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「妄想邪馬台国」2

「出雲国譲りって知らないの?」
「うん」
「古事記を読んだことはあるでしょ?」
「ごめん、ないんだ」
治子が呆れている。
「出雲国譲りとは天津神(天照大神)が国津神(大国主命)から葦原中国(出雲)を譲り受ける神話のことよ」
「へぇ」
「天津神は高天原にいるでしょ? 国津神は日本にいる。私が思うに高天原とは朝鮮半島のことで、半島から渡ってきた人びとによって、出雲を治めていた先住民族が駆逐されてしまったのよ」
「朝鮮半島が高天原とは面白いね」いつの間にか異能が戻って来た。そのままコタツに滑り込んだ。
「あ、戻って来た…うふふふふ」
「何だよ!ここは僕の部屋だから戻って来て当たり前だろう?」異能がふくれて治子を睨んだ。
「おお、怖っ」
「さっきの話しだけどさ。朝鮮半島が高天原だというのは僕も同じ意見だね。古事記や日本書紀でも出雲国譲りが書かれているけど、これは先住民族が暮らしていたのが出雲で、そこが邪馬台国であったというのは凄く面白いと思うよ」
「出雲が邪馬台国?」
「まずは出雲神話から説明するよ」異能がふんぞり返って話し始めた。大変だ。異能が説明しはじめると長くなるのだ。治子もため息をついている。

伊弉諾神(いざなきのかみ)と伊弉冉神(いざなみのかみ)から生まれた(神話では伊弉諾尊が禊ぎをし、顔を洗った際に生まれた)のは天照大神(あまてらすおおみかみ)、月読尊(つくよみのみこと)と素戔嗚尊(すさのおのみこと)だ。

アマテラスには高天原を治めさせ、ツクヨミには夜の国を、スサノオには海を治めさせようとしたが、スサノオは言うことをきかなかった。これに怒ったイザナキがスサノオを蘆原中国(あしはらのなかつくに)から追放してしまった。

スサノオは高天原のアマテラスのもとに向おうとしたが、それを知ったアマテラスは弟が高天原を奪おうとしていると考えて、スサノオを迎え撃とうと軍備を整えた。

スサノオはそれを見て「お姉さんの国を奪おうとはしていません」と言った。アマテラスは「それを証明してみなさい」と言うと、「それぞれ誓いを立てて子を産みましょう」と言って、ふたりは天の安河(あめのやすのかわ)を挟んで誓ってから、アマテラスがスサノオの剣をかみ砕いて三柱(神を数える際の単位。人である)の女神を産み、スサノオはアマテラスの勾玉をかみ砕いて五柱の男神を産んだ。

スサノオが産んだ五人の男神はアマテラスの勾玉から産まれたのでアマテラスが、アマテラスから産まれた三人の神はスサノオの剣から産まれたのでスサノオの子となった。

スサノオは「わたしの心が清く晴れやかであるから女の子を産むことができた。私の勝ちだ」と言うやアマテラスの田の畦を壊して水を堰き止め、その年にとれた穀物を食べるための神殿に排泄物を撒き散らした。アマテラスは怒らなかったが、スサノオはますます乱暴狼藉を働くので、それに恐怖したアマテラスは天の岩屋に引き籠もってしまった。世界は闇に覆われてあらゆる災いが起きてしまった。

八百万の神々は、何とかしてアマテラスを外に出そうとする。天手力男の神(あめのたぢからおのかみ)が、岩戸の脇に隠れ、岩戸の前で天宇受売命(あめのうずめのみこと)が足を踏みならして神がかり(神が憑依すること)常態となるや、自分の乳房を掻き出し、着物の紐を陰部まで垂らして舞い踊った。すると八百万の神々が笑った。それは高天原がゆらぐほどだった。

その騒ぎを聞いたアマテラスが天岩戸を少しだけ開けた。「八百万の神が笑っているのはなぜか?」と聞いた。「あなたよりも尊い神がいるので、皆、喜んで笑っているのです」と答えて、ふたりの神がアマテラスの前に鏡を差し出すと「アマテラスの顔が映った」不思議に思ったアマテラスは岩屋の中から身を乗り出すと…。

「ちょっと待って。天岩戸の話しがどうして邪馬台国と結びつくのさ?」
「まあ、もう少し話を聞けよ」
「そうよ。古事記を読んだことがない人だから異能くんが親切に説明してあげてるんじゃないの」

つづく




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