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真っ赤だな、くすんだ目元にアイシャドウ

YouTubeのリコメンド機能というのはおそろしいものですね。
「ほらこれでしょう、あなたこういうの好きでしょう」と次々にメイクやコスメの動画が上がってくるようになった。そうそうそれそれ。かじりついてずっと見ていられるほどにはコロナで暇だった。
そこには今まで知らなかった世界が広がっていて夢中になっていった。

勇気を出してキラキラへ

そもそも化粧下地がなくなり、困ってググってみたのが発端だった。
うっとりYouTubeを見ている場合ではない。化粧下地買わないと。
とはいえ、見れば見るほど何を買えばいいのかわからなくなった。
ひとまずなんとなく自分と同世代くらいの方がメイク動画で使っていた化粧下地の銘柄をチェックした。だってピチピチのお肌に良くても我々のお肌は問題山積でしょう、ねえ。そしてそれは一体どこで売ってるんだ?

調べてみるとロフトのコスメコーナーにあるらしい。
たしかにあるな、コスメコーナー。文具しか買ったことなくて立ち寄ったことなかった。さっそく行ってみる。

そこはなんかキラキラしてて眩しくて近寄りがたかった。しばらく周辺をうろうろする。若いお嬢さんたちが品定めしておられる。ああ自分はぜったい不相応です。どうしよう。そうだ娘に頼まれて買いに来たってことにしよう、娘いないけど。
ええと?どれだったかしら?メモした紙を取り出して頼まれた買い物を遂行するテイでキラキラの一角に突入する。
ああ!知ってる!このメーカー、このコスメ、これかぁ〜!
YouTubeで聞いたことある!見たことある!
テンション爆上げ。自分の周りにシャララララ〜ンという効果音が鳴るのが聞こえるようだ。右を見て左を見てウロウロしてうっとりしたけどうろたえすぎてなんにも手に取ることもできず、メモに書いた化粧下地だけをなんとかレジに持って行って買うことができた。イマジナリー娘よ、やったぞ。

気分をアゲるのはやはり色物

どっと疲れて帰ってきた。その化粧下地はどうだったかというと、よくわからなかった。きっといいんだと思う。問題ない。
でも、朝の洗顔後スキンケアしてそれを塗ったところで、まったくメイクは変わり映えはしなかった。あたりまえだ。
あのキラキラが忘れられなかった。
ああ、なんかメイクしたって感じが欲しい!
やっぱあれじゃない?アイシャドウとか、リップとかじゃない?

折しもYouTube師匠がインスタライブをやっていた。
「こーんなクオリティのコスメがコンビニで買えるんだよぉ〜すぅ〜ごいでしょ〜〜」とキラキラのメイクを仕上げていった。

ほう、コンビニで。
コンビニの化粧品といえば、メイクに目覚めた高校生が恐る恐る手に取るイメージ。あるいは出張先で急に泊まりになっちまって急遽押さえたビジネスホテル直近で弁当やスキンケアセットやらを買う暗黒時代を思い出させた。

その足で近くのコンビニに行ってみる。あった。
千円ちょっとでアイシャドウが買えるって、いい時代になったもんよ。
まんまとゲットして帰る。

いやープチプラかもしれないけど、じゅうぶん綺麗だなー。
誰もまだ足跡をつけてない新雪みたい。キラキラ。
触るのもわすれてずっと眺めていた。
キラキラするものが好きなのはカラスと同様、生き物にとって初源的な喜びなのかもしれない。

翌朝、YouTube師匠の手つきを思い出しながらメイクしてみた。
ぴかぴかのアイシャドーの表面をすーっと撫でて、そっと瞼にのせてみた。
んん
んー
なんか
どう? これ正解?
「スパイシーオレンジ」という名のアイシャドーだったが
なんというか、砂場に落ちた紅葉みたいになった。
人生の秋から初冬あたりにいる自分が落ち葉メイクってなんの自虐だよ。

その後オットから「大丈夫?目まっかだよ」と言われ
大丈夫大丈夫、アイメイク変えただけだから
「いや、そうじゃなくて」
鏡をみると本当に眼が真っ赤だった。泣く泣く眼科へ。
コンタクトによる炎症だということだったが凹んだ。
もらった目薬の容器がきれいな忘れな草色で沁みた。
コスメより薬局が似合う歳ではある。

土台が大事だと気づく

くすんでしょぼくれたまぶたにどんなキラキラをのせたってだめなんだ。
それはリップもチークも同じこと。
まずはスキンケア、そしてベースメイクが大事なんだね。
もっといえば、ちゃんとしたブラシ類もないし、どう使うのかもわからない。基礎がなにひとつなってないってことか。

ビギナーのぶちあたる壁。
十数年前、お茶に夢中になりはじめた自分を思い出した。
台湾の烏龍茶の香りに夢中になって、すぐさま台湾に行ってお茶屋さんに行った。言葉もわからずとにかくお茶を買うと、枕のようなサイズの茶袋を渡された。「1斤=600g」も買ってしまったのだった。今ならそういう問屋みたいなお茶屋には行かないし、1斤の半分の半分(4両)以下で多種類買うだろう。
お茶を買ったものの道具もなかったし、どういう道具がいいのかもわからなかったし、買って帰った茶壷(急須)は小さすぎて観賞用になった。

知りたい、分かりたいという一心で本を読み漁った。
当時広島にあったお茶屋さんの教室にも通った。
勉強
つまりそれしか、先に進む道はないのです。
メイクも一緒かぁ。
今はでもほらYouTube師匠たちが日々こんなにたくさん動画をアップして教えてくれるじゃない。メイクの仕方や製品の比較動画や使用レビューやいたれりつくせりですよ。ほんとありがたいですよ。
いいなと思うものは地方にはない、ということもなく、ハンズやロフトに行けばたいがいあるし、なんなら通販でなんだって手に入る。お茶道具は売ってなくて苦労したのになー今でも苦労してるけどなーそれに比べたらコスメはいくらでも入手できる。金さえあれば。

ということでひとまずポイントメイクへの憧れはしまっておき、ベースメイクの勉強に移ることとなる。しかしそこもまた沼でした。まじかよ!

(つづく)

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