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カーコラム「WRCメモワール フォーミュラ2(F2)がツール・ド・コルスで勝った日」

 今はもう見ることができないが、かつてWRCには「フォーミュラ2(F2)」というカテゴリ-があった。2L NAのエンジンで2WD。WRカーよりワイドなボディで迫力満点。グラベルラリーでは4WDターボの相手にはならないが、ターマックラリーでは4WDターボを脅かすほどの速さを見せた。

 何といってもエンジンの出力は約300馬力とWRカーと同じ。ターボがない分トルクは少ないが、僅か960kgの車重は、WRカーの1230kgよりも格段に軽いので意外なほど速かった。一時は、このF2マシンでWRCのシリーズを戦うというプランをFIAが持っていたほどで、主にフランスの自動車メーカー、プジョー、シトロエン、ルノーなどが魅力的でレーシングカーのようなマシンを送り出してきたのである。

 結果的には、プジョーが4WDターボの260WRCを作ることを決めると、自然に「WRC・F2論」は姿を消していくのだが、ターマックラリーならF2のほうがWRカーより速い! そう予想されるようになってきた。特にスペインのカタルニアラリーではタイトコーナーが少なく、コース幅も広く、スピードに乗れば速いF2マシンはWRカーより有利と見られていた。

 そして1998年カタルニアラリー。WRカーに混じって、シトロエン・クサラF2キットカーのジーザス・ピューラスや、プジョー306マキシなどのF2マシンが、トップにはなれなかったが上位争いへと進出してきた。そして結果的には、シトロエンのフィリップ・ブガルスキが総合5位に入った。しかし2週間後のツール・ド・コルス。ここはSSコースがカタルニアより狭く、ツイスティ。同じターマックラリーでも加減速の多いラリーだ。ゆえに「コルシカではF2よりWRカーのほうが速い」というのが、大方の見方だった。

 その結果は、意外にもプジョー306マキシのフランソワ・デルクールが善戦。スバルのコリン・マクレー優勝に続く2位へと入ってしまった。そのため、翌99年のカタルニアラリーでは「F2マシンがWRカーに勝つ」と予想されてのスタートだった。すでにこの年には、プジョーのWRカー進出が決まっており、主なF2ワークスはシトロエンのみ。先の予想どおり第1レグはクサラF2キットカーのピューラス、ブガルスキが1、2位を独走。トップのピューラスは第2レグのスタートでエンジン始動せずのハプニングでリタイア。しかしブガルスキが圧倒的スピードでWRC・F2初勝利を飾った。

 でも、「コルシカではWRカーのほうが速いかもしれない」と、まだ思われていた。そして2週間後のコルシカ。プジョーがWRカーの206WRCをデビューさせた年だったので、すべての注目はプジョーのニューWRカーに向けられたが、ラリーを圧勝したのはシトロエンのF2キットカーだった。

 晴天の第1レグ。トップを走ったのは、シトロエンF2のブガルスキだった。これをニューWRCプジョーのデルクールが11.3秒差で迫った。3位にいたのは、シトロエンF2のピューラスだった。しかし第2レグへ入ると、デルクールの206WRCはトランスミッションのトラブル。これでシトロエンF2の1、2位体制が決まりかけた。

 その時、コルテに近いSS11~12の区間で突然のスコール。雨でウェットなら絶対に4WDのWRカーほうが速いと思われていたのに、なんとトップタイムをマークしたのは、F2のブガルスキだったのである。そしてシトロエン・クサラキットカーは、99年コルシカで1位にブガルスキ、2位にピューラスと1、2位を独占したのである。


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