロー家とはお友達で、こないだキャビアの食べ比べ会やったって

お店に戻ると、シャンパンがどんなに素晴らしいものなのか、ということをしばらく語られ、ダンディさんのシャンパーニュ愛がビンビン伝わった。

木箱をあける時の指先、埃を払うときゆっくりボトルを回す手つき、棚に戻す時赤ん坊を寝かせるようにそっと置く瞬間。ダンディさんの仕草は、シャンパン愛に溢れている。

好きは、言葉にしなくても伝わる。
わざわざ「好き」って言わなくても、
わかってよね、って念押ししなくても、
好きは伝わる。

伝わらないのは、受け取る側の壁なのかも。嫉妬や悲しさがあると、壁作って受け取らないだけなのかもしれないと、
ダンディさんのフランス語での説明と仕草を見て思った。

伝わる

ここのところ、フランスのサッカー熱は日本でも報道されているらしく、珍しく息子から「フランスでサッカー熱すごいらしいけど、大丈夫?」とLINEが来た。確かに、パリではシャンゼリゼ通りでも警察沙汰があったらしい。

私もにわかサッカーファンになっている。

普段はあまり見ないサッカーも、言葉がわからなくてもテレビを見るだけで楽しい!言葉を超えて楽しめるものって、ほんと楽しい。

Les Blues!

言葉の壁を越えるもの。
絵画や彫刻などの芸術作品、音楽、スポーツ。
楽しさや感動は、言葉の法をやすやすと超える。

愛も、おなじか。
ダンディさんのシャンパーニュ愛は、言葉を超えて私を感動させてくれた。ってことは、私のシャンパーニュ好きも伝わったってことか。

Oui!

大好きなシャンパーニュの故郷に入った日のこと。
ダンディさんとの出会いは瞬間で衝撃的で心に残る時間となりました。

さ、今日はフランスとアルゼンチンのW杯決勝戦。
頬に三色旗の青白赤を塗り込んで、私のフランスかぶれ旅は続きます。


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