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邦ロック(ロキノン系)名盤 パスピエ『ukabubaku』レビュー

私がいわゆるロキノン系(邦ロック)の分野で一番好きなのはパスピエです。フランス印象主義音楽の和声を元にしたニューウェーブ寄りポップロックという…、とんでもなく高度かつ親しみやすい音楽を奏でている人達。現状の1000倍売れるべきバンドです。私がパスピエ知って衝撃を初めて受けたのはこの曲を聴いた時。こんな色彩感のあるキーボードの編曲が出来る(いわゆる)ロキノン系バンドが出てきたのかと、素人ながら感動した記憶があります。

これ、パスピエファンが口を揃えて言ってる事なんですが…。曲が良くて、歌詞も良くて、見た目の華もあって。その割には売れて無さすぎるんですよ(もちろんロックバンドとしては相当売れてる部類ですけど)。パスピエが実力ほど売れてない理由って、つまるところ印象派の和声が邦ロックを聴く層になんとなく受け入れられ難いってことなんだと思います。これはパスピエのバンド名の由来になったドビュッシーの代表曲。美しいけど、なんか掴みどころが無い感じがありますよね。ここに美しさを見出すかどうかが、パスピエというバンドにハマるか否かの分水嶺なのでは。(パスピエの良さが分かるオレって凄い、みたいな話ではないですよ。音楽なんてあくまで好みの話なので。)

2022年に発表した傑作『ukabubaku』は彼らの独自路線をさらに推し進めていて、初めて聴いた時はビックリしました。掴みどころが無さすぎる和声に、何故かサビでD-Beat(Dischargeが世に広めたハードコアパンクやメロコアで多様されるリズムパターン)になったりと、やりたい放題(誉め言葉)です。

初期のころはアニメ声っぽさのある歌声が個人的に少し苦手だったヴォーカル。でも、今は違いますね。適度な愛嬌はそのままに落ち着きと表現力が増しており、本当に凄いとしか言いようが無い。

詳細な各曲解説については他の方の記事や本人のインタビューを見たほうが良いと思うので、今回はこのくらいで。私は最近は洋楽や民族音楽に傾倒していたため、"邦ロック"や"ロキノン系"という括りが今どのくらい有効かどうか私は寡聞にして良く知りませんが、その括りを飛び越えるくらいの名作なのは間違いありません。1回目に聴いた時は掴みどころがなくて今一つピンと来ない人が多いとは思いますが(私もそうでした)、聴けば聴くほどその沼にはまってしまう作品です。全音楽ファン必聴。


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