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金銭管理と女性の生き方

生活に困窮している女性は、お金の使い方が苦手であることが少なくない。最近は、お金がなくて困ることは何とか解決できる。まだまだひどい行政もあると聞くが、民間の支援団体に相談すれば、何とか生活保護申請にこぎつけて受給できるようにはなってきたし、コロナでさまざまな貸し付けや給付金等も利用できるようになってきたからだ。

問題はそのあとだ。十分とは言わないまでも、とにかく手に入ったお金で1か月をやりくりして食べつないでいくことがなかなか難しい。

女性の場合は、所持金を使い果たしてしまったら、風俗業に従事したり、SNSで「パパ活」を探したりと、一時的に寝食を得ることができたりする。気の小さい人でもスマホひとつで簡単につながれるため、手が出しやすい。「怖い」という感覚はあまりないようだ。そうしてしのげればいい、という日々を送り続ける。しかし、何かのタイミングで怖い目にあったり、傷ついたりすることがあると、「もうイヤだ!」と私たちのような支援団体にたどりつく。

また、幼い頃から家族の虐待を受け、児童虐待防止法もない時代に耐えしのいでいた女性たちは、家に引きこもり、年を重ね、「これではいけない」とある日思い立ち、たくさんの相談機関をめぐって、私たちにたどりつく人もいる。

こうした女性たちが、自分の中に沸き起こるさまざまな負の感情、苦悩や解決不能と思うできごと(主に子育て。人間関係を学ぶ機会に恵まれず、大人ともうまく付き合う術を知らない女性たちは、子育てがうまくできるわけもない)から逃げる方法といえば、「お金」か「男」しかない。あたり前といえばあたり前のことだ。お金でほとんどのことが「解決」する資本主義社会に生きているのだから、そうなっても仕方ない。それができる人はそうすればいい。しかし、できているように見えて実はできていないことが、Jikkaにたどりつく女性たちを見ると、わかる。

Jikkaでは、利用者さんのお財布を預かるという「金銭管理」支援をおこなあっているが、それは、その人の恋愛観や人生観とのぶつかり合いになる。今までの生き方のままでは、お金の使い方は変わらない。担当するスタッフは、日々サンドバックのように不満をボロクソ言われながら、「お金ちょうだい」コールと闘う。社会福祉協議会の家計管理は実際にお財布の中身や生活ぶりには立ち入らないが、私たちJikkaは断られないところまで入っていく。とにかく毎日子どもたちが空腹にならず、ちゃんと食事がとれるよう、学校で必要な教材が買えるよう、お財布の中のお金を回していく。

こうしたことは、家族でもしないことかもしれない。だが、ここで踏ん張らないと、女性はいつまでも「お金」と「男」から自由になれない。お金の使い方が女性の生き方そのものを変えていく現実から目をそらさずに向き合うしかない。お金にコントロールされるのでなく、自分でお金をコントロールできる女性になってほしいと願いながら。

                       Jikka 責任者 遠藤良子

※「Jikkaからのお便り」2021年秋号より
※トップ画像は利用者さんが書いた絵です。

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