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「スティーブ・ジョブズ」伝説のスピーチが好きすぎる

プレゼンのテーマは人間が作るべき?

8月末に「ヒト×AIでつくる未来のプレゼン」という書籍を発売し、その中で「AIでなく人間がプレゼンのテーマを作るべき」という話を書きました。

心に残るプレゼンは、必ずプレゼンターの経験や感情を元につくられているから、人の心を動かし感動させることができます。

中でも有名なのがスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った「コネクティング・ザ・ドッツ」のスピーチです。書籍ではページの都合上割愛しましたが、とても好きなプレゼンなので、内容を簡単にまとめておきます。

スタンフォード大学で行われた伝説のスピーチ

スティーブ・ジョブズが2005年6月にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは、多くの人々に感銘を与えたことで知られています。彼はそのスピーチの中で、自身の人生体験を「点と点をつなぐ」「愛と喪失」「死について」という3つのストーリーで語りました。

①点と点をつなぐ(Connecting The Dots)
最初の話は大学中退後に授業に潜り込んで参加したカリグラフィ(書体)のクラスが、Appleのマッキントッシュの美しいタイポグラフィにつながったことです。これがなければ、その後のPCのフォントは全く異なったものになっただろうと言われています。ジョブズは「将来を見据えて点と点を繋ぐことはできないが、後で振り返ったときに繋がりが見える」と語ります。

リード大では当時、全米でおそらくもっとも優れたカリグラフの講義を受けることができました。キャンパス中に貼られているポスターや棚のラベルは手書きの美しいカリグラフで彩られていたのです。退学を決めて必須の授業を受ける必要がなくなったので、カリグラフの講義で学ぼうと思えたのです。ひげ飾り文字を学び、文字を組み合わせた場合のスペースのあけ方も勉強しました。何がカリグラフを美しく見せる秘訣なのか会得しました。科学ではとらえきれない伝統的で芸術的な文字の世界のとりこになったのです。

もちろん当時は、これがいずれ何かの役に立つとは考えもしなかった。ところが10年後、最初のマッキントッシュを設計していたとき、カリグラフの知識が急によみがえってきたのです。そして、その知識をすべて、マックに注ぎ込みました。美しいフォントを持つ最初のコンピューターの誕生です。もし大学であの講義がなかったら、マックには多様なフォントや字間調整機能も入っていなかったでしょう。ウィンドウズはマックをコピーしただけなので、パソコンにこうした機能が盛り込まれることもなかったでしょう。もし私が退学を決心していなかったら、あのカリグラフの講義に潜り込むことはなかったし、パソコンが現在のようなすばらしいフォントを備えることもなかった。もちろん、当時は先々のために点と点をつなげる意識などありませんでした。しかし、いまふり返ると、将来役立つことを大学でしっかり学んでいたわけです。

翻訳/日本経済新聞

ジョブズのこの話を聞いて「将来何の役に立つか分からないけれど、興味がある目の前のことに取り込む」ことの大切さを学んだ人は多いのではないのでしょうか。

②愛と喪失
次の話はAppleでの成功と失敗についてです。ジョブズは20代でAppleを創設してマッキントッシュを発売し大成功を収めますが、その後経営陣と対立してAppleから追い出されることになります。その時はかなり落ち込みましたが、自分の好きなことに再挑戦することにより、もう一度クリエイティブな仕事をすることができたと語っています。

アップルを追われなかったら、今の私は無かったでしょう。非常に苦い薬でしたが、私にはそういうつらい経験が必要だったのでしょう。最悪のできごとに見舞われても、信念を失わないこと。自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。本当にやりたいことが見つかった時には、不思議と自分でもすぐに分かるはずです。すばらしい恋愛と同じように、時間がたつごとによくなっていくものです。だから、探し続けてください。絶対に、立ち尽くしてはいけません。

翻訳/日本経済新聞

彼はこの経験から「最悪のできごとに見舞われても信念を失わず、心の底から素晴らしい仕事だと思えることを続ける」ことの重要性を教えてくれています。

③死について
最後の話はジョブズの病気についてです。彼は前年に膵臓がんと診断され、余命わずかと言われたものの、その後の手術で一命を取り留めます。この経験から「死を意識することの大切さ」について、確信を持つようになったジョブズは、その後毎朝「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか」と自分に問いかけるようになりました。

自分はまもなく死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役立つのです。なぜなら、永遠の希望やプライド、失敗する不安…これらはほとんどすべて、死の前には何の意味もなさなくなるからです。本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安にとらわれない最良の方法です。我々はみんな最初から裸です。自分の心に従わない理由はないのです。

…あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。

翻訳/日本経済新聞

ジョブズのスピーチはこれらの三つのストーリーで構成され、スタンフォード大学の卒業生たちに対して「Stay hungry, stay foolish(ハングリーであれ、愚か者であれ)」という有名な言葉で結んでいます。

時代の転換点で様々な失敗や困難を経験しながら、人生を通じて学んだことを包み隠さず我々に伝えてくれるこのスピーチは、ジョブズがなくなった今でも多くの人々の心を打ち、影響を与え続けています。

「創造」「共感」「体験」はAIの苦手分野

スティーブ・ジョブズの行ったスピーチのように、ヒトの心を動かすプレゼンをするためには、プレゼンテーマをAIでなくヒトが作る必要があります。なぜなら、現状のAIは「創造」「共感」「体験」を苦手とするため、この部分についてはヒトに頼るしかないからです。
 
・創造
ジョブズのスピーチは彼自身の視点と洞察に対する深い理解を示しています。これは彼が過去の経験を通じて得た知識と洞察をもとに創り出した個人的なもので、AIがこのような創造的で独創的なテーマを作るのはまだ難しいといえます。
 
・共感
ジョブズのスピーチは感情的な要素が非常に強いといえます。彼は自分自身の恐怖、失敗、成功、愛情などを率直に表現し、聴衆と深い共感を築きます。現状のAIは人間の感情を完全に理解し、表現することが難しいため、共感を呼ぶテーマはヒトでなければ作れません。
 
・体験
ジョブズのプレゼンは彼自身の人生経験と、そこから得た教訓に大きく依存しています。AIは現在の技術では固有の体験を持つことができないため、ヒトが体験をもとにテーマを語ることで、説得力のあるプレゼンする必要があります。
 
このように、プレゼンとは情報を伝達するだけでなく、聴衆との感情的なつながりを築き、説得力を持つ必要があるため、ヒトがテーマを作ることが重要になります。みなさんもぜひ、自分らしいテーマのプレゼンを作ってみてくださいね。

ヒト×AIでつくる未来のプレゼン

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