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百物語11「ホーム」

月に2度ほど、仕事で東京に出る際には自宅の最寄り駅から電車に乗って、隣の駅で別な路線電車に乗り換えるのだが、乗り換えるホームの反対側のホームの隅に赤い服を着た男女が4人立っている。

初めは、乗り換える際にちらりと見かけるだけだったが、毎回、同じ服を着て同じ場所に立っているので、次第に気になるようになり、注意して見るようになった。

はじめは、お揃いのユニフォームを着てスポーツ観戦にでも行くのだろうと思っていたが、それが微動だにせず、ボンヤリと立っているだけなので、これは「何かの因縁で駅のホームに憑いた幽霊なのではないか?」と思うようになった。

ある日、東京に出る日ではなかったが、ホームに彼らが立っているかどうか確かめに出かけた。彼らが立っていたホームに行ってみると、彼らの姿はなかった。

「何だ、やっぱり彼らは人間だったんだ」と呟いて彼らが幽霊ではないと確認してホッとした。

そのまま、その駅で買い物でもして帰ろうとホームから改札口まで歩いていると、誰かに見られているような気がした。視線を感じる方を見ると、向かい側のホームに彼らが立っていて、僕を見て笑っていた。


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