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【#一日一題 木曜更新】 「リア充」の背景

山陽の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。

ことの発端は忘れたが、回転寿司の席で「リア充」という言葉が挙がった。そこにいた10代の子どもたちが「リア充」を「もう死語だよね」とまぐろとサーモンの皿を取りながら、口々に言う。

しっかし。アラフィフの私としては実際に使う機会はないものの、「リア充」なんてまだまだ現役言葉かと思っていた。すでに死語の類に入るとは。

そこへ80歳近い彼らの祖母が「りあじゅうって何?」と。彼女は地方出身さらにこの年代ながら大学を卒業していて、今でも自ら様々な外国語の勉強をする勤勉で聡明な人である。意味のわからない言葉があれば尋ねる、それは彼女にとって呼吸するも同じ。

彼氏彼女がいるってことかな
付き合っている人がいるとか
ラブラブな生活とか

孫たちがあれやこれやと回答するが、彼女の頭の上にはクエスチョンが浮かんでいる。「なんでそれが、りあじゅうなのよ」。もっともである。「りあじゅう」イコール「恋人がいる」。到底繋がりようがない。けれど孫たちは寿司の皿やタッチパネルに手を伸ばすことに必死。

アラフィフの私は祖母にかいつまんで解説する。
例えば、インターネットで写真とか投稿するでしょう。食べたものとか、旅行先とか、恋人とデートしているとこ、それは充実した生活。それに対してインターネットでゲームばかりしているような人たちが、自分たちのオタクっぷりを自虐して、現実の世界、つまりリアルな世界での生活が充実してますねえいいですねえって揶揄したような言葉が、リアルな生活の充実ですねってことで、略して「リア充」。

ああそういうことなのね、面白い言い方するわねえと、齢80祖母は納得。と、同時に子どもたちが意外な声を挙げる。

大学生 「えええええ、そうだったの」
高校生 「そういう意味だったの」
中学生 「知らなかったーーー」

私の解説が寿司の皿に勝つ。子どもたちにとっては「リア充」とは恋愛に関する意味合いに特化しているものらしく、それはそれで私がびっくりした。アイツ彼女といるらしいぜ、リア充だな。とこんな使い方「のみ」らしい。

言葉は生もの。前提や背景を知らないと、祖母にようにそもそも意味が伝わらない場合と、言葉が生まれた時の意味合いから一人歩きして使われている場合もあって。

どんどん流れていくレーン上のおすすめ札をながめながら、私は「旬⭐︎貝三種盛り」の高い皿を注文した。

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