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経験値と持ち味、そして才能は、ひとそれぞれ

みずみずしいエッセイを読んだ。

まだ著者の記憶に新しいであろう情景が丁寧に爽やかに綴られていて、頭の中に容易に映像が流れた。

夏祭りの小道具のいちいちが効いていて、ビールの描写で私まで喉が潤った。そして、著者の胸の高ぶりや火照った顔までもが、私の心の中に流れ込んできて、どうしようもなく熱く、照れくさい気持ちになった。


家族への情念と積年の苦しみが渦巻くエッセイを読んだ。

身内との関係が赤裸々に綴られていて、ともすれば単なる自慰エッセイ。

でも決してそうはならないのは、著者を取り巻くそのドラマが、8/6という特別で残酷な日に毎年起こっているからなのか。苦しさと愛が交差したそのエピソードには、ヒロシマ生まれであるが故の葛藤を感じ、苦しくなった。


女の未練と可愛さ、少しのだらしなさが見える小説を読んだ。

こういうのは、アタシにも身に覚えがあると思ってしまった時点でもう負けだ。

粧し込んだ自分が、そのまま異性への武器になる。アタシは、何かを期待してネイルを塗り、口紅を引く。何も思惑などない? 下手なウソをつくなと誰かが頭の中で狡賢くささやく。その誰かは、自分かもしれない。


自分は何者か?と、問うエッセイを読んだ。

世間や家族に対する愚痴が並び、こんなはずではなかったんだと著者は憤る。

太宰よろしく嘆く姿は痛々しく滑稽だ。でも妙なエネルギーが溢れていてそこから目が離せなくなる。文章にネガティブワードをぶちまけるその熱意に、もう読むまいと思いながら不本意に引き込まれてしまう。


家族への愛が溢れる物語を読んだ。

一見、それはエッセイなのかノンフィクションなのか区別がつかない。

穏やかでユーモアのある世界観は、きっと著者の眼差しそのものだ。日常を切り取る審美眼は、読者をゆったりした気持ちにさせ、また読みたいと魅了する。卵焼きひとつでここまで話を膨らませるなんて、才能以外のなんだというのか。


その経験値は、あなただけのもの。
他の誰もがまねできない値。

その持ち味は、あなたの個性。
他の誰かが真似したいと思うもの。

そしてあなたの才能は、決して他人が計り知れるものではないということ。





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