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欲しくて欲しくてたまらなかったけど、今のわたしに、あなたは必要なかったの

8月某日。最高気温35度。
私は世田谷線の某駅に降り立った。

時間は正午少し前。
空腹だった。まずは、腹ごしらえをしなければ。

このままあなたに会ってしまうと、絶対に情欲にまみれた再会になってしまう。でも数ある欲をひとつでも満足させておけば、ドロドロな再会を少しは回避できるだろう。次にいつ会えるかわからない。あなたに滑稽な姿は見せられない。冷静にならないと。

事前に探しておいた駅前のメキシコ料理店に飛び込んで、ランチセットを頼む。

外は暑かったけど、室内はキンキンに冷えていた。
セットの熱いアボカドのスープが届いた頃には、体はすっかりクールダウン。熱くて塩気のあるこってりアボカドスープ。注文前はあまりの暑さに「スープは残すかも」と考えていたけれど、それは杞憂に終わる。思いのほか美味しくいただき、空腹が少しおさまった。と、同時に、店内のインテリアを楽しむ心の余裕も生まれた。

まるで、スープにまで諭されているようだ。
「落ち着きなさい」と。

メインの皿が届くまでスマホでnoteを開く。いつもの仲間が素敵な作品をアップしていた。毎日の「読み物」に困らない。noteは素敵な場所だ。そして時折、あなたの近況らしき話題もここに流れてくる。

そう。
あなたに再会しようと決めたのも、noteがきっかけ。私のそばから急に姿を消し、加えて私も東京から転居。もうあなたとは接点を持たずに、この先の人生を生きていくのだと思っていた。いや、正確に言うと、あなたと私が交わった日々もさほど濃いものではない。言うなれば、指と指が絡んだ程度の、大人のお遊び。会うたびに後腐れなく、そして次の約束もせず「またね」と言って別れていた。

メインの皿が届く。タコスとトスタダス、オムレツにサラダ。メキシコ人のママーがチリソースを別皿で添え、「トスタダス、パリパリなうちにネ」と勧めてくれた。
お勧めされた通りに、最初に固いトルティーヤにかぶりつく。バリバリと小気味いい音に混じる野菜のシャクシャク感、そしてサルサソースの爽やかな辛さとトマトのジューシーなうまみ。砕けたトルティーヤと、はみ出たレタスがテーブルに散らばってお行儀が悪い。でもここは豪快にいこう。猛暑日には、こんなスナックみたいな食事がぴったりだ。

トルティーヤを咀嚼しながら、やはりビールを頼んでしまう。お腹を満たすだけと決めていたのに、この陽気な食べ物を前にビールの誘惑には勝てなかった。だってcoronaの空き瓶が、目の前の窓に飾ってあるんだもの。と、そこへママーから小皿がサーブ。

「味見してネ。ハーフできなくてごめんね」
思いがけずプリマベラ(メキシコ風チャーハン)の小皿が目の前に。注文時、かなりの腹ペコだった私は、井之頭さんばりに「プリマベラのハーフはできますか?」と尋ねたのだ。答えはノーだったので、タコスも欲しかった私はおとなしくランチプレートのみを注文した。ママーは他のテーブルにプリマベラの注文が入ったタイミングで、少し多めにこしらえてくれたらしい。味見程度の2、3口分の量が嬉しい。ありがたくいただいて、ビールで〆る。

さて。
お腹が満たされると、さきほどの焦りに似た想いはどこへやら。これであなたに会うための体制は整った。会計をすませて、店をあとにする。

駅に着いた時の先走るような気持ちはおさまったけれど、やはり胸は高鳴ったままだ。本当に会いに行っていいのだろうか。最後に会ったのは、もう4年以上前だ。あなたのノリに、私はついていけるだろうか。

左手に線路の気配を感じながら、住宅街を進む。

メキシコ料理店から、徒歩3分ほど。
交差点まで出ると、あなたの姿が見えた。

ああ、良かった。やっぱり会いに来てよかった。あなたは大きな懐で私をすんなり受け入れ、昔と同じように接してくれる。私たちは四年前と変わらず、「最近どうよ?」みたいな調子でお互いに触れ合いながら逢瀬を楽しむ。

