コンクリートに沈むふるさと

元旦の翌日。昼頃に目が覚める。
事前に実家に到着すると両親に伝えていた時刻だった。
「ごめん 今起きた」
「やはり予感通りだった。ゆっくり来て良いよ。」

私の実家は都内にある。
そして比較的繁華街に近い場所に位置しており、家の目の前には交通量の多い道路がある為、あまり人が住むような立地ではない。
大きな川などの自然も全くといって良いほどない。
実家の周辺だけでなく、生活するエリア全般がそのような様子なので、この街並みに帰省や里帰りという言葉はしっくり来ず、産まれ育った場所をふるさととして昔から受け入れ切れずにいた。

実家に到着し、少し遅い昼ご飯を食べ終わると、
初詣に行こう。父にそう言われ家を出る。

父の提案により家の近くにある神社ではなく、私の通っていた小学校の先にある神社へ向かった。徒歩10分ほどの距離だった。
その周辺では現在再開発計画が進んでおり、かつて存在した建物は取り壊され、新しい建物を建てている途中だった。

神社への道すがら、再開発が特に進行しているエリアを通りかかる。
かつての通学路の途中にあった小さな下り坂と上り坂で出来た谷のような場所は、コンクリートで埋め立てられて平坦な道に変えられていた。

埋め立てられた谷の上に立ち、まわりを見渡して見る。

道だけではなく、父がやけに気に入っていたイタリア料理の店や、よく遊びに行っていた友達の家、それ以外の様々な建物もまたコンクリートの下に沈められ、工事現場の背の高い囲いで覆われていた。

工事によってほとんど跡形も無くなってしまった光景がそこにあったが、かつて私が見た下校途中の風景を重ね合わせる事が出来た。

そしてこの時初めて、ああ、帰ってきた。と感じた。

無くならずにそこあり続ける風景をふるさとと呼べずにいたのだが、無くなって初めて、ここはふるさとだったんだ。そう思えた。

父がわざわざ家から遠い神社に行こうと言ったのは私にこの風景を見せたかったからなのか、それはよくわからない。ただ、ここにはあの人の家があった、ここにはあれがあった、と話す私に対して、感心するような表情でおお、そうだったか。と相槌を打っていた。

初詣で引いたおみくじは末吉だった。
失物は高い所で見つかるだったか低い所で見つかると書いてあった。思い出せないがそのどちらでも見つかるのだろうと思った。
それ以外も色々書いてあったが内容は忘れてしまった。神社にくくりつけて来てしまったのでもう見直す事は出来ない。

初夢は自分が何故か2010年代のHIP HOP(マジで全く何もわからん)についてめちゃくちゃ造詣が深い人として何かのフォーラムに(マジで全く何もわからんのに)登壇させられる夢だった。えぇー、あのぉー、と言っている間に目が覚めた。起きた直後の身体は汗でべっとりとしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?