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信頼を資本に動く社会をめざして。

なんだか一周して、あるべきところに戻ってきた気がする。10月から第8期を迎えるKUMIKI PROJECT。最近、ありがたいことに様々な連携のお話をいただくことが増えた。だからこそ、ぶれないために「なぜやるのか」を改めて整理する作業をしている。

2013年3月。未曾有の大震災を契機に東北ではじまったKUMIKI PROJECT。被災地の集会所を住民みんなで再建するという活動からスタートした。その後、「ともにつくるを楽しもう」をキャッチコピーに掲げ、2016年に価値あるアイデアを世界に広げる講演会「TEDx」でスピーチをさせてもらったときに誕生した「DIT(Do it together)」というコンセプトのもと、「はじめる人をともにつくり支える」という現在の事業になった。

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「誰のために、何のために」という自問自答と、「食べていく」という両輪を走らせながらの日々で、はじめる人だけが事業の対象ではない気がして、いったいKUMIKI PROJECTの存在意義はなんだろうと思う日々も増えていった。

全国13都道府県、150回を越える空間づくりワークショップをやってくると、いろいろなことが見えてくる。「なぜ、参加者はわざわざ交通費をかけてまでワークショップに参加し、空間づくりに自分の労力や大切な時間を割いてくれるのか。」

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セルフリノベの技術を学びたいという欲求だけでは捉えきれないほど、リピーターとなって足を運んでくれる人も増えるなかで、「ここに参加したらきっと楽しい」というKUMIKI PROJECTがつくる場への「信頼」や、この人の思いに共感して何か力になりたいという「共感」が、これだけの人を動かしているという事実を強く感じることが増えていった。

「空間をつくりたい」と願う人の立ち位置から考えると、これまでは何かをはじめるときにお金という資本が100%必要だった。けれど、ともにつくるワークショップは、想いを形にするために必要な資本はお金だけではなく、お金の割合が下がった部分を、代わりに「信頼」や「共感」という善なる人間関係の力が埋めることで成り立っているといえる。

振り返ると、被災した地でみんなで力をあわせてつくりあげた「集会所」もそうだった。お金という資本が十分になかったから、みんなで力をあわせてともにつくった。そこには関係性の力が溢れていた。

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今日、KUMIKI PROJECTの事業紹介資料のはじめにある「事業をやる理由」の言葉を変更した。なぜ、事業に取り組むのか?という最も大切な部分について、「信頼こそが資本となる社会をつくりたいと思っていたんだ」ということに、今更ながら気がついたから。DITワークショップを通じて「初期投資を抑えながらも手間が愛着に変わった空間が完成し続けている」という、ここ数年の事実はまさしく、そのことを証明し続けてくれている。

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ここまで書いて、ちょっと悔しいのが、京都にある「信頼資本財団」という存在。代表理事の熊野英介さんには、陸前高田での復興支援の取組のなかでお会いして、信頼資本財団のこともずっと存じ上げていた。でも、正直、震災前に設立されたこの財団のことや信頼資本という言葉は当時は全然イメージわかなかった。

それがいろいろ事業を続けた結果、結局、KUMIKI PROJECTで空間が形になるのは、「信頼の力だなぁ」と気がつくわけで、なんとも恥ずかしい。熊野さんはずっと前からそういってたのかと思うと、すごいなぁ、かなわないなぁと思う。笑

何となく悔しいので、「信頼」という言葉ではなく、関係性や共感が資本になると言葉を変えようとしたんだれど、全然しっくりこない。「信じて、頼り、頼られる関係」という「信頼」という言葉こそが社会のなかで増えてほしい。やっぱりこの言葉になってしまった。苦笑 今更ですみません。。

「信頼」が資本になるといいことがあるのか?

