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文章講師

昨年までの6年間、千葉県や茨城県のカルチャースクールで自分史と文章の講師をしていました。10年前まで30年以上、小さな出版社や新聞社で記者・編集・営業を兼ねた仕事をしていた経験から選んだ仕事でした。

しかし、無名な僕の講座など人気がなく、ほとんどが2~3人の受講生しか来ませんでした。2~3人は良い方で、仕方なく1人相手に講師をしていたこともありました。スクールでは講座の告知チラシを新聞広告などに入れたり、個別ポスティングなどで集客してくれましたが、受講生は全然集まりませんでした。

結果的に2~3人の受講では、たいした収入にはなりません。講座は月に2回でしたから、講座会場への往復交通費にしかなりませんでした。それでも僕よりも年上の受講生さんに文章を教えるのは凄く面白く、やりがいのあることでした。

この文章を読んでいただいた方には判ると思いますが、僕は文章を書くのが上手ではありません。文章を教える資格がないほどなんです。勤めていた出版社や新聞社では「全社で一番文章が下手な記者」でした。そんな僕のことを受講生さんたちは「先生」と呼んで、一生懸命文章を書いていました。

受講生さんたちの文章は、荒削りではありますが、それぞれが個性に満ちあふれた面白い文章でした。すぐに講座を辞めてしまう受講生さんは「自分の文章に自信を持っている人」で、僕の「文章の基本を踏まえながら(自分は基本ができていませんが)感覚と個性を重視した」講座に不満だったようです。

それでも続けてくれた人たちは、(手前味噌ではありますが)もの凄く文章が上手になったばかりか、天性の感覚と個性に磨きがかかり、さらに面白い文章が書けるようになりました。

そこで気がつきました。僕は「自分で文章を書くよりも人に文章を教える方」が合っているのだということを…。

残念ながら、事情があって講座を続けることはできませんでしたが、今まで生きてきた中で最高に楽しかった仕事でした。

*写真は東京・町屋

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