外は黙っていても滝汗になるくらい暑いけど、あなたは初秋の味覚のブドウを勧めてくれた。

でもわたし、今は岡山人だよ。シャインマスカットはB級品が安く手に入るんだ。B級品って言っても味は同じで、ちょっと見た目が悪かったり、房から外れちゃったり、枝が折れていたり。ね、贅沢でしょう。

こんなふうに売ってるんだよ、シャインマスカット。旬ならいつでも美味しいのが安く食べられるから、今日は残念だけど、ふどうはいらない。

そして相変わらずあなたはトマトが好きなんだね。カラフルなミニトマトの箱は、あなたが姿を消す前によく買ってた。懐かしい。

岡山も農家が元気だよ。夏のトマトは、どこの店も色んな産地から集めるみたい。だから今の時期、近所のスーパーマーケットでも美味しいのが買える。だから、トマトもいらないの。

東京に住んでいる時は、あなたの魚好きに感激したものだけど、私はもう瀬戸内の女。私のそばにも、こんなにも頼もしい魚好きがいるんだ。

だから、アワビがケースで動いていても、生のアナゴがきらきら光っていても、もうここでは潤わない。(え


そうなると、肉かな。あなたの豚肉好きは相当だよ。定番でブランド豚を2種類も用意してる。あれ…今日はどんぐり豚が見当たらない。いわて純情豚の日なのかな。
あなたに初めて会った日、純情豚のロースで分厚いとんかつにしたのを覚えてる。肉の質の良さと、私の揚げ技の調子の良さが掛け合わさって、奇跡のローストンカツが出来上がったんだ。

あのトンカツの夜は、忘れられない。
歯ごたえがありながらもジューシーなロースをゆっくり噛み締めながら、また絶対に会う、あなたに。って決意したあの夜。

なのにどうしてだろう。
今日は4年ぶりに決心して会いにきたのに。うっとりするような筋肉質のあなたに触れられない。抱きしめたいのに、それができない。抱いてしまったら、もう後戻りできなくなるってわかってる。連れて行くべきじゃない。そうしてしまったら絶対にダメになる。


だから、今日はあなたを抱きしめずに帰る。今のわたしには、生々しいあなたのすべてが必要ないみたい。ぶどうもトマトも、肉も魚も。
でもいつか東京に戻ったら、その時はもう絶対に離さない。絶対に。
今日も後腐れなく、さよならするよ。

オオゼキさん。ありがとう。

★★★


ねえ、コレってなんの話?

お願い。
どなたか突っ込んでください。

恥ずかしいから…!


コレは、東京の西の果てに住んでいた主婦の話。
今は無き「オオゼキ 相模原店」のライトユーザーだったけど、地方へ引っ越し「オオゼキ」のことなんてすっかり忘れていたある日。
気まぐれでnoteを始めたら、狂気の沙汰のような「オオゼキ愛を語るnote」に出会ってしまう。やだ、ちょっと!もう一回オオゼキに行きたい(♡)ってなってしまったからさあ大変。

狂気の沙汰オオゼキnoteはこちら ↓

そんなこんなで、私は今年の夏の帰省時に、界隈で御神体と崇められている「オオゼキ 松原店」にルンルンで寄ったのです。

そこへすかさずオオゼキようこさん登場。
圧、きました。

(正確にはオオゼキロストバージンではありません。笑)
当然、私も行ったからにはオオゼキ松原店のレポをする予定でした。

しかし。

しかしです。

この日のわたしは

●東京、猛暑日
●この後、友人に会って夜まで過ごし食事をする
●帰宅先が、自宅ではない(夫実家)