さて、話を戻そう。「信頼」が資本になると、いったい何がいいのか。最近身を持って感じていることがある。

1つめは、人生の可能性が拡がる。最初にあげたDIT(ともにつくる)ワークショップによる空間づくりは、一般参加者に手を動かして手伝ってもらうことで、初期費用の圧縮に成功している。言い換えれば、お金だけに頼っていた頃より、想いを形にしやすくなったわけだ。経済的なイニシャルコストが落ちれば、人は一歩を踏みだしやすくなる。それは確実に人の可能性を拡げてくれる。

2つめは、「助けてほしい」「手伝ってほしい」「力を貸してほしい」という声をあげやすくなるということ。いま、僕らの社会はどんどん孤独感が増しているように思う。都市部への人口が密集し、核家族化が進み、隣にどんな人が住んでいるかわからないなかで、日々の暮らしの困りごとをみんなが抱え込み、自分で何とか解決しようと必死になる。

不安から逃れるために、たくさんの収入を求めたり、お金で安心を買おうと保険に入る。とにかく自己完結に必死だ。挙げ句、「わたしは頑張っている。だからあなたも頑張るべきだ」と人に厳しくなる。痛みに対する想像力は薄れ、自己責任と他者を切り捨てていく。そんなとき「信頼」という文字が表す通り、信じて頼り、頼られる人が、生活圏内にどんどん増えていったなら、私達の暮らしのなかで感じる安心感は一体どれほど増すだろうか。きっとそんな町に住みたいと思う人は多いはずだ。

目指すもののために事業の進化を。

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そんなことからビジネスモデルも、成果を測る指標も進化させる必要がある。まだ当面は初期フェーズだと思っていて、引き続き、日本全国でともにつくるDTワークショップを開催していく。これは信頼が資本となり、「資金の壁を越えて、誰もが想いを実現できる暮らし」にきっとつながるはずだ。

次のステップでは、「生活圏内で頼り・頼られる機会が増え、「助けてほしい」と声をあげやすい暮らし」を実現したい。そのためには、既存のお店などの空間づくりを行うDITワークショップのプロデュース事業とは違う事業が必要になる。もっとダイレクトに困り毎を共有し、手伝える人とマッチングできるC2Cのプラットフォーム。現在はβ版の構築にむけて検討をはじめている。

最後のステップは、テクノロジーの力を最大限に活かし、個々人に蓄積された「信頼の可視化」を測ること。信頼をスコア化していく取組だ。これまで「通帳の銀行残高」を眺めていた人々が、「信頼スコア」を眺めるようになったらいいなと、割と本気で思っている。

「信頼」によって評価される時代へ

人を社会のなかで、どのような軸で評価されがちだろうか?これまでは、その人の「収入」や「社会的地位」だったかもしれない。最近だと、SNSフォロワー数かもしれない。

銀行からお金を借りるときも、現在のお金の流れで与信(どのくらいお金を貸しても大丈夫か信用を判断する)がなされる。でも、例えば、親の介護でどうしても仕事をやめなくなってしまったとき、現在収入がないから、融資を受けられないということも起こりうるのが現実だ。お金が足りないから借りたいのに借りられないという本末転倒なことは、金融資本がベースの現在社会ではありがな事態でもある。

一方で、「信頼」というのは、人との関係のなかで、誰かのために何かをするなかで生まれ、積み重なってきたものだ。個人の行動の結果である「信頼」をベースに与信がなされる世の中になったなら、どれだけ安心感が増えるか想像してみたい。

どれだけお金を持っているか、社会的地位が高いかより、どれだけ信頼のスコアをためられるか。お金を稼げても信頼を失う方法であれば、社会が生み出す豊かさへのアクセスがしにくくなる。

事業が人の考えを変え、行動を変え、習慣を変える力を持っているならば、人と信じて頼り・頼られることが行動規範となり、信頼が金融資本に変わる資本として認識され、様々なサービスとの交換にも結びつけられるなら、確実に変化を生み出せる気がする。

実は、僕自身、クラウドファンディングという仕組みが登場してから、最初はチャレンジするのが怖かった。だって「どのくらい応援されているか」、「共感されているか」、「信頼されているか」。そういう今まで目に見えなかった大切なものが、白昼の元に晒されてしまうということだから。だからこそ、日頃から自分ができる範囲で、目の前の誰かのためにできることをしていくというのも大切に想うようにもなった気がする。

来期のKUMIKI PROJECTは、「信頼を資本に人の可能性を開くこと」、「暮らしの様々なシーンで信頼の生まれる機会をつくること」、「その可視化と蓄積の仕組みをつくること」の3つのチャレンジに向かっていきたいと思う。

◎ダウンロード[KUMIKI PROJECTの事業について]

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