以上の三重苦により、生鮮食品の買い物は一切できず、数々の素晴らしい商品を目の前に悶絶でしたのです。

野菜売り場にはずいぶんと立派な丸いナスが並んでいました。素揚げでポン酢?肉挟み?マーボー茄子?
そして魚売り場にはぴちぴちの鰯。青くてお目々も澄んでて新鮮間違いなし。蒲焼き?フライ?ちょっと骨抜きを頑張って酢締めにしちゃう?
さらに肉売り場…!豚肉の素晴らしさはもちろんですが、この日はオオゼキようこが「日本の桜か、オオゼキの鶏ムネか」と称す評判の鶏肉が、たしかすごく安かった!(価格忘れ)。まとめ買いして、鶏ハム、もしくは味付けして冷凍して揚げ物用に…。
あー、この醤油。近所では見ないなあ。買っていきたい。カリカリにやいたお肉にジャッとかけて味わいたい。うっそ!味覇(ウェイパー)が499円…?ありえない。近所じゃありえない値段…!欲しい欲しい!えー、コンビーフに紙容器?こんなんあるのか。軽くてゴミもかさばらない、いいね!豆腐…!油揚げ…!種類が多い!大好きな栃尾揚げ、発見!

店内パトロールをしたところ、このように心煌めく商品がこれでもかと押し寄せてきました。
オオゼキは生鮮食品も調味料も品揃えが素晴らしい。あれもこれも買って料理がしたい。でも、私は自分の好きなように料理ができる環境ではない。調味料に関しても、数日後に夫実家からさらに私の実家へ飛ぶ予定を考えると、とても購入する気にはなれなかったのです。

結果。
オオゼキを心から楽しめない。


私は、マーケターでもバイヤーでもないただの主婦。ライターという職業柄、好奇心は強い方だと思います。でも、私にとって、スーパーマーケットはお腹を満たすための、料理の材料を調達する場所。すなわち生きるために行く場所。
買えないなら…死んだも同じ…(白目

きっと、スーパーマーケットは地域住民のためのものなんですよね。それが本来の姿だと思います。ほら、それを匂わすツイが…

スーパーマーケットは、地域住民が主役!ぜったい!

あくまで私の場合ですが、オオゼキほどの素晴らしい品揃えの店に、買い物ができない状態で訪れてはいけません。ああ、くやしい。楽しいレポをしたかったのに、そうできないであろう自分がもどかしくなりました。んで、どうにか楽しいレポにしようと捻り出したのが、冒頭の長い長い前フリです。

でも、せっかくこの素晴らしいスーパーマーケット、オオゼキに来たのだから…!と購入した商品がこちら。(うれしい)

近所の公園でひとやすみのヒトコマ。

オオゼキエコバック、買うよね!買うよね!
さらに「バイヤーセレクト」なるPOPで推されていた大福、シャインマスカット丸ごと1粒入り。この大福は、店内徘徊(たぶん10周くらいした)して疲労困憊、そして「購入できない自分」に意気消沈したわたしを、甘くやさしく癒してくれました。

そしてこちらも。

一部で話題になっていた、スプレッドとふりかけ。あと、これもバイヤー推しだった一口サイズの静岡産干し芋。このお芋、機内でのおやつにしたのですが、甘さ固さ共に絶品でした。散らからないし、移動中のおやつにおススメです。
そしてロータススプレッド…!これはマジでヤバい食品。家族全員が「コレ、絶対残しておいてよ…!明日も食べるから…!」と毎回キメ台詞を残して食卓を後にするシロモノです。(カルディなどの輸入食材店にもアリ)

超余談ですが、オオゼキ来店前にわざわざ昼食をはさんだのは、空腹のままオオゼキに向かうと、美登利寿司の立ち食いをしかねなかったから。
公園に寄って美登利寿司食べちゃう?穴子寿司食べちゃう?とも考えましたが、

炎天下、アラフォーおばさんがひとり、公園でパック寿司を食う

どう考えても絵面がヤバいのでやめました。冬場ならいけたかも…?(やめれ)

そして、長い長い前フリの中に出てきた「松原駅から徒歩3分の美味しい美味しいメキシコレストラン」はこちらです。トスダタス絶品!アボカドスープこってり最高!ママー優しい!松原駅に行ったら、また訪れたい店にピックアップです。

あ、もちろん。
また東京に住む時がきたら…

待ってろよ!オオゼキ松原店!

クールな外観の御神体。いつかオオゼキ愛好家さんたちとワイワイここを訪れたいものです。

(でも、実はOKスト…………)